剣豪ハツ

小波ここな

第1話 ハツ。久々に鬼と対面する。


 剣豪として戦国各所に名を馳せている、剣豪ハツ。

 彼がゆう国の太守に招へいされて、2つ目の任務が、領地内の鬼退治だった。

 太守は鬼というものを見たことがなく、更に退治に向かわせた部隊がことごとく行方不明になっている。

 知識ある者によると、それは鬼だというところから、領地内をぶらついていた、ハツが召し抱えられた。


 ハツは鬼を退治した事でも各地の太守に知られていて、本当に鬼という物があるならば、ハツの様な男を欲する者が多かった。

 ハツはこれまでに3匹の鬼を退治した。

 刀は今まで鬼退治で折れた事がない。


 太守が「ハツよ。鬼を退治できるかや」と、扇子を開き、閉じ、開き、閉じ、たずねると、ハツは


「大丈夫。勝算がありまさぁ…5日下され。鬼を打ち払いますぞ」



 ゆう国の荒れ寺にハツはおもむいた。

 寺に一人の美女が待機していた。

 彼女はシホ。

 ハツの刀の師匠であり、鬼退治の師匠でもある。


「遅い。日が暮れてしまうわ。ハツ。鬼どころかあやかしまで現れてしまうわよ」

「シホ姐さん。パパッとやりましょう!シホ姐さんとオイラで一刀両断でさぁ」

「そう上手くいけば良いけどね」


 べべん べん べんべんべん


 琵琶の音色が響き、一人の僧侶が寺の裏手から現れる。


「おう、ハツ。遅かったな」


 ハツは頭をかきながら「和尚、遅くなりました」とこうべを垂れた。


「鬼をな。見つけたぞ。暗くなるが…やる気か?ハツよ」

「一撃で仕留めまさぁ!」

「ハツ。大声はやめて。気が散るわ」


 3名は夕暮れの木陰を進み、川に出た。

 そこに…


「ハツ。鬼じゃ。木ではないぞ…捻りがある枝は大きな腕じゃ」

「身震いがしまさぁ。鬼ですなぁ…」

「私はハツの援護にまわるわ。全力でやりなさい!」


 ハツは、川の中ほどにある巨木…鬼に対して刃を抜き放ち、近づいて行った。

 その時…節くれ立った幹の表面が


【ニヤリ】


 笑った気がした。


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