拾参の城
前回は大手門から天守に向かったが、今回は一番最初に
京橋口を通ると、目の前の目立つ肥後石を見て訪ちゃんは改めて肥後石の説明をしてくれた。
「肥後石はほんま大きいわあ、昔はこの肥後石が一番大きな石垣石やと言われてたんやけど、今は正確に大きさを測れるようになった結果、桜門の
「そうなんだ。石垣ことはまだ私はよく分からないけど、この大きさの石は本当に凄いよね。どうやって運んでるのかも謎だね。」
と昨日の私とは違ってお城に関心の生まれた私はポカンとはせずに楽しく訪ちゃんの話を聞くことが出来た。
「大阪城の巨石の
まだ大阪に来てから
「まあいろんな城に行くとこの石の凄さが分かるわ。」
訪ちゃんは出会ったばかりで興奮して鼻息の荒かった昨日と違って、私に合わせて分かりやすくに教えてくれる姿はやっぱりお城のことが大好きなんだなあと感じることが出来た。
京橋口から大阪城の北側を歩くと常に大阪城の天守を望むことが出来た。
大手門から桜門を通り過ぎて天守に向かうと天守の姿はあまり見えなかったのでとても新鮮だった。
特に大阪城の南側は
「うちはこっちから大阪城に入る方が好きかな。特に
訪ちゃんはなんだか誇らしげにそう言った。
お城って人の心を
私の地元じゃないけれど私もお城の近くに住めてなんだか誇らしい気持ちになった。
極楽橋を渡ると桜門みたいに狭く四角い部屋のような空間を抜けて天守のすぐ下の広い空間に出た。
そこには沢山の石が散りばめられて置かれていた。
「ここは
家紋ってマークのことだよね。わざわざ使うかどうかもわからないような石にマークを彫るなんて
そこには二重丸みたいなマークが描かれていた。
「この二重丸は熊本の加藤家の家紋やな。」
「二重丸って石に彫るのだったら簡単だ。」
「そやなぁ、まあ意外と簡単な家紋が多いから誰の石か分かるようにするには家紋を彫るのが早かったんやな。」
誰の石って徳川さんのお城だから徳川さんの石じゃないのかな?
そういう疑問がよぎったが、訪ちゃんが
「この辺の詳しい話も結構ややこしくて長くなるから、人待たせるのもなんやし先に天守に行こうや。」
と先導してくれる。
「訪ちゃん昨日と違って凄く落ち着いてるね。」
「まあ昨日はさぐみんと出会ったばっかりで沢山いいところを案内したかったから、ちょっと冷静でなかったかもしれんね。」
「ほんとにちょっとかなぁ?」
「ちょっとに決まっとるやん。」
そう言って二人は笑いあった。
山里丸の少し
私はなぜだかその石が凄く気になって
「訪ちゃん、大阪城の石は綺麗な加工された石が多いのにあの石だけなんであんなに穴だらけの
と指を指して聞いた。
「あれか、あの石は
訪ちゃんがそう言うと私は「えっ」と小さく驚いて
「戦国時代って機銃とかあったの?すごすぎない?」
と
訪ちゃんはそれを聞いて声を出して笑った。
「さぐみん、それは流石に無いで、太平洋戦争中、大阪に空襲を受けた時に城を含むこの辺の地域一帯が集中的に攻撃されたんや。その時に米軍の
「そっか、怖いね・・・」
私は少し心が痛くなった気がした。
だけど訪ちゃんは
「そうや、石垣には大きな傷跡が残った。そやけど天守は崩れんかった。それが今もあるあの天守や。」
と力強く天守を指差した。
そうか昭和に復元された天守もまた大きな歴史の渦の中で多くの人々の支えとしてずっと生きてきたんだね。
今日も太陽の光に白く照りかえる眩い天守は私にはより輝きをまして見えた気がした。
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