太陽を託された男
春菊も追加で
第1話(最終話)
朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」と言う。
寝起きの僕はあくびをし、頭を搔きながらカレンダーを見る。今日は西暦二〇二一年六月六日。コーヒーメーカのセットをし、部屋の隅に放置したままの装置を見やる。それから、「梅雨入りすると洗濯が出来なくて嫌だなぁ」とぼやくと、コーヒーが出来上がるまでに小便を済ませてしまおうとトイレに向かった。
朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと一ヶ月になりました」と言う。
寝起きの僕はあくびをし、頭を搔きながらカレンダーを見る。今日は西暦二〇二一年五月六日。コーヒーメーカのセットをし、部屋の隅に放置したままの装置を見やる。それから、「隣の家、鯉のぼりを出しっぱなしのままだなぁ」と独り言を呟くと、コーヒーが出来上がるまでに小便を済ませてしまおうとトイレに向かった。
朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。緊急事態宣言の解除から一週間が過ぎました」と言う。
寝起きの僕はあくびをし、頭を搔きながらカレンダーを見る。今日は西暦二〇二〇年六月六日。コーヒーメーカのセットをし、部屋の隅に放置したままの装置を見やる。それから、「東京五輪、結局延期することになっちゃったなぁ」と独り言を呟くと、コーヒーが出来上がるまでに小便を済ませてしまおうとトイレに向かった。
朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。東日本大震災から三ヶ月が過ぎました」と言う。
寝起きの僕はあくびをし、頭を搔きながらカレンダーを見る。今日は西暦二〇一一年六月六日。コーヒーメーカのセットをし、部屋の隅に放置したままの装置を見やる。それから、「福一の後始末、なんだか長引きそうだなぁ」と独り言を呟くと、コーヒーが出来上がるまでに小便を済ませてしまおうとトイレに向かった。
朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。ローリング・ストーンズの日本武道館公演が決まりました」と言う。
寝起きの僕はあくびをし、頭を搔きながらカレンダーを見る。今日は西暦一九七九年一〇月六日。コーヒーメーカのセットをし、部屋の隅に放置したままの装置を見やる。それから、「そういえば、九番目の事件はどうなったかなぁ」と独り言を呟く。
世界が爆発して終わった翌日。なぜだか僕は生きていて、何もない空間で、僕の前には一人の男が立っていた。
「時は終点まで辿り着いた。もう一度始めるため、始点まで世界を巻き戻さねばならぬ」
男はそう言って、「巻き戻し終わったらボタンを押せ。昨夜と同じような爆発が起こり、万物の全てが始まる」という伝言と共に奇妙な装置を僕に託した。
その装置は今、僕の部屋の片隅で埃を被っていて、一五〇億年後に押される瞬間まで眠っている。
コーヒーが出来上がるまでに小便を済ませてしまおうと、僕はトイレに向かった。
太陽を託された男 春菊も追加で @syungiku_plus
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます