悪魔、即戦力決定

デビルスキルを使ってのモグリである事をバレてはならぬ。

魔界のプロレスムーブも錆びついて、悪魔超剛筋も鈍っていては・・・


「オイ、あいつ、海外のインディー団体のヤツだろ?」


「スゲー。格闘技系?かなり引き締まってるな」


「出稽古の人ってどこまで相手するん?」


「昔だったら〆られてたんかな?」


「まぁ、試合してたって言うし、それなりのモンだろ?」


デビルイヤーは地獄耳ってどっかのデビル作品で習わなかったか?

悪魔の聴覚は猫と同じぐらいあるからな!余計な事を言うのは気を付けろ。


しかし、魔界学生プロレスのモグリだ。バレないように振舞わねばならぬ。

とりあえずこのベテランレスラー、長野力さんが良くしてくれる人で

悪魔的に言えば、よく騙されてくれる人だぜ。

良い人過ぎると騙し甲斐無いしデビル罪悪感催すって答え。


「お前、日本語喋れるんだよな?まぁ備品好きに使ってくれや」



俺はとりあえず肩慣らしの為にバーベルに目を付ける。

これは軽いなもっといけるな。プレートを重ねていく俺。

300kgぐらいまでセッティングして

シャフトの端から野球のバットを持つ様に持ち上げた。なんだ軽いな。


「え?」

「嘘だろ?」

「漫画みてえだ」


一同が凍り付いた。やっちまったぜ!これは人外だったか!


「あー!俺、プエルトリコで超能力、呪文に目覚めたんっす。これはトリックよトリック!」


もうトンデモな真似をしたと思ったら呪文のせいにしようと決めた。


世の中にはファンタジーが足りない。俺はファンタジー系レスラー。

っておちゃらけて場を沸かすぜ!


バレない様に基礎トレ、自重ブリッジに人乗っけてのブリッジ

スクワット1万回を息を切らさずにこなすこと数日。

人間どもよ。10万33歳に負けるんじゃねえ!

そして念入りにお掃除(悪魔は綺麗好き)

団体グッズ制作のお手伝い。

学生時代よりも生き生きとしてる自分が居る事に驚く俺。



そうしてる間に事務所に戻った結ちゃんにグリモワールを預けて

念写呪術の応用技「捏写動画モゾウノドウガ」を作ってもらう。呪いのビデオってあるよね?

あれはちゃんとした人類最古の念写動画だ。お前ら呪いのビデオには気を付けろ!


こうして試合映像は捏造され、この世界には居ない架空のレスラー

チョコボーイ芥子河原の試合映像が資料として頒布される。

お前らは数日後には俺の事を忘れるだろうがな!



「海外インディーでこんな細かいレスリングを・・・」


「48手の関節技!スゲー!」


「うわー!これが芥子モルヒネ毒霧ミスト!凄い噴射・・・」


さすがプロレスオタクの結ちゃん完全監修の動画だぜ。

一部は魔界学生プロレス時代の異種格闘技戦をストレージから出しておいて

地獄の毛ガニvsチョコボーイ戦の動画も見せて大盛り上がり。

怪奇路線で売り込むことに大成功する俺。

要は山田恵一郎から情報を引き出さん事にはだな・・・

「大変です!永西さんがさっき移動中の交通事故で膝と腰大怪我したって・・・」


「んだと!山田とタッグのメインカードだろォ!?俺らインディー団体のホープだってのに・・・」


俺の宣伝真っ只中でボルテージ昂ぶってる中

若い選手たち全員が外見年齢33歳の新入りアフロ男を見つめる。


「おっせーい!ノリだこの野郎!芥子河原!山田とタッグ組めコラ!」


飛翔プロレスリング:山田恵一郎15周年ハードコアマッチ


60分一本勝負


山田恵一郎&チョコボーイ芥子河原vs橋藤真&武丸敬司


の一戦がメインカードとして組まれる事となった。

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