発展的計略

はんぺん

発展的計略

 人々が争い、文明が今築かれようとしているその時に、彼らはやって来た。どこからともなくやって来た円盤形の宇宙船は、まだ人の手に渡っていない静かな離島に着陸した。 彼らはこの星に住む人々を発展させるべく、様々な薬の作り方や、不死になれる木の実がなる苗など、発展に大いに貢献する発明品を持ってきていた。本来であれば、この星にしかない資源と交換してこれらを渡したかったのだが、先程の惨状を見る限りではまだ渡すほどの文明を得ていないと彼らは判断し、そしてやがて人々がたどり着くであろうこの小さな離島に全てを置いていくことにした。


 「…ここなら大丈夫だろう。気候も丁度良く、人も住み着いていない。薬のレシピや発明品はカプセルに入れ埋めることとしよう。植物はここに植える」

一人の男がそう指示を出すと、もう一人の男がてきぱきと作業をこなす。しばらくし、彼の作業が終わると彼らはまたどこかへ去っていってしまった。彼らは密かにその星の発展を願っていた。


 そして数千年の時が流れ、人々は無闇な争いを避けるようになり、何事も穏便に、と言う意思が芽生えた。数千年は、彼らにとっては大した時間ではなかった。しかしその星の人々にとっては成長するのには充分な時間であった。頃合いを見計らい、彼らは二度目の上陸を果たした。勿論そこにはもう人がいたし、人の手すら加わっていた。あそこはどうなっているだろう。彼らは思い、ステルススーツを着てそこに向かった。人々の目には入らないようになっていて、彼らの存在に気付くものは居ない。

 彼らはそこで何やら柵のようなものを見つけ、そこに看板がぶら下がっているのを見た。柵の向こう側は明らかにあの苗が成長した姿だった。しかし手を付けた痕跡はない。彼らは不審に思い、その看板が意味する事を翻訳した。看板にはこう書かれていた。


 『触らないで下さい』


 彼らは心底失望した。我々の仕事は無意味だったのだ。そういう嫌悪に、至るしかなかった。一人がこの星の歴史や文化を調べる。調べ上げた彼は言った。

「どうやらこの植物が貴重なため、ずっと種の保存をするようです。このようになるべく自然な形にして」

カプセルを埋めた場所には何かの小屋が建っていた。もう出すことは不可能だった。

「彼らの文明の発展は争いによるものがあった。争いに使った物を今の生活に役立てている。そのような文明のようです」

彼がそう言うと、もう一人は誰かと連絡をし、何かの確認をし、こう言った。

「先程の情報を上に確認させてもらった。もう一度発展が必要だと。確かにそう言った。つまり…」

彼らは武器を持ち、ステルスを解除した。


「宣戦布告だ」

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発展的計略 はんぺん @nerimono_2

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