悪魔vs半神

商店街だった通りが一変して廃墟のどこかに転じる。

やっぱり結ちゃんに血清突っ込んどいて正解だったぜ。

この亜空間だと人類は水の中で溺れるよりも遅く窒息して

もがき苦しみながら死ぬ寸前まで痛めつけられる。

アレ?隣に居た結ちゃんは・・・チクショー!転移させられるときに

位相を離されちまったぜ!俺はデビルニコフ74小銃のセレクターを単射セミオートに入れ

ボルトハンドルをスライドして装填する。


人間の悪夢に出てくるような想像種イマジナリーを出してきやがった。

ここの主は自動人形オートマタが大好きらしい。球体関節の鳴る音をポキポキ言わせながら

俺を見つけるなり襲い掛かってくる。こういうのはよ。関節部分を破壊すれば

一気にダメージ与えられるって答え。出来るだけ引き付けてセミオートで突撃しながらリアル戦争やってる俺の臨場感はかなりのモンだぜ!

背後から捕まれる?それならよ。脚で絡みついて蟹挟みレッグロックでへし折りながら

至近距離で小銃弾ブチ込んでやるだけだぜ。って答え。


階層構築ダンジョンビルドする程に空間に手が込んでるワケじゃない。

単純に人間相手だと思ってたんだろうな。

すると、ライトで照らされる俺。敵かよ!?・・・と思ったら結ちゃんと再会。


「おっす。無事だったか?」


「え・・・?ヴェっさん!後ろぉ!」


「お?」


「何故だ?標的は一匹の筈。お前は・・・お前らは何だ!?」


俺が銃を向けた背後には例の半神デミゴッドとやらがお出ましになられる。


「あなたが連続殺人の犯人・・・!?」


「だったら何だ・・・!?さっさと死・・・」


バァン!!


予定ではここから敵さんの過去とか語られる

シリアスシーンなのに結ちゃんったら容赦なく

アモンライト小銃で脚をぶち抜きやがった。

もう魔界の銃を扱いなれてやがる。悪魔血清効き過ぎかな?

あの、もうちょっとストーリーみたいなものを・・・


「痛ァァい!お前ら、悪魔め・・・」バァン!


「あァ!痛い!痛い!お前、あ・・・」バァン!バァン!


サディスティック結ちゃんに肩とか腹を撃たれる半神デミゴッド・・・

オーマイゴッドと悪魔が言っても良いモノか。


「助け・・・ま、待ってくれ!待ってください!」


「そういって待つヤツがおるか!?ぉぉん!?」


あー、結ちゃん修羅verモードだぜ。

この半神デミゴッドもかなりタフで、背中まで穴開けられても

生かされず殺されずの半端な激痛でのたうち回っている。

人並みの耐久力なら何とか致命傷で済むのに

残念な小悪党だ。もう出オチの予感。

ちなみにここまで俺は何もコイツに手を出してないぜ。

一時的に人間の中にある悪魔を解き放ったらトンデモないレアケース。

普段怒らなそうな人が一番ブチギレると怖いなぁって

やっぱり思い知らされてしまう事となる。


「聞いてくれ!この時計がもう少し!ちょっとだけ逆回りしたら

 お前らから離れてこの空間から出してやるから!とにかく時間をくれ!」


「逃げる気かよコラァ?時計逆回り?そういえば

 腕時計の針が逆回転してんなオイ。

 おめえが殺した人が生きてた時間まで巻き戻せねえのか?」


怖いよこの子。悪魔血清効きすぎてる。よくみると結ちゃんの背後に

俺よりも多い数の自動人形オートマタの死骸散らばってるよ。殺傷能率キルレシオ高過ぎだよ。


「あ、あの、そこまでは僕、魔法の単位かなり落としてるんで仕事が無くて・・・

 黄泉還りで無駄に生きてしまう人間を眠らせようと・・・」


「生きてるのに無駄何ぞあるかァ!?

 テメエの欲のせいで人が苦しんで死んだんか?

 死刑何発分や思ってんのじゃ!?ぉおん!?」


「まぁ結ちゃん。この線を超えるなら、ちょっと考えてくれねえか?

 俺が言えばちゃんと分かってくれるさ。まず落ち着けよ」


「ヴェっさん。そうは言ってもですね・・・」


説明しよう。俺は殺人鬼を生かしておく程悪魔じゃないから

人間様の心理学でいう「良い警官、悪い警官」理論を使う。

(まぁ結ちゃん元警察官だし)

まずは悪い警官は偶然にも結ちゃんに演じて貰ってたんで

俺はと言うと犯人をフォローする良い警官に立ち回る。

ひょっとしたらコイツを生け捕りにした方が報酬高いかもしれないぜ?

俺らもそんな悪魔じゃねえんだから、な?落ち着こう?ってな具合で

コイツだって目標があってさ。頑張って来たんだから、なぁ?

聴こえる様に生かす事を匂わせる会話をして隙を作る。


だけどここからが本当の悪魔の裁判ジャッジメント

かなーりガラ空きの隙を作るってやると

この半神デミゴッドちゃんはどうするでしょうか?

罪を償って自害すると思うかね?

ここまでやってイモ引けないなら潔く死ぬ方が筋ってモンだろ?



コイツったらそんな事も分からず

読み通り一発当てて出世したかったってタイプのガキんちょ。

案の定、長ったらしい詠唱でチャージする巨大魔法でやり返そうとしてきたよ。

いい年こいて戦略の概念を知らない奴だ。

必殺技よりも当たる攻撃を用いよって習わなかったか?

「「せーの。」」

BANG!振り向きざまに俺たちの一斉射撃を頭に撃ちこみ

半神デミゴッドちゃんは全身粉砕、これが俺達の正気じゃない正義。

勝手ながら亡くなられた人の無念を晴らしたぜって答え。

俺たちはと言うと俺の必殺技のホラ、悪魔時空破壊デビジョンクラッシャーのスキルを使う予定だったんで、元から交渉なんて要らなかった。

一応俺様も悪魔なんだが、非道な人間狩りを許せなかったのだな。

そして、無事、現世へと帰還!一件落着ゥー!


「あぁう・・・」

現世に戻ったのと悪魔血清の効果が消えた反動で少しよろめく結ちゃん。

良かった。悪魔のまんまだったら人間界でかなりデビっちゃうよ。


「悪魔さん。あの・・・」


「あっハイ!?」


俺は内心デビるどころかビビりっぱなし。

警察官時代にどうだったかは知らんけど

対象の射殺なんて初めてだったかもしれないし・・・


「私はヒーローとか、向いてないみたいですね。せっかく黄泉還りしたのに・・・悪魔さんに助けられてるのに復讐を選んでしまいました・・・」


「まだダークヒーロー保険が残ってる。アメコミのヒーローが入るのよりも

 格安プランで賄えるよ。やり過ぎるとサタンのドラフト1位指名になっちまうけどね」


「・・・すいません。これからもよろしくお願いしますね。悪魔さん。」


そもそも今回のは悪魔に標的マトに掛けられるような小悪党だし、これが魔界の掟だ。

俺は少し頬の緩んだ彼女の横顔に安心しながら帰路に付く・・・

とりあえずデビル口座に報酬の300万円が監視者から振り込まれたぜ。

ダークヒーロー保険の手数料でちょっと持ってかれたけどね



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