隣の君へ
翔也
第一章 一学期
第1話
俺には幼馴染がいる。
何をするのもいつも一緒で、仲が良く互いの両親と良好な関係を築いていた。
だけど年齢が上がるにつれ、疎遠になり気付けばもう高三になってしまった。
幼馴染を俺は少し離れたところで見つめる俺、
学力も運動もそこそこ、取り柄といっても誰にでも優しく接することぐらい。
少し離れた場所で友達と一緒に居るのが、幼馴染である
背は小さく、髪型はセミロング辺り、見た目が子供っぽいからという理由で、クラスの間でマスコット的存在として扱われている。
「それ何?似合ってて可愛いよ!」
「……輝から貰った」
「えーいいなぁ……私も総司に買って貰おうかな」
彼女が名前をあげた総司、フルネームは
ただ肝心の総司は、ここには居ない。
「……加東くん、今日も来ないね」
「本当に何やってんだか……彼女であるこの私を放っておくだなんて」
「……忙しいんでしょ?」
「そうだけど……!寂しいの!」
寂しいと良い放った彼女は、
総司の彼女で一年の頃村瀬が一目惚れしたらしく、入学してすぐに付き合い出したとか。
「よしよし」
「ありがと奏……!」
奏が少し小さいせいで、村瀬と姉妹にしか見えない。
じっと見ていたのがバレたのか、奏と目が合うもそっぽ向かれてしまう。
「……」
「どうしたの?奏?」
「……何でもない」
確実に言えるのは、奏に嫌われてるということぐらい。
小さく溜め息を吐いて、視線をグランドに移し、空を見上げる。
何故かグランドに総司が居て、熱心に後輩に指導していた。
「野球はこの三年で辞めるって言ってたし、そらこうなるか」
あと二ヶ月もしたら夏の大会、最後の大会ぐらいは応援にでも行くか。
ずっと総司のことを眺めていたら、誰かに見られてる気がして振り返ると奏と目が合い、すぐさま逸らされた。
「はぁ……嫌われてんのかな」
俺は奏の事が好きだ、でもそれに気付いたのは今年入ってからで、自覚してからというもの一回も話せてない。
ずっと眺めているだけ。
「どうすりゃいいんだろうな……」
俺は手元にある進路調査書には『進学』としか書いてなくて、何処に入るのかまだ未定だった。
☆
放課後、帰宅部の俺は部活のある総司と少しだけ時間があった為に相談を持ちかけた。
「なあ総司、俺って奏に嫌われてるのかな」
「……マジで言ってる?」
「結構真面目なんだけど」
総司は呆れたような表情をして俺にこう言い放つ。
「少なくとも嫌われてはねえよ、中学から一緒だったから言える。逆に聞くけどどうしてそう思うんだ?」
「なんとなく」
「……だろうと思った、お前奏ちゃんのこと好きなんだろ?もう言っちゃえよ?もう今年しかねえんだぞ?」
そうしたいけど、ヘタレな俺はそれが出来ない。
「まあとにかく頑張れ、俺行くわ」
「おう、お前も頑張れよ夏応援行くから」
「サンキュ!」
総司が部活に向かった為に辺りを見渡すと、俺と奏しか居なくて逆に緊張してしまう。
「……輝、帰ろ?」
「うん……」
今までは全然意識してなかったのに、今年に入ってから意識するようになったせいでまともな会話をしたことがない。
無言のまま学校を出ると、奏が話し掛けてきた。
「……輝、これありがと」
見せてきたのは進級祝いに送った髪飾り、最初は躊躇っていたらしいけど、今日初めて付けてくれた。
「そ、そっか……」
似合ってるとは言えず、少し恥ずかしくて顔を逸らす、これが今の俺達の距離感。
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