Session6-2 "非合法品"の取引

GM/エミディオ:エミディオは咳払いをして、話題を変える。

「ごほん。ダイケホーンもそうだが、このところ"紫水晶"絡みの事件も増えてきている。国内で水晶の取引が行われている、という話も多い」

シンカイ:「はい……。ハーヴェス王国でも陛下直々に忠告をいただいたほどですから」手紙はすでに提出してみせてます。

オルフ:「……堂々としゃべって良いのか?」

GM/エミディオ:「……まあ、その噂は既に出回っているからな」君たちが冒険者になりたての頃、最初の依頼でも、君たちがとっつかまえた野盗たちが、『紫水晶を取引する』と言っていたことを思い出す。


オルフ:「……あいつら、別に手練れでも無かったしな。噂レベルでは知名度があって末端でも手を伸ばそうとする程度の存在か、"紫水晶"」

アルクトス:「そこら辺も興味はあるが……」

シンカイ:「はて。遺跡ギルドの商品としての流通率がそれなりなのか、それともゴミ箱がゴミ箱として機能していないのか……」

アルクトス:「案外、ゴミ箱にゴミを入れた結果、中で紫水晶に変化してたりしてな」

イスデス:「金さえあれば買えるってのは面倒だね。それなりの量が取り揃っているってことだもの」

シュシュ:「……どういう経緯かはわかりませんが、蛸が持っていたくらいですからね……」


GM/エミディオ:「……こういうモノは、ほとんどが遺跡ギルド、あるいは冒険者ギルド〈桜下酔虎の宴〉あたりの仲介があるものなのだがね。"紫水晶"はまた、状況が違うアイテムだ」

シュシュ:「……桜下酔虎の宴」


〈桜下酔虎の宴〉は、冒険者たちも何度か耳にしたことがある冒険者ギルドです。

本拠点はここ、グランゼールの『入門地区』。門を潜ってから東へ逸れた、ジャンク市場がある区画に、魔剣の迷宮でもある塔があり、そこに居を構えています。

非合法組織に冒険者を派遣するなどの援助を行い、依頼料として上納金を貰っている、犯罪組織に近いギルドとなっています。


GM/エミディオ:「彼ら非合法組織は、"紫水晶"を広めることを快く思っていない。むしろ、それを抑制したがっている……実際に、取り締まりを強化しているというからな」

オルフ:「まあ、だろうな。あれは個人に力を与えるものだ。組織からしたら邪魔だろう」

シュシュ:「……もしかしたら自分たちで独占したいという意図もあるのかもしれませんね」

GM/エミディオ:「十中八九、それで間違いないだろうな」シュシュの言葉にうなずく。


シンカイ:「ふぅーむ。いっそほかの冒険者ギルドと提携したほうが話は深堀できようものでしょうか……?」

GM/エミディオ:「確かに、他の冒険者ギルドと連携が取れれば、紫水晶事件はかなりやりやすくなるだろう。だが……」

アルクトス:「……その場合、効果がない我々は邪魔なのでは?」

GM/エミディオ:「アルクトスの言う通り、我々は色々な意味で『邪魔』ではあるのだ。……遺跡ギルドにとっても、他のまっとうな冒険者ギルドにとってもね」

シュシュ:「『邪魔』……? じゃあ私たち狙われたり……」お盆を持つ手がぷるぷると震え縮こまる。


GM/エミディオ:「……もともと、この王国は『迷宮王国』だ。……冒険者ギルドは迷宮の踏破を目的としたものが大半。こうした国内外問題については、我々に任せきりにしておきたい、というのがひとつ。そして、仮に協力できたとしても、君たちの能力それ自体に不満を抱くものも少なくはない」

イスデス:「まぁまぁシュシュちゃん、表立って狙ってはこないだろうさ」

GM/エミディオ:「はは、実際表だって狙われることはないさ。ある意味邪魔ではあるが、かといって排除してしまえば彼らの負担が増えるだけだからね。お互い、不干渉を貫くのがいいとして、ここ5年ほどはやってきていた……というわけだよ」

イスデス:「『私たちは紫水晶の力を独占したい!』って言ってるようなもんだしねぇ。そうなると」

シュシュ:「……それを聞いて少しだけ安心です……」

シンカイ:「しかし、あの男……。師アジムと同じ動きのもの……」

GM:シンカイは思い出す。赤髪の男の動きは、師の独特の構えに似たものがあった、と……。



客の少ない店内で、君たちがそうして思索にふけっていると。ホールから、よく通る声が響いてくるだろう。君たちも聞き覚えのある声だ。

アルクトス:まさか、漁師……!

シュシュ:漁師は脳内にいるよ。

オルフ:イマジナリ―漁師。

GM/ホルン:「ごめんくださーい! 女将さんいるっすかー!」漁師ではなく(笑)、先日、依頼主代理として学園から来ていたホルンだ。

アルクトス:10代少年の部屋を漁る手伝いをしたホルン君。

シュシュ:「……この声、ホルン様……?」耳がぴくんと反応。少しだけ顔を引きつらせてホールの方を見る。

イスデス:「おっと、ホルンくんだったか。ハロー!」

シンカイ:「あら、ホルン様。ご機嫌麗しゅう」ぺこり。

オルフ:「ホルンか。クレナイはホールにいたようだし対応してるだろ」

GM/ホルン:「ああ、この前の冒険者さんもいらしたっすね。あとでご挨拶に行くっす」クレナイが応対していたようだが、すぐに足音とともに会話が聞えなくなったのが分かる。どうやら密談室へ赴いたようだ。

シュシュ:あまり目を合わせて会話できないタイプの相手なので棚の陰に隠れて水を飲んでいる。


GM/ライズ:「なになに、知り合い?」

シンカイ:「冒険者学校の生徒さんですよ。 故に、依頼者としてはだいぶ込み入った事を持ち込んで来る類のようですが……」

オルフ:「前に依頼で少しな」秘密の奴だったので詳しくは語らず。

イスデス:「お友達ってやつさ」

アルクトス:「どうしてそうなる……」

GM/ライズ:「なーるほど! お友達か!」

シュシュ:「……お友達だなんてそんな」

イスデス:「ヘイヘイヘイ、一緒に家探ししたらその後はマブダチだろうメーン?」

アルクトス:「違うが というか、何だそのテンション」

イスデス:「最近読んだ本に出てきたぜ。チェケラ」



GM/クレナイ:しばらくして、クレナイがずいぶんと神妙な面持ちで食堂へと現れ、君たちを見繕う。

「ふむ……オルフ組(仮)! 依頼でち。報酬はちょっとばかり高いでちが、聞く気はありまチュか?」

オルフ:「何だその纏め方。聞くが」 

アルクトス:指定暴力団オルフェウス組。

イスデス:「と、依頼か。なら、名残惜しいがもとに戻って話を聞こうか」首飾りを解除する。

シンカイ:「PT名もいい加減決めなければ、確かにやくざ者ですわねぇ」くすくす。

GM/クレナイ:「まあ、お互い冒険者としてのレベルが同じ程度、それに弱点も補い合っていまチュからね」

パーティ構成を評価したうえで、改めて呼ぶ。

「こほん。オルフ、シュシュ、シンカイ、アルクトス、イスデス。……それから、ライズにも手伝ってもらいまチュか。この地域のメンバーはこれで大丈夫……でちかね」

アルクトス:「何やら、依頼自体は大規模な物のようだな」

シュシュ:「(……やっぱり呼ばれるよね……)」諦めたように小さくため息。そんなことしてる間にジャンくんに引きずられている。


GM/クレナイ:「そうでちね。少しばかり大規模な……"非合法品"取引の摘発でち」それは"紫水晶"のことだと、すぐにわかるだろう。

オルフ:「“非合法品”ね。詳しい話を聞くか。行くぞ」 

シュシュ:「はい……」ずるずる

シンカイ:「承知。拝聴いたします」フランベルジュを背負いなおしてすたすた。

GM/ライズ:「ヒゴーホーヒンってなんだろ? まあ、でもイケナイことだよね。がんばろうね、みんなっ!」

イスデス:「うんうん。頑張っていこうか」

アルクトス:てくてく。

GM/エミディオ:「……ふむ。女将も動き始めるか。準備はぬかりなく、な。気をつけたまえ」

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