Session3-5 魔航船の事故

GM:では、続いてマギテック協会へ赴いた、シンカイ・アルクトス組。

シンカイ&アルクトス:はーい。

アルクトス:道中菓子折りぐらい買ってくか。

GM:礼儀正しい。



2人は1時間ほどで冒険者道具街の巨大な建物へとたどり着きます。

グランゼールのマギテック協会は、他の街のそれとは異なり、主に再生屋としての側面が強いことで知られており

冒険者が迷宮から持ってきた部品などを解明、組み合わせて魔動機をあるべき姿に再生したり、あるいは新しい魔動機を開発したり。

技術的な側面で協力するため、職人ギルドとは仲が良く、また裏では、ひそかに貴重な部品を流してくれる遺跡ギルドとも深いつながりがあるといいます。



GM:協会のロビーに足を踏み入れたアルクトスとシンカイは、カウンターの奥に大きなジャンクヤード(ガラクタ置き場)があることに気づく。

アルクトス:「魔動機技師は、収めると部屋をああいう風にする風習でもあるのか?」ジャンクヤードを見ながら。

シンカイ:「まぁ、元々カサが大きく、かつ接続の仕方等といった事情もありますから……」

GM:受付には数人の職人が立っており、ロビーには何人かの客……鑑定待ちの冒険者や、商人などがいるだろう。

シンカイ:「それに機械の強みは数と聞きます。魔動機文明時代の本来の話ですが……。並べてなんぼなのでしょうね」

アルクトス:「なるほど、そういうものか」とりあえず受付でアポ取るべ。

シンカイ:「ごめんください」アリスに対する面通しの旨をば。

GM/アリス・カーバイド:受付が君たちに応対する……その直後に、ジャンクヤード方面から声が上がるだろう。「あ! キミたちはいつぞやの。あれ、でもなんか人が少ない……?」

アルクトス:「む、居たか。大勢で押しかけても迷惑かと思ってな。ああ、これつまらない物だが」菓子折りを渡す。

シンカイ:「依頼につき分割行動中です。ご無沙汰しております」ぺこり。

GM/アリス・カーバイド:「えっ!? あ、どうもどうも、別に気にしないのに……そんで、どうしたの? 依頼関係?」驚くも、受け取っておくよ。「あのとき助けてくれたしさ、ボクにできることなら何でも言ってよ。 ……程度はあるけどもね!」

シンカイ:「この男を──じゃない。ジェフリー・ハーバートを知っていますか?」その生徒の部屋から、貴方の銘が刻まれた工具が出てきたのですが、と。

アルクトス:ノルマ未達成(笑)。


GM/アリス・カーバイド:「ジェフリー……ああ、ジェフのこと? 確かに、ボクの工具を貸してあげたりしてたけど」親しそうに、愛称で呼ぶよ。

シンカイ:「行方不明につき捜索依頼が出ております。……お話を伺いたく」

GM/アリス・カーバイド:「行方不明……!? なんだか穏やかじゃないね……ええと、まあ立ち話もなんだし……いいよ、ほら座って座って」君たちを灰色の壁面が目立つジャンクヤードの中に引き込むだろう。

彼女は慣れているのかもしれないが、テーブルと椅子は一応あるにしても、周辺には木箱が散乱し、鉄や銅の独特な匂いが漂い鼻孔に焼け付く。

シンカイ:「失礼致します」丁重に礼をして上がり込みます。

アルクトス:木箱邪魔くさいなと思いながら座ります。


GM/アリス・カーバイド:「で、ええと……ジェフが行方不明? それってホントなの? この前まで、学校の休みによくマギテック協会に来てたんだよ」

アルクトス:「ああ、目下捜索中だ」

GM/アリス・カーバイド:「……そっか」少し悲しそうな表情で、アリスはうつむく。「何か、焦っていたからかなあ。……あの事件があって……もう、2年になるしね」

アルクトス:「あの事件、とは?」そういえば、最初に会ったときも言っていたな。

シンカイ:「コネ入学で何やらワケアリ扱いもあったそうですが……詳しく伺いたく。差し支えない範囲で構いませぬ」

GM/アリス・カーバイド:「少し長い話になるけど、聞くかい?」

アルクトス:「構わない、聞かせてくれ」



GM/アリス・カーバイド:アリスはふう、と一息ついて、昔を懐かしむように言葉を紡ぎはじめる。

「……君たちは、スピンドル博士……という名前は聞いたことがあるかな?」

見識判定、15でどうぞ。

シンカイ:(ころころ)ピンゾロ。

GM:まったくもって知らねえ。

シンカイ:うぎゃーーー! 若年性健忘症ですわーーー!!!!!

アルクトス:【フェアリーウィッシュ】を使って判定していいですか。

GM:いいよっ!

アルクトス:それでは(ころころ)……見識13、指輪割りまーす。

シンカイ:情報料500G。

アルクトス:合流前に買い足しとこ。

GM:ではアルクトスは、どこかで聞いたことがあったようだ。

シドーリオ・スピンドル博士。5年ほど前にラージャハからグランゼールにやってきた魔動機師だ。ほとんどは魔航船の開発設計をしていた、という。

アルクトス:「スピンドル……シドーリオ・スピンドルのことか? 魔動機師の……確か、お前も魔航船開発を目指していたな」

GM/アリス・カーバイド:「……うん。そう……このマギテック協会に、2年前まで在籍していたんだ」アリスは君たちに水を差し出しながら、胸を抑える。


GM/アリス・カーバイド:「この国で運用されている魔航船…その航路は3つ。

ハーヴェス王国、ユーシズ公国、そしてラージャハ帝国。

でも、魔航船の設計をしたスピンドル博士はもう1つ、ディガッド山脈の都市国家ダイケホーンにも魔航船の航路を築こうとしたんだ」

シンカイ:「ダイケホーン……山との航路ですか。利は大きいですが、リスクが大きすぎるもの、ですね。山の蛮族や大型幻獣だけでもかなりの壁です。スカイホエールですとか……」


GM/アリス・カーバイド:「うん。……そもそもダイケホーンという国は、標高3000m以上、年中積雪、平地は少ないし、おまけに魔域の多発地帯……魔航船を発着させるには、出力、安定性、滑走路の長さの問題に、武装を積むことによる自重の増加問題があった。

……ダイケホーンへの魔航船発着は、どう考えても不可能だと思われていたんだ。

けれど、博士は独創的なアイディアと魔工技術で、マナタイトの魔浮力をそのままに三変換接合で姿勢制御系と強度系を両立させ、空気中の魔素マナを噴流にして反作用を推進力に……ええと、つまり、そのほとんどをクリアした魔航船を作ることに成功したんだ!」専門用語を交え、アリスは早口でまくしたてる。


オルフ(別所):あいつ魔航船の話になると早口になるよな(笑)。

アルクトス:専門用語は後で聞くとしてとりあえずメモっとく。

GM/アリス・カーバイド:「もちろん、コストは凄くかかったらしいし、ダイケホーン側もそんな革新的すぎる技術をそうすぐに受け入れられるはずはなかったけれど……数年かかって、ようやく試験飛行ができるまでに漕ぎつけた。それが2年前さ」

シンカイ:「姿勢制御と強度系の両立。……人で言えばそのまま、筋肉や骨格が体の安定と耐久にかかわるもの、と。つまるところ、まさしく生き物のような魔航船だったのですね」

GM/アリス・カーバイド:「わかってくれて嬉しいよ!!」きゃぴっ。

アルクトス:「しかし、その様子だと上手く行かなかったのか」


GM/アリス・カーバイド:「……そう。その1回目のテスト飛行の最中に……事故が起こったらしいんだ」アリスは自分の事のように、悔しそうな表情を見せる。

「詳細はわからない。でも、炎を噴きながらディガッド山脈上部へ向かっていく魔航船を見たって、ダイケホーンの人たちや、そこで待ってた魔動機師たちは証言してる。

高度は問題なかったはずだし、オーバーヒートだってするような機構じゃないはずなのに……考えられるとしたら、蛮族とか魔神の妨害だ。博士のせいなんかじゃない……。

……でも、それを受けて。もちろんダイケホーンの発着場建設は中止。博士も皆から、『無謀な設計だったんだ』『夢に溺れた馬鹿だ』って言われて、それ以来魔航船開発は進んでない。

博士や乗組員の遺体だって、見つかっていない……魔航船はディガッド山脈の上部に向かっていったからね。

高レベルの冒険者たちですら、登ることをためらう場所だ」


アルクトス:「……そうか……実際に物があれば、どんなことがあったのかある程度推測もできたのだろうがな」

GM/アリス・カーバイド:「うん……ぐすっ。それが、昔も…今も、ボクは本当に悔しくて……。

でも、見つかってないからこそ、ボクはまだ諦めてない。いつか博士が帰って来たときに、ちゃんと誇れるように……博士の技術は、熱意は無駄じゃなかったんだって教えてあげたいんだ!」

アルクトス:「それで、残っている資料で何とか追いつこうとしていると」

シンカイ:「……」心中お察しとはまずもって言えないので、瞑目して頭を下げる事で誠意は示す。


GM/アリス・カーバイド:息を整えて、ジェフについて話し始める。

「……ジェフは、博士の熱心なファンだった。昔はボクと一緒にジャンクヤードで遊んでたけれど、その事故を境に、魔航船開発に打ち込み始めた。

でも、普通にやっていたら博士のレベルには全然届かない……だから、英雄候補生学校で他の要素……魔動機術だけじゃなく、別の魔術形態やマジックアイテムを、魔航船技術と融合させようとしていたんだ」

アルクトス:「あの本はそういうことか……」


GM/アリス・カーバイド:「ボクもまあ、ジェフを見て影響されたっていうのも、少しはあるかもね、へへへ。

……ジェフが学校に行ってるのは、そういう理由さ。他に知ってることと言ったら……」うーん、と唸り声を上げてしばらく。

「……そうだ、ジェフの信仰については知ってるかな?」

アルクトス:「信仰?」

GM/アリス・カーバイド:「うん。ジェフってば、隠してるけど『ハルーラ信者』なんだよ。なんでも、魔動機師っぽくないから恥ずかしいって、あんまり明かしてないみたいだけど」

シンカイ:「羅針盤と空を示す神と考えれば妥当とも言えますが」

アルクトス:「まあ、ぱっと出るのはミルタバルとかだしな」

GM/アリス・カーバイド:「ここに来る他にも、よくハルーラの神殿……『中央迷宮街区』へ向かうこともよくあったはずだよ」

シンカイ:「ふむ。足取りや動向を追うのならば其処」

GM/アリス・カーバイド:「うん。神官さんとジェフは顔見知りのはずだからね。もしかしたら、そこで何か手掛かりが見つかるかも」

アルクトス:「中央迷宮街区……助かった」

シンカイ:「部品の出所は既製品でなかったという事に加え、確かな手がかりに御座います。感謝申し上げます」

GM/アリス・カーバイド:「うん。その……あれだ。スピンドル博士に続いて、ジェフもなんて……行方不明者の友人をこれ以上増やすのは、ボクの精神衛生上良くないと思うんだ。冒険者さんたち、ジェフのこと。よろしく頼むよ」

シンカイ:「承りました。依頼に基づき、必ず」ぺこり。

アルクトス:「善処する」マギテック協会をあとにしよう。



シュシュ(別所):新しい探索場所だ! となると……私たちはこのままジャンク市場で調査かな。

オルフ(別所):治安が悪いのは、中央迷宮街区よりジャンク市場だろうからな。

イスデス(別所):襲われても大丈夫。回復でも支援でも、なんでもござれーい。

アルクトス:3人居れば何かあっても大丈夫、かな?

シンカイ:ふむ……では、私たちはこのまま神殿のほうに向かってみましょうか。

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