第27話 再会

「食堂と娯楽室は男女共用、大浴場は男女それぞれの官舎にあります。利用時間は決められていますから、厳守するように」


「はい」


 一通り建物内を巡って、軍総司令部の騎士団使用区画の見学ツアーは終了だ。……多分、まだ一人で歩いたら道に迷う。


「今日はこれくらいにしておきましょう。荷解きをして部屋を整理して、明日からの訓練に備えて下さい」


「はい」


 ゴードンと連れ立って女性用官舎前まで向かう。

 一暴れして汗をかいたから、お風呂入りたいな。大浴場は開いてるかな。と思いながら歩いていると、不意に白い影が目の前を通り過ぎた。

 真っ白な短いサラサラ髪に、金の縁取りのある濃紺のローブ、涼やかな紫の瞳の十代半ばと思しき少年。

 ……彼には見覚えがあった。


「スノー、うちの隊の新人です。挨拶を。……あ、スノー!」


 呼び止めるゴードンを無視して、少年は建物の裏へと消えていく。副隊長は「ったく」と悪態をついた。


「今の彼はスノー・レシタル。第七うちの隊の筆頭魔導士です」


 やっぱり。セリニと所有者登録した時に名乗っていた名前と一緒だ。同一人物だよね?


「筆頭? まだ若そうなのに」


「十六歳ですよ。彼は特別です。愛想はないですが、仕事は出来ます」


 愛想がない……ねぇ?


「ところでゴードン副長はおいくつですか?」


「二十三です」


 フィルアートの一つ下か。


「お若いですね」


「うちの隊は他より平均年齢が低いんですよ。古参の軍人には自分より若い者の下に付きたくないって人も多いので」


 つまり、隊長フィルアートが若いから、隊員も若いのか。


「まあ、年齢が低いからって、実力が劣るわけではありませんが」


 意味深に口角を上げるゴードンは、なかなか負けず嫌いのようだ。そういうのは、私も嫌いじゃない。


「今後のご活躍を期待してますよ、エレノアさん。命令違反は許しませんが」


「……努力します」


 敬礼の仕方を教わって、私はゴードンと別れた。

 さて、荷物を整理して、今度は官舎の探索をしますか。

 私は女性用官舎に入り、階段を上る。さっき荷物を起きに行く時管理人に確認したから、部屋の場所は覚えている。

 三階北側の端から三番目が、私の部屋だ。日当たりは悪いけど、新人だから文句は言えない。

 ドアの前で立ち止まってノブを回そうとして、違和感に手を止める。

 ……中に人の気配がする。

 ここは二人部屋だから、同室の子が戻っているのだろうか? でも、まだ今は業務時間だ。

 腕の中の仔虎がみゅうと鳴く。

 私は慎重にドアを開けた。部屋の奥、窓際には誰かが立っている。

 『彼』は私を見ると、花が咲くように無邪気に微笑んだ。


「やあ、エレノア。また会ったね!」


 雪のように真っ白な髪の魔法使い。

 ……スノー・レシタル。

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