第575話 守るものが違う…
「くっそぉっ!! 散々な目に合った…」
俺は朝食の為に食堂に向かう廊下の途中で、一人毒づく。
結局、昨晩は錯乱したアイリスを沈める為に、不本意…本当に不本意ながら、廊下のど真ん中でアイリスと致しをする事となったのだが… 何なんだよ! あの女っ! だらだらだらだら汁流しやがってっ! まるでタコやナメクジでも相手しているような気分であった。
お陰で、アイリスが収まった時には俺自身も全身ヌルヌル状態で風呂に入り直さないといけない状態になっていた… 噂にあった白い影の涙の後って…涙なんて可愛らしいものではなく、アイリスのナメクジのように垂れ流す愛液だったとは…
また致し終わった後、周囲を閉鎖し警戒していたベータも「ゆうべはおたのしみでしたね」と言わんばかりのドヤ顔していたのがなんだか腹がたった。
きゅうぅぅぅぅ~
腹が立ったと思い出していたら、腹の虫が鳴り出す。まぁ…アイリスを満足させる為に日付を超えて明け方近くまで致していたからな…腹が減って当然か…
さっさと朝食を掻き込んで、少し仮眠するか…
そう思いながら食堂の扉を開くと、奇妙な感覚を覚えて顔を上げる。そして、食堂を見渡すと、どういう訳か皆の視線が俺に集まっている。しかも、暖かな視線などではなく、逆に冷たい視線だ…
なんだ? この視線…
皆の視線の事も気になるが、今の俺には腹を満たす事が重要だ。俺は厨房のカウンターに向かいカズオに声を掛ける。
「カズオっ!」
「へ、へい…旦那ぁ…」
カズオは気まずそうな顔をして、俺から目を反らして返事をする。なんだ? この反応…でも、先ずは食事だ。
「今日の朝食は少し多めで盛ってもらえるか?」
「へぃ…分かりやした… 席までお持ちしやすので、座ってお待ち下せい…」
いつもならさっと出してくれるのに、今日は席まで運んでくれるのか…
そして、座席に座ろうと考え振り返ると、今度は皆が一斉に顔を反らせる。しかも、俺が席に座ろうとテーブルに近づくと、避けるというか蜘蛛の子を散らす様に逃げていく。何だよ…
すると、カローラと一緒に朝食を食べていたシュリが駆け寄ってくる。
「あるじ様っ! ちょっとこちらに来るのじゃっ!」
「なんだよ? 急に?」
俺はシュリに袖を引っ張られてシュリとカローラと同じテーブルに座らされる。すると俺の前に座っていたカローラのムスッとした顔が見える。
「あるじ様っ! 以前にも言ったがアレは止めろと言っておったじゃろ!」
「アレって…なんだよ…」
小声で話しかけてくるシュリに俺は問い返す。
「エルフたちの時のアレですよ…」
カローラがギロリと睨みながら言ってくる。
「エルフたちの時のアレ? 一体何の事だ?」
「ミケの国にいく時に、あるじ様がエルフの娘たちを捕まえて一晩中盛っておった事があるじゃろ!?」
カローラとシュリに言われて当時の事を思い出す。確か、ダークエルフたち姉妹を捕まえて、エロい拷問をして情報を聞き出そうとしたら、何もしないうちに自らペラペラ洗いざらい情報を話し出して、エロい拷問をするまでもなくなったので、俺が切れて確か11Pをした件だったな… 俺もあの頃は若かった… まぁ、その後、蟻族で108姉妹(性的に)を達成したんだけどな…
「そんな昔の話がどうしたんだよ?」
俺は首を傾げながら二人に尋ねる。
「昨晩、同じことをやらかしたから言っているんですよ… イチロー様… 昨日の夜、ステッキで音ゲーでもしようと思っていたら、アイリスの嬌声が響いて来て、そしたらメイド達が私にアイリスの嬌声を聞かせまいと歌い始めて…音ゲーどころではありませんでしたよっ!」
「そうじゃあるじ様っ! 聞いたところによると廊下のど真ん中で始めたそうじゃのぅ… そんな所で始めたら城の隅々まで響き渡るに決まっておるじゃろ! 城から離れた温室にあるわらわの小屋まで響いてきたのじゃぞ!?」
「ちょっと待ってくれ… 温室にあるシュリの小屋まで聞こえたって事は… 城のほぼ全域に聞こえてたってことか!?」
俺は自分の痴態の音が城全域に響き渡っていたと聞いて、血の気が引いていくやら、恥ずかしいやらで居ても立ってもいられなくなってくる。
「さようじゃ! だから城の皆があるじ様に怒っているのじゃ!」
「そうです! ただでさえ、私の家族の襲撃でみんな気が立っているというに、一晩中あんなものを聞かされたらたまったものじゃありませんよっ!」
シュリとカローラの二人に言われて改めて食堂の皆を見直すと、ただの冷たい視線ではなく、軽蔑の眼差しで俺を見ている事に気が付く。特にアソシエとミリーズは俺と目が合った途端にプイっと顔を逸らす。
「マジであのアイリスの痴態の嬌声が城に響き渡っていたのかっ!?」
そんな中、昨日、俺の警備をすると言っていたベータと目が合う。
「キング・イチロー様!! ちゃんと、キングの重要な致しの時間を守りましたよ!」
「いや! そんな物より俺の世間体を守ってくれ! そっちの方が重要だろっ!」
再びサムズアップで答えるベータに声を上げるが、ベータは次回も任せてくれと声を上げる。
「ほぅ… あるじ様はベータに警備までさせて城の皆に聞こえるように盛っておったのか…」
「違うっ! 俺はただ痴女状態になったアイリスを大人しくさせるために仕方なく…本当に仕方なく致しただけだっ!」
「どちらにしろ…アイリス一人をどうにかするために、城の皆の安眠を妨げた訳ですね…」
シュリとカローラがジト目で俺を睨んでくる。
「ほ、ほら…ワンフォアオール、オールフォアワンと言って… 皆は一人の為に、一人は皆の為にって言うじゃねぇか…」
俺はシドロモドロになりながら苦しい言い訳を始める。このままでは城の皆に嬌声を聞かせるのが俺の趣味だと思われてしまうっ!
そんな時、一番聞きたくない声が背中から掛かる。
「コホン… イチロー様…」
「げっ! マグナブリル…」
いつもマジおこのマグナブリルがカム着火インフェルノォオォォオォオォォォゥの顔で俺を睨んでいる。
「いくら城の城の主と言えど、人の顔を見るなり『げっ!』とは失礼ですな…」
マグナブリルの顔が激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームに変わっていく。
「い、いや…マグナブリルに…せ…説明しなくてはならない事が…あってだな… それで丁度、マ、マグナブリルがいたのでつい…」
「ほほぅ~ これは奇遇ですな…私もイチロー様には色々と聞きたい事があるのですよ… イチロー様の趣味についてと、そして公序良俗について昨晩の事を…」
マグナブリルは直死の魔眼でも使いそうな目で俺を睨みつける。
「ひぃぃ…」
いつもクリスがマグナブリルに怒られているが、こんな気持ちだったのか…
そんな所へクリスも食堂にやってきて、俺とマグナブリルの様子を見る。そして、自分の胸を拳でドンと叩き『ドンマイ!』と言ってくる。
「お前に言われたくないわっ!」
思わず俺はマグナブリルの後ろにいるクリスに声を上げる。
「なんのことですかな…?」
後ろのクリスの存在に気がついてないマグナブリルは、俺を物凄い形相で睨んでくる。
「いやっ! マグナブリルの後ろにクリスがいて…」
俺がそう言ってクリスを指差すとクリスはプイと食堂から逃げ出し、マグナブリルが振り返った時には姿を消していた。
「クリス? おらぬではございませぬか…イチロー様…」
マグナブリルは更に仁王の様な形相で俺を睨む。
「さっきまでいたんだよ!」
「いたとしても、今回の事にはクリスは関係ございませぬ… みっちりと…そう二度とこのような事が無いように話がしとう御座います… 執務室まで御一緒頂けますかな?」
こうして俺はマグナブリルに執務室に連行されたのであった…
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