旧 作戦行動

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『C.E.70、16月8日。ネクリュースの気象情報は曇り8。北北西の風、追い風成分は3ノット。気温は16℃。湿度は22%。広域レーダーに敵影なし。進路クリアです。Css3番機発進どうぞ。』


「こちらCss3番機。発信許可確認。エンジン1番から4番まで出力正常に上昇中。姿勢良好。離陸します。」

ググッと機首が持ち上がり、離陸。


暫く上昇し、巡航速度へ移行した。

今回はサイド16でザフストの合同演習がある。

モビルスーツの演習なので機体共々である。


ちなみに玲華が紺野隊長に操縦を押し付けられた命令されたので、理屈のかけらもない連帯責任により俺は・・通信管制になっている。なんでだよ。


ちなみにこの御時世、輸送機の機長は常に操縦桿を握っておくとかそんなことはしなくていい。

むしろ余程のことがない限り操縦桿なんか握ったりしない。もし手動で操縦するとしたら近接戦闘圏内に敵が来た時くらいだ。

基本的に計器を見るだけのぶっちゃけ暇な仕事である。


広域レーダーとにらめっこしていた玲華が思い出したようにこちらを見る。

「今回の演習、サイド4の2バンチの人達も参加するって本当?」

サイド4……あー。

「そういえばリストに名前があったな。」


ソビエト共同連合の東の端であるサイド4──シベリア地方の一番南側のコロニー。

かなり初期からあり何故か今まで大規模な侵略も無かった為、若干取り残されている印象感じだ。

皮肉なことに平和なおかげで都市開発がなかなか進んでおらず、部隊の装備も動く戦争博物館ものだと聞いたことがある。


通信モニターから目を離さずに答える。

「装備を一新したからちょうど訓練に、とか?」

計器に目を戻しながら考え込む玲華。

「……今のサイド4にそんなお金が?」

「さあな。」


〈〈ATTENTION〉〉


画面の右上にアラートが出た。

監視衛星からの定期報告はまだのはずだが。

タップして展開する。


〈Point de chute prédit 26°-30°N 97°-100°E,Objet:AGE,Nombre:(Grand 1,Moyen 3-5,Petit 8-10) Il faut environ 130 secondes pour atteindre la surface de la terre.〉


いや誰だよフランス語にしたやつ。


とりあえず日本語にするか。

言語の設定はどこだっけ。あれ。受信は別なのか。えーと。


〈落下予測地点 北緯28°~29° 東経99°~100° 警告対象:AGE、数:(大型1、中型5、小型9) 地表への到達まで約100秒。〉


お、結構近いぞ。


「玲華。AGEがこの近くに降下だってさ。どうする?仕事する?」

「なんで私に聞くの。」


そりゃあだって。

月島機長・・・・、進路を変更致しますか?」


こういう時の機長あなたですから。(こういうのが面倒だから紺野先輩は機長を嫌がる。)


「……進路変更。座標データをこちらに。」

「あいよ。」

座標データと敵戦力詳細を送る。ついでに機内放送。


『あーあー。野郎共、戦闘準備だ。敵戦力は大型1、中型5、小型9とまあまあ多めだが、さっさと蹴散らして演習終わらせて帰るぞ。場所が場所だから油断はするな。敵勢力の地表到達まで約30秒。編成は隊長サマに訊くように。あと隊長、自分は手が離せないんで出撃できませんからね。』


マイクを切って玲華を見る。

なんか計器とにらめっこしていた。


「降下予定ポイントまであとどれくらい?」

「……これ、降下して大丈夫?」

え?

「予想降下地点付近の瞬間風速が50ノットは下らないんだけど。大丈夫かな。」

自分たちが乗っているモビルスーツ、ヘミス──型番H-SPHERE──のスペック上、30ノット以内なら自動空力制御によって安全に降下できることになっている。


うーん……いや、まあ、なんとかなるだろう。

「よし。ヘミス投下準備。機体編成はどうするか俺が隊長に確認する。」

「ほんとに大丈夫?流石にやばいと思うんだけど。」


スペック上は駄目でも彼奴等ならなんとかするだろう。

「一応隊長には報告するけど、ほぼ間違いなくゴーサインが出るから準備しておいて。」

少し考え込む玲華。


「解った。そろそろ投下予定地点だから。」

「了解。」


さて。お仕事だ。


───────────────────────


ようやくモビルスーツの名前がお披露目されました。

この名前一応意味があって

HemiSphere──半球

球ほどじゃないけどほぼ全方向頑丈だよっていう。

はいすみません。

今後ともよろしくおねがいします。

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