第2話 胃が痛い私

 庭園にある東屋で優雅に私とお茶をする清々しいジョゼフさんは


「新しいお茶をお持ちしました。オレリー様のお口に合えばいいのですが」

 とにっこり微笑む。美青年の笑顔は眼福だけど…母と妹と浮気してるんよね。この人。どの面下げて私の前にいるのかわからない。

 いや、私がブスだから舐めてるんだろう。

 なんも知らんと思って。

 胃がキリキリする。


「ありがとう存じます。ジョゼフさん。きっと母や妹もお好きなお茶だと思いますわ」

 とカマかけてみたが


「ええ!そうですね!お二人にも是非オススメしてください!」

 とにっこりした。

 どういう神経してるんだろう。このハンサム。

 信じられん。胃がキリキリする。


「あの私…少し気分が悪くなったので休みますわ」


「そうですか?部屋まで送りましょうか?」


「いえ、結構ですわ…ごめんなさい、折角のお茶会が」


「いいのですよ…また来ますし、オレリー様の調子の良い時にまた!」

 とあっさりと別れた。


 それから午後…母の執務室の前からまたいやらしい声が聞こえた。


「ダメよ…仕事しなきゃ…ジョゼフさんたらっんっ」


「仕事のし過ぎですよ。休憩しないといけませんよエリーヌ奥様っ」


 流石に一緒に通りすがった侍女のリュシー・フェベ・バルビゼも気付いた。

 何も言わなかったから前から知ってたなこいつ。


 私は何も言わずに部屋へ帰り休んだ。

 夕飯も胃が痛かったけどなんとか食べた。


 夜またトイレ行こうとして妹の部屋の前通ったら今度はまた妹といたしてる声やら音が響いてきた!!


「あっはぁーん!!そこぉ!ジョゼフ様ああ」


「うふふ、ここかい?愛しいジャネット…」

 ひいっ!

 トイレに急いで行き吐いた。


 あーあ…もう何か胃が凄い痛い。

 私は数日それから寝込んだ。心配してジョゼフさんが花束を持ちお見舞いにきた。にっこり笑い


「大丈夫ですか?何か悪いものでも食べましたか?」

 と心配されたがどの面下げてきやがった!?顔面に花活けて帰れや!!部屋の隅にいたリュシーは無言だった。


 リュシーが何か軽いものを持ってくると部屋を出た。するとにっこりとしたジョゼフさんが


「ちょっとお手洗いに行ってきます」

 と部屋を出て行く。

 なんか怪しいなと思いこっそりと後をつけてみたら…


 なんということか!

 侍女のリュシーとジョゼフさんが壁に手をつきいやらしいことをしていた。


「ジョゼフ様あんっ、人が参りますわっ」


「しっ!少しだけだよっ…。君とても魅力的なんだもん…ね、少しだけ」

 とジョゼフさんが甘く囁きつつリュシーの耳を噛みスカートに手を突っ込んでいた。

 信じられん。私はその場から離れてまたトイレで吐いた。

 そこへ


「あら?オレリー?どうしたの?吐いたの?大丈夫?」

 と母のエリーヌが通りかかった。

 ひいいっ!!

 もう私の胃はキリキリして仕方ない!この家にいたら私の胃は確実に死ぬ!!


「あ、あの…お、お母様…わ、私しばらく療養に家を出て別荘に行きます!」

 と言うと


「まぁ!そんなに悪いの?大丈夫かしら?」


「療養すれば…ご、ごめんなさい。少しこの家を空けますわ」

 となんとか家を出て行くことを告げる。別に止められなかったし。妹も心配していたが別に止めやしなかった。


「お姉様がいないと寂しいわ、早く帰ってきてね?」


「そうよ…早く良くなってね?オレリーちゃん」

 お前ら内心では私のことさっさと行けと思ってるよな?


 侍女のリュシーも


「お嬢様に付いて行きますよ」

 と言ったが断った。


「いえ、リュシー…ごめんなさい。今回は年配のナタリーさんに付いてきてもらうわ。ごめんなさいね。ほら、ナタリーさんの家、別荘に近いから里帰りも兼ねて。貴方はここに残って働いてて。もちろん解雇はしないから安心して」

 と言うと納得してリュシーも残った。

 てめえらの顔なんざ見たくもないんだよ!

 胃痛の原因共が!!


 そして私はナタリーさんと共に馬車に乗り込んだ。

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