もげたあしたのいきるいみ

和寂

旧 あさ

「16月3日。ネクリュースの天気は快晴のち曇り。最高気温は10℃最低気温は-4℃。ファオリベクは曇り。最高気温は6℃、最低気温は-5℃。ノクリマリアは曇りのちあられ。最高気温は5℃、最低気温は-14℃。久々に晴れるところがあるので午前中外へ出られる方はお気を付けて。以上天気予報でした。TYSラジオが午前10時をお知らせします。──」


陽気なコメンテイターが朝の番組を始めたのでラジオを切った。


今日は半年ぶりに晴れる。快晴らしい。

まあ、晴れても別に良いことはない。

雲がないと諸々もろもろの有害な太陽光線がほぼ減衰げんすいせず降ってくるからだ。

その為、外に出るには防護服ぼうごふくを着用しないと半日ほどで死んでしまう。

だが運の悪いことにU n f o r t u n a t e l y、今日は買い出しに行かないと食料と燃料が尽きてしまう。

行きたくはないが行かないと死んでしまう。

でも防護服は着たくない。めんどくさい。しにたくない。


朝っぱらからかなりレベルの低い悩みをしていると、のんきな妹が起きてきた。


「んー...おはよう...」

「おはよう瑠奈るな。テーブルの上にご飯あるから早く食べな。10時になったぞ。」

「えー。ちゃんと起こしてよー...」


何回起こしても起きなかったのはどこのどいつだ。


「いいから早く食べろ。10時半から授業だろ?俺は買い出しに行ってくる。ちゃんと準備して出席するんだぞ。」

「んー...わかった」


わかってないようなわかってないような返事をしながら食べ始めた瑠奈を横目にそそくさと防護服を着る。


『じゃあ行ってくる。ちゃんと授業に出るんだぞ?』

「はーい...」


たぶん帰ったら寝てるだろうなと思いつつ家を出た。



二重の機密扉を抜けて玄関を出ると、流れてきた瓦礫がれきで前の道がふさがっていた。

うへえ。あとでけないと。

とりあえず玄関のタラップを蹴って飛び越える。防護服のパワーアシストがなければこんな動きはできないな。


道をしばらく南に行って大通りに出ると、朝っぱらから人影があった。

晴れなのに朝からご苦労さまです。俺も。


そのまま大通りを東に行くと人が増えてきた。

朝っぱらから珍しいな。何かイベントでもあったっけ。


『おや?これはこれは大地殿ではないですか。』


突然後ろから話しかけられ、驚き...はしない。

うしろから近付いてくるのが防護服の中から見えていた。


『やあやあ康太殿。御機嫌ごきげんうるわしゅう。』

『こうも天気が良いと気分が晴れますなあ』

『このところどんよりとしてましたからなあ』

『.......』


急に黙ったので振り向いた。

『何この茶番』

『お前が始めたんだろ』

急に正気に戻るなよ。


こいつは井上康太、同じ哨戒班しょうかいはんの同僚だ。

いつも何かと陽気で・・・いや違うな。呑気あほなだけかもな。

まあ変なやつだ。

『お前今ひどいこと考えなかったか?』

『まさか。お前の人柄に感服してたんだよ。』

『ぜってー嘘だ』

妙にはなが鋭いから困る。


そういえば何しに外に出たんだこいつは。

『お前も買い出しか?』


康太は防護服の中で首を振る。

『いや、支部の方から招集を受けた。緊急だとよ』

あー、AGEが降下してきたのか。

朝なのにちらほら人がいるのはそういうことか。

『時間外労働か、ご苦労なこった。ま、頑張れや。』


康太は心底嫌そうな顔をしながら答えた。

『...行ってくるよ。あ、瑠奈ちゃんによろしく』

『わかった。相変わらず変態だったって伝えとくよ。』

『な!?俺が瑠奈ちゃんから嫌われたらどうすんだ!......相変わらず?おまe』


ノイズがうるさいので通信を切った。

今日は天気がいいなあ。


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