第拾壱話 面


 笛や太鼓の音を頼りに広場へゆくと、太鼓櫓の周りを村の衆が輪になって踊っていた。

 陽は沈み、月明かりと提灯行列が辺り一帯を照らし出し浮き立たせている。


 この村の風習だろうか、村人はみな、面をつけている。

 猿。

 狐。

 おかめ。

 ひょっとこ。

 翁。

 天狗。

 ぼんやりと村人の踊りを二人で眺めていると、狐面きつねめんをつけた七才ぐらいの少女がとことこと寄ってきて、二つの面を差し出した。おかめとひょっとこだ。


 どうやら、これをつけて踊れということらしい。

 源之進が少女から面を受け取る。

 少女が背を向け走り去った。

 たえが源之進の手からおかめの面をとり、顔につけた。


「踊りましょ」


 源之進もうなずき、ひょっとこの面をつける。

 笛の音と太鼓の響きに合わせて櫓の周りを踊りながらまわる。

 たえの目から見て、源之進の踊りは跳ねるようだ。

 六門を巡って奥義に到達できた喜びにあふれている。




「少し休もう」


 踊り疲れて、源之進とたえは輪のなかから離れ、神社の石段に腰を下ろした。 面を外し、袖で汗を拭っていると――


「ああ……いいっ!」


「うう……ぐぐ……」


 周りの草むらから喘ぎ声が聞こえてきた。

 源之進とたえが、声の方に這い寄り覗いてみると――


「!――――」


 面をつけた浴衣姿の数組の男女が、裾を乱して交じり合っている!

 これも村祭りにおける習俗のひとつだろう。

 見ているうちに興奮してきたのか、たえが源之進の股間に手を伸ばしてきた。


「……源さん」


 その目がはっきりと欲しいと訴えている。

 源之進が腰帯を解き、袴を脱いだ。

 たえがもどかしげに源之進の下帯から一物をひっぱりだすと、ぱくりとくわえた。


 昨夜、抜かずの三発を決めたのに源之進のそれはたちまち復活した。




   つづく


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