悪魔の述懐

とまぁ、この違法少女こと魔法侍ちゃんの人生論をデビルスキルで引き出して

心の闇を吐き出させておく。気休めの精神療法だが

要は彼女の心から吐き出した毒を悪魔が食べちまうのだな。

これはデビルポイズン級な辛さだぜ。


言いたい事を言えない。それは仕方ないにしても

言葉にしないと自分で答えに辿り着かない。それが追い付かないから

いずれは無言で殺し合う。だからこうやって

ちょっとした浄化の儀式を施す。


「エクトプラズムって感じですね・・・」

結ちゃんの浄化の魔力で芹沢綾から抽出したどす黒い心の傷の霊体。

負の心を食べる悪魔である俺が喰って処理するのだ。


こういった手合いの心の闇は朝飯前・・・と言いたいところだが


女性のメンタルと言うのは複雑・・・知りたくない事まで知らされるから

胃もたれするし何の愉悦も感じない。人の負の心にも味と言うのがあって

単純な思い込みや自分の勝手で喧嘩する様なヤツの方が好みだが

一人で抱え込んで、身体一つで駆け抜けて来た様なお人好しが傷ついて

誰も信用できなくなった・・・と言うのはあまり好きではない。

前者は美味しいが後者は味の無いカリフラワーをモソモソと喰わされる気分だ。

好きな人は好きかもしれないが、俺は吐き出したいぐらい嫌いだ。

どうしても腹が減ってて後者を食べることが多かったんだが・・・


「うぁー身体軽くなった。こんな悪霊みたいなの背負ってたらそりゃしんどいわな」


ゴリッ ボキッ っと肩やら腰やら足腰の凝りを

48手のサブミッションを誇る俺様の整復術で解していく。

言っておくが48手と言っても俺とこの魔法侍に猥褻な事は一切ない。いいね?


しかし、心の傷と言うのは複雑なモノである。

物理的な重傷とも違って塞がらないまま放置している人間どもが多い。

それは仕方ない事。世の中の仕組み。みんなそうだから。

そういうバイアスが働いてどこまでも自分の順番が無くなっていく。

時間が解決する?そういう人が居るなら一つ聞きたい。

人間というのは金に執着する割には時間に関して無頓着過ぎはしないか?と。


要するに傷口なんて塞がらない。その傷を背負って生きていくんだ。

そうしないと現実に辿り着かない。また夢中になれるモノが見つかるまで

自分に時間を与えてやる事ぐらいしか出来ないんだ。

なのに、この世界は生きる事を急かす割には本人の有益な時間を奪い去る。

矛盾しているんだ。潮の流れに耐えきれず消えていく者が居れば

良い船に乗ってる誰かを蹴落として自分の船だと言い張りその船を漕いでいく。


世の中は綺麗事に溢れているが俺から言わせれば

何日も風呂入ってないヤツの服に香水かけて誤魔化す様な

どっちみち変な匂いがする絵面にしか見えない。要するに白々しいんだ。


本当にそれが見つかれば蓋をする。そして世の中は蓋に入った謎の瓶で溢れる。

悪いけどある程度弱肉強食で成立してるのが

狩猟生物だった生臭い人間の性ってモンだ。

どんな世界にも清濁の概念がある。清廉潔白と言えるのは

産まれたての赤ちゃんぐらいで、誰もが生きる間に色んな傷を抱える。

暴力的な人間に関われば棘が刺さり、やがて棘が抜けない事を嘆く。

水清ければ魚は棲まない。だから多少の濁りがあってもいい。


だから俺は雲一つない空の青さが苦手なんだ。

何もかもが明るみに出る世の中になったとしたら

みんな正気で居られるのだろうか?って言う事だけが頭に残っていた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る