第473話 お祭り準備の本格始動
前書き
ゲリラ投稿です!
いえ、先月末くらいから、お気に入り登録数とPVがそこそこ伸びていましてね。SNSかどこかで、宣伝でもされたのでしょう(チキンなのでエゴサはしませんが)。
取り敢えず、感謝のゲリラ更新致します。
皆さんのご愛顧頂き、ありがとうございます。(あ、明日以降は通常更新ですよ。
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ニンジャのレベル上げとサクランボ狩りは、約束通り午前中で終了。午後からは完全にお休みとする。ベルンヴァルトはダンジョンギルドを出た所で別れ、ツヴェルグ工房へアクセサリーの発注に行った。俺とレスミアは、二人で大通りを歩いて帰ることにする。帰宅デートと言うよりは、下見だな。それと言うのも、年末の祭りまで9日を切り、大通りでは準備が始められていたからだ。
大通りの路肩には、インクで大きな四角い線が引かれている。どうやら出店の位置決めらしい。ただし、俺の感覚から言わせてもらうと、屋台サイズではなく、小規模な店舗サイズである。
「それなら、リスレス姉さんから聞きました。貴族街の屋台は、座って食べられるよう、テーブルと椅子も設置するらしいそうです。ナールング商会も出店するけど、路地の方しか取れなかったとか、愚痴ってましたよ。
逆に平民街だと人通りが多いので、食べ歩きが出来る屋台物が多いとか」
「なるほど、この大通りに屋台を出せるのは有名店が優先って事か。まぁ、しょうがないか。マイナーな店とか個人出店は路地になるってフォルコが言っていたし」
掘り出し物が多いのも路地の方らしい。錬金術師が自作の魔道具や薬品を露店販売したり、探索者がドロップ品や宝箱産の武具を販売したり、街の職人さんや見習いが自分の作品を売りに出すので、玉石混交状態。商業ギルドに届け出(+会費)を出せば、誰でも出店できるから、賑わうそうだ。
「そういや、フィオーレが通っている劇場の前の広場にも、臨時の舞台が出来るって言ってたな」
「あ、それは平民街の方でもですよ。貴族向けと平民向けの出し物を別々で行うらしいです。見習いの劇団員や、レッスンを習いに来ている子供たちも、劇や音楽を披露するみたいなので、見に行きましょうね」
「ああ、ウチの屋台も交代で店番する予定だからな。祭りデートと洒落込もう」
大通りから劇場へ続く道を見ると、奥の広場で建築を行っているようだ。トン、カンと金槌の音が聞こえてくる。まだ1週間以上あるのに気が早いと思うが、その舞台でのリハーサルも行うので作るらしい。
周囲を見ながら帰り道を歩くと、商業ギルドの職員さんらしき人達が、測量したり、線を描いたりしている。こうして、徐々に祭りの雰囲気が出てくるのだろう。
途中にあった掲示板には、祭りのポスターや、出店の情報が記されていた。こうしてみると、白銀にゃんこの出店場所……ダンジョンギルド第2支部の前であるが、結構広めだな。貴族街の一番大きな出店予定地よりは小さめであるが、俺が知る一般的な屋台3個分はありそうだ。
実際に見に行くことにした。
中央門を抜けて直ぐの所である。既に白線が引かれており、端っこの方に『白銀にゃんこ』の名前が書かれていた。
「結構広いな。唐揚げの屋台一つに、端っこで綿菓子販売を考えていたけど、もう一つ何か出来そうだ」
「それなら、唐揚げを増やしませんか? トリクシーと二人で色々試作しているので、色んな味の唐揚げが出来ましたから……どれを売りにするか悩んでいたんですよ」
この間来たレグルス殿下一行の護衛……第0騎士団の黒騎士さん達にも好評だったらしい。
屋台のガワは、商業ギルドが毎年使っている物を貸し出しして、設置してくれる予定である。魔道具のコンロもその一つだが、貸し出し申請は一つしかしていない。追加するのならば、もう一つ調達する必要がある。
まぁ、俺が自作する手もあるけど……
「増やすのは構わないけど、問題は人手が足りなくなるな。交代で祭りに行けなくなるぞ」
「……う~ん、リスレス姉さんに頼んでみます?」
「既にデボラさんとピーネちゃんを借りているけど、追加を出せるのかな?」
祭りの期間、屋台で働く予定なのは、メイドトリオ、俺とフォルコ君、バイト3名の、計8名である。唐揚げに3人、綿菓子に2人、交代要員3名と考えていた。ここに、もう1セット追加となると、追加人員は4人くらい欲しいな。
ただ、ここでレスミアと二人で話していても、答えが出るものではない。昼食がてら皆に相談しようと、帰ろうとした時、大通りを歩いていた、友人に出くわした。
「おー、ザックスじゃねぇか、久しぶり。そっちはデートか?」
「只のダンジョン帰りだよ。久しぶり、テオ達も元気そうだな」
声を掛けてきたのは、テオとプリメルちゃん、ピリナさんの三角関係トリオである。向こうも普段着なので、デートなのかも? ただ、女性陣はお洒落な服装……珍しく法衣ではなく、下級貴族向けのワンピースを着ているピリナさん……なのだが、テオの方はヨレヨレの普段着である。どうやら、休みの日だというのに、引っ張り出された父親な感じである。
それと言うのも、女性陣がレスミアに愚痴っているのが丸聞こえだからだ。
「……それでね、折角借りた部屋なのに、食料が何もないんだよ! あれじゃ、腕の振るいようも無いよ!」
「あはは、最近頑張って稼いで、宿屋を出たのは良いけど、お酒と干し肉と黒パンしか部屋になかったからね。
アタシもお手上げだよ。だから、こうして買い出しに出て来たの」
「まぁ、男の人の一人暮らしはそんなものでしょうね。ザックス様は、お料理も手伝ってくれますけど」
いや、最近は内職が忙しくて、手伝ってはいないけどな。得意気なレスミアに、水を差す必要はあるまい。
女性陣からの小言に対し、テオは面倒臭そうにしていたのだが、何かを思いついたように俺の肩を叩いた。
「今から食材を買ってとか、時間掛かり過ぎだろ……おっ、そうだ! ザックス達と一緒に、その辺の店で食べようぜ!」
……ふむ、別に一緒に昼食を取るのは構わないが、家ではベアトリスちゃんが準備をしているだろうしなぁ。
いっそのこと、ウチの昼食に招くか? おっ?……良いアイディアじゃないか?!
「なんなら、これからウチに来るか? 昼食くらい招待するよ」
「あっ! それ良いね! ミーアも良い? 3人も増えて大丈夫?」
「それくらい大丈夫ですよ。なんなら、午後からケーキ作りを手伝ってくれると、助かりますけど」
「白銀にゃんこで売るケーキかい? アタシは簡単なお菓子くらいしか作れないよ?」
「下拵えを手伝ってもらえるだけでも助かりますよ。手が空いたら、お料理を教えても良いですから」
テオが返事をする前に、女性陣が喰い付いた。あれよあれよと言う間に、皆で家路につくのだった。
皆で昼食をワイワイと楽しんだ後、お祭りの話題を出し、現場を下見して来た情報を共有する。どうやら、フォルコ君も、屋台の大きさについては把握していなかったそうだ。
「すみません、屋台の大きさについては、確認漏れです」
フォルコ君は『ギルドの前は、毎年同じ屋台を貸し出すからな!』と、場所が決まった時に説明を受けたのだが、周りの常連さん達も大きさの話などしていない。広めに欲しい人は『屋台2個分』、などと話していたので、1個分はそれほど広くないと勘違いしたようだ。
無理もない。俺達はこの街の祭りは初めてなので、独自の不文律は分かっていないのだ。多分、常連さんの共通認識としては、『ギルド前は大きい』なんて、暗黙の了解があったに違いない。
「まぁ、気にするなって。偶々だけど、早めに気が付けて良かったよ。
それに、レスミアとベアトリスは、料理が多く出せるなら、出したいみたいだしな」
「良いですね! 唐揚げだけじゃなく、他の揚げ物でも美味しい物は沢山ありますから!」
ベアトリスちゃんは、席を立ちあがって喜び、作れそうなレパートリーをあげてレスミアと相談し始める。取り敢えず、この街では珍しい揚げ物で、調理が簡単なものでお願いしておいた。いや、丸鳥のフライドチキンとか、時間の掛かりそうなのはNGだって。
仕入れが増える事に関しては、元々ナールング商会を頼っているので、料理が決まってからそちらに相談をする。
そして、肝心の人員については、美味しそうにデザートを食べているテオ達に振った。
「そんなわけで、テオ達も屋台を手伝ってくれないか?」
「……プリメルとピリナだけじゃなく、俺もか?」
「ああ、調理は女性陣にお願いしても良いけど、お会計とか雑用に男手もあると助かるんだよ。
もちろん、報酬は多いよ。諸経費を引いて、純利益は参加者で等分するからね」
その他、祭りの期間全てではなく最初と最後の2日間ずつとかの説明をしておく。休憩時間もあるので、お祭り自体を楽しむことが出来る。そんな話をしていたら、女性陣のみならず、テオも報酬に釣られて手伝ってくれることになった。3人ゲット!
「まぁ、今回の年末年始はダンジョンに行けないからな。稼げるのは助かるぜ。
いや、ボル爺や他のメンバーの都合が悪くてな」
なんでも、ヴォラートさんは実家……ヴァロール男爵家で執事の仕事が入っており、年末年始は忙しい。他の追加メンバー(分家筋の少年軽戦士と、庭師をしていた植物採取師)も家の用事があり、ダンジョンに行くには人数的に厳しいそうだ。
そういえば、プリメルちゃんの方は実家住まいと聞いた覚えがあるが、バイトに来ていいのだろうか?
その辺を聞いてみると、デザートをパクつくプリメルちゃんはあっけらかんと答えた。
「へーきだよ~。元旦には一族の食事会があるから出席するけど、他の日は祭りで遊ぶ予定だったからね。
屋台は最初と最後の2日ずつでしょ? なら、遊ぶ時間もあるし、軍資金を稼ぐ時間もあって楽しそうだよ」
「因みに俺は、呼ばれてねぇ」
以前、『星泡のワイングラス』を実家に持ち帰り、テオも復権したと思いきや、まだまだ扱いは悪い様だ。まぁ、後で愚痴でも聞いてやるか。
これで3人の人手を確保した。交代要員とするならば、もう数人欲しいところだと話したところ、フロヴィナちゃんがひらひらと手をあげた。
「なら、私の友達とか、仲の良い近所の奥さんとか誘ってみるよ~。
あ、もちろんアレは秘密にしておくからね。アレがあると知れたら、逆に殺到しちゃうから~」
「なになに? また、新しいお菓子でも作ったの?」
「お菓子なんて秘密にする必要ないでしょ。浄化のカードみたいな魔道具とかじゃない?」
何気ない話題にプリメルちゃんが喰い付き、ピリナさんもそれに乗っかるように首を傾げた。
アレとは〈燃焼身体強化〉の銀カードの事である。数に限りがある物のため、ウチの女性陣は緘口令を敷いているのだが、家の中だったので、つい口から洩れてしまったようだ。
「え?! あ~、まだ新商品だから秘密なんだよ~」
「え~、友達なんだし、屋台も手伝うから良いじゃん、教えなよ~」
フロヴィナちゃんが苦し紛れに誤魔化そうとするが、プリメルちゃんがおもちゃを見つけたような顔で突っつき始める。
しょうがない、場を収める為に一肌脱ぐか。
俺は、手を叩いて注目を集めてから、指示を飛ばす。
「例のアレについては、屋台営業の最終日、報酬を渡すときにオマケであげるから、もう少し秘密にしておいて。
フロヴィナ、人手はあと2名くらい頼む。それと、屋台の飾り付け案も考えてみてくれ。例年の様子ならプリメルちゃんとピリナさんが知っているから、大きく逸脱しないように、且つ目立つようにね。
料理人チームは、売る料理の選定……原価や調理の手間も含めて考えるように。他の女性陣でも作れるくらいには簡略化してくれ。
フォルコは、飾り付けの資材の調達や、追加料理の分の仕入れの手配と……原価計算も手伝ってやってくれ。
俺は綿菓子機を完成させるのと、揚げ物用の鍋も作っておくよ。あ、ついでだからテオも手伝ってくれ。
それじゃ、後1週間ちょい、頑張って準備しよう!」
「「「「はい!」」」」
「ん? 俺も手伝うのか? 今日は暇だから良いけどよ」
取り敢えず、テオも巻き込んで、午後の作業を開始した。
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