第492話 幼女の血
俺たちから逃げ出そうとした金髪幼女は、現在、カローラの闇の手に捕えられて木の枝から吊るし柿の様にぶら下げられている。俺も田舎で悪さをした時にじいちゃんに木の枝につるされて『吊るしガキ』と言われていたが、幼女の場合は『吊るし幼女』になるのであろうか…
「くっ!! 例えこの身が汚されようとも、心だけは汚されないわっ!」
『吊るし幼女』にされた金髪幼女は、俺たち二人をキッと睨みつけ減らず口を叩いてくる。なんでこの幼女は囚われた女騎士みたいな言葉を吐くんだ? いつぞやのカズオみたいだな… まぁいい…そっちがその気ならばこちらもそれに応じるまでだ…
「クックックッ… そんな減らず口もいつまで続けられるか見ものだな… 先ずは俺様の自慢のソーセージを食わせてやろう…」
ポロン♪
俺は手に持ったままだった猪ソーセージを金髪幼女の前にチラつかせ、そしてその口に捩じ込もうとする。
「くっ! そんな汚らしいものっ! 私は口にしないっ!!」
そう言って金髪幼女は歯を食いしばり、俺のソーセージの進入を拒絶する。
「強情な奴目… ならばこれならどうだ!!」
俺は鼻で息が出来ないようにその鼻を摘まんでやる。
「フフフ… お前はいづれ息苦しくなって、口を開かざるを得ない… その時が最後だ…」
「かはっ! 卑怯なっ!」
幼女が息苦しくなって口を開いた瞬間、俺はすかさず幼女の口に俺の猪ソーセージを捩じ込む!
「喰らえっ! 俺の自慢の猪ソーセージを!!! どうだ!! 美味いかっ!?」
「んんっ!! 外はパリッと…中はジューシーで… 猪の野性味を消す為に入れられたバジル…オレガノ…パセリ… それらが混然一体となってメロディーを作りだし、それが猪本来が持つ肉の旨味とハーモニーを奏でているだとっ!?」
「フハハハハハ!! どうだ! 俺様のソーセージは!! 美味かろう!! この味の虜になるがいい!!」
「くやしい…でも…」
金髪幼女は俺のソーセージの美味さに悔しがりながらも、ゴクンッ!ゴクンッ!と飲み込む。
「フフフ… 口では嫌がっていても身体は正直なようだな…」
「くっ! この獣ソーセージめっ!…」
「何やっているんですか…イチロー兄さま…」
そんな俺と幼女のやり取りをカローラが呆れた顔で声を掛けてくる。
「いや、この幼女があんまりにもノリがいいものだから、俺の方もノリまくっちまった」
この幼女、俺とは歳は離れているし、今日初めて会ったばかりの人間だが、昔からの旧友の様なノリの良さだったな… 男なら一緒にいい酒が飲めそうだが、幼女だから一緒に酒は飲めないな。
「ところでイチロー兄さま! ちょっとお話があるんですよっ!」
カローラが焦ったような困惑したような顔で俺を見上げてくる。
「なんだよ? カローラ」
「ちょっと、耳を貸して下さいっ!」
そう言って俺の袖をひっぱる。
「これでいいか?」
俺が屈んでカローラに高さを合わせてやると、耳打ちをしてくる。
「あの幼女から… 知っている人物の匂いがするんですよ…」
「えっ? 知っている人物!? それって誰だよ!?」
俺がカローラの言葉に尋ね返すと、カローラは困ったような困惑した顔をしながら再び耳打ちをしてくる。
「それが… イチロー兄さまと…私…そして…シュリの匂いです…」
「はぁ!?」
俺はカローラの言葉に驚き目を丸くして声を上げる。
「いやいやいや、俺とカローラの匂いはさっき色々と関わったからその時についたんじゃないのか?」
「いや、触れて匂いが移った表面上のレベルではなくて、身体の内側から出る匂いなんですよっ! それに私やイチロー兄さま、二人の匂いだけじゃなく、シュリの匂いもするのはおかしいでしょ?」
「ん~ 俺はドラゴンの生態は良く知らないけど、シュリにマーキングとかされた記憶は無いしな…」
どちらかと言うと俺がマーキングする側だよな… くっそ! シュリの奴が総排泄腔でなければ…マーキングしているのにな…
「じゃあ、一度直接試して見てもいいですか?」
「直接、試すってどうやるんだよ?」
「血を飲んでみて舌でたしかめるんですよ」
そういえば、カーバルでワインをテイスティングするように血をテイスティングしていたな…
「分かった、試してみろ」
俺はカローラの脇に手を入れ、高い高いするように持ち上げると、首筋に噛みつきやすいように幼女の後ろ側にカローラを掲げる。
「ちょっと! 貴方たちっ! 私の後ろに回り込んで何をするつもりよっ!」
幼女は身の危険を感じたのか声を上げる。
「では、いただきます」
「えっ!? ちょっと! 頂きますって… きゃぁぁぁぁ!!!」
カローラが幼女の首筋に噛みついた瞬間、幼女は悲鳴をあげる。
「いやぁぁぁぁ!!! なにっ!? ソーセージの次はそっちなの!? ソーセージとレズとかっ、 貴方たち! どれだけ変態なのよっ!!」
幼女の悲鳴を聞いていると、俺たち二人がド変態の様に思えてくる。
「いや、ちょっと血を吸うだけだろ? そんなに騒ぐなよ… ほら、犬に噛まれたと思って言葉があるだろ? 気にすんなよ」
「気にするわよ!! 犬どころか人間に… それも甘噛みじゃなくて、本気で噛みつかれているんだけどっ!」
「終わりました… イチロー兄さま、もう降ろして下さって結構ですよ」
カローラがそう告げてきたので、地面に降ろしてやる。
「かゆっ! かゆいぃぃ~!!! なんか噛みつかれた所がかゆくなってきたんだけどっ! これってなによっ!!」
「普段なら、何事も無く噛み跡を塞いでおくんですが、この子が余りにも五月蠅かったので、傷口が塞がるまでかゆくなるようにしておきました」
「カローラ…お前、蚊みたいな事も出来るのかよ…」
地味に面倒な嫌がらせをするな…
「それで…どうだったんだ? カローラ…」
俺は口元をハンカチで拭うカローラに尋ねる。
「イチロー兄さま… よく聞いて下さい…」
カローラは真剣な眼差しで俺に向き直る。俺はゴクリと唾を呑む。
「この子には… シュリや私だけでなく…イチロー様の血が確実に流れています…」
「マジか…」
幼女が痒みに騒ぐ中、俺はカローラの言葉に驚愕した。
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