56したいほどコイしてる

景浦 為虎

56したいほどコイしてる


ふと見たタイムライン。

やっぱり。

自分を悪く言う投稿が君からされている。

付き合いたてはお互い楽しかったけど、ちょっとした互いの差異で離れ離れになった。

胸の奥がチクリと痛む。

君はとても魅力的だった。

でもそれは過去の話。


君とあったのは部活だった。

先輩である君に恋をした。

LINEで告白をした。

今どきな告り方。

思い出して少しにやけてしまう。

でも…

あの一言で君との関係はガラッと変わった。

「君と…」

キスがしたい。

そう言った。

「なんで?」

「なんでって…」

「理由、ないの?」

「なくても別にいいだろ…」

そんな会話をした事を覚えている。

君は僕との関係にそんな事を求めていなかった。

要は僕は遊ばれていただけなんだ。

心の奥底から黒い物が沸々と湧いてくる。

気付けば僕はタイムラインに君の悪口を書いていた。

「いっつもあのブス見て来んじゃん。

まじキモっw ほんま見てこんでほしいわ」

でも見ているのは僕だった。

僕は無意識に君を目で追っていた。

まだ付き合っていたかった。

そんな事を考えていると、通知が鳴った。

君からだ。

「突然連絡ごめんなさい。

さっきのタイムライン見ました。

ひどい書き様ですね。

ホントに腹が立ちます。

そんなあなた様ですが、今日は律儀にもお願いをしにきました。

端的に言います。

死んで下さい。

私の前から存在消してください。

本当にウザくてキモいです。

さよなら」

あぁ。

そう。

ウザいなぁ。

ウザいなぁ!

気づいたときには僕は泣いていた。

悲しいんじゃない。

苛つくんだ。

なんだよ…。

何なんだよ!

すぐさま返信をする。

「死んでくださいとか、軽々しく言うべきでは無いですよw

低知能なおサルなんですね」

愚痴が止まらなかった。

君との不毛な喧嘩が始まった。

タブーワードが飛び交う。

(殺してやりたい)

二人に共通する気持ちが芽生えた。

君はそれを抑えるかのようにして

「もう寝るわ」

と言ったきり何とも言わなくなった。

黒い何かが渦巻く脳内。

(殺す)



✳✳✳✳



次の日の朝。

僕は君の家の前にいた。

最後の

「おはよう」

を言うために。

君は笑顔で

「行ってきます!」

と言いながら出てきた。

(いまだ!)

君の背後を追う。

あと少し。

束の間だった。

僕の右手に温かいものが銀色の物を通じて、伝う。

次第に君は力が抜け、膝から崩れ落ちる。

君の周りは赤い液体で満たされる。

あぁ。

遂に。

僕の手は君の鮮血で染まっていた。

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56したいほどコイしてる 景浦 為虎 @kohakumameculb

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