『映画漂流記、本日もカルマ調整』
お望月さん
第1話『水戸黄門Z』(2017)
『水戸黄門』で、しかも『Z』である。
『水戸黄門』と言えば、言わずと知れた日本時代劇界のレジェンド作品。グローバルスタンダードの「勧善懲悪」と「舐めてた爺が副将軍だった」でおなじみの作品である。
代表的な
1. かつて幕府の副将軍を名乗った老人が引退をして諸国を漫遊している。
2. 偶然、立ち寄った町で為政者側の悪行を耳にする。
3. 老人は身分を隠したまま為政者側の調査を行い成敗ポイントを溜め込む。
4. うっかりした男がコメディリリーフとして一行の心理を代弁する。
5. セクシーショット等の適度な時間調整を行い、敵陣襲撃のセットアップを行う。
6. 悪の為政者を暴力で制圧し、続けて副将軍の身分証明書(多くの場合は家紋の入った印籠)を提示して平伏させる。
7. 老人は笑いながら去る。
では『Z』とは、なんだろうか。
Z、それはアルファベットの最終文字。
最終、最新、究極、終焉。
Ω《オメガ》と似た意味として用いられる接尾語だ。
ならば『水戸黄門Z』とは?
水戸黄門の最終進化系、最新鋭の究極アクションを期待してよいのでは?
宙に浮く弥七、合体する助格、うっかりする八兵衛……
期待に胸を膨らませて再生ボタンを押下した私の目の前に現れたのは、ミュージカル版水戸黄門であった。
『水戸黄門Z』
茨城(地元では?)を訪れた水戸黄門一行は、金満商人の悪行を目の当たりにする。その後ろ盾に悪代官の姿を認めた水戸黄門は、悪を討つべく彼らとの決戦に赴くのだ。
助さんの恋の歌もよい(あのひと優等生だよね)が、やはり見所は、悪役側のキレのあるキャラクターであろう。特に悪代官と取り巻きガールズのラップソングには、愉快な圧力があり、優れた作品には優れた悪役が必要であることを再確認させてくれる。
また、終盤の殺陣がそこそこ個性的であり、短時間ながら黄門様一行の戦力をアピールしている。そのうえで登場するのが、ガチンコタイプの水戸黄門本人のカラテである。
悪の用心棒を真正面から拳で叩き潰した黄門は、マイクを構えてラップを吟じる。
越前の縮緬問屋のご隠居 a.k.a. DJ副将軍の爆誕である。
民草への想いを込めたラップを前にしては、思わず悪代官も平伏するしかない。
水戸黄門一行は悪を懲らしめて茨城を去るのだ。(地元では?)
神話類型を下敷きにしながら、最新鋭で最強の水戸黄門を見せてくれた『水戸黄門Z』
創作のヒントになると思う。ぜひYoutubeでご覧ください。
【第4回 いばらきショートフィルム大賞】大賞「水戸黄門Z」
https://www.youtube.com/watch?v=fo9FamJa_Fo
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