第483話 大人カローラ

※近況ノートに新しいタイトル絵をアップしました。大人カローラです♪


 俺は目の前に映るカローラの姿が見間違えかと思い目を瞬く。だが、昇って来た月の光がテントの中に差し込み、薄暗がりの中にいるカローラを照らし出す。


 月明りに照らし出されたカローラは艶やかな黒髪とは対照的に、その色白い肌が更に色白く照らし出される。



「えっ? えっ? マ、マジでカローラ?」



 俺は上ずった声で尋ねてしまう。



「はい、カローラですよ…イチロー様…」


 

 大人になったカローラは微笑を浮かべて答える。


 確かにその顔、その体型は、俺がロアンのパーティーにいた時に対峙したカローラの姿そのものだ。



「ちょっ! お、おまえ…その姿は…!?」


「この身体ですか? イチロー様とはもう一年以上一緒に旅をして、カーバルで魔素を吸い取ったり、魔獣の群れを握りつぶしたりしていたんですよ? ある程度は元の体に戻れるマテリアルを回収出来ましたよ…」



 そう言ってエロムッチムチのたわわな自分の身体に触れる。



「いや、お前が身体を元に戻すマテリアルを回収したのは分かったけど… それとこの日本に留まるか、それとも異世界に戻るかは別問題だろ!?」


「私としては、イチロー様に調伏された時に嫁いだものと思っておりました、だからイチロー様がこの現代日本で暮らすと言うなら私も従いますよ…」



 そう言って、俺の上に身体を寄せてくる。



「私は本当なら、あのまま朽ち果ててもおかしくない状況でした…仮に生き残れたとしても冒険者に追われる人生になっていた事でしょう… でも、イチロー様に保護された事で、私は誰からも命を狙われる事の無い安心で楽しい日々を手に入れる事が出来ました… 感謝しているんですよ…」



 カローラは俺の胸に顔を埋めて、囁いてくる。俺はその姿・声・仕草にゴクリと生唾を飲み込む。正直、カローラに関しては姿の事もあるが俺との接し方とか関係が、自分の娘のように思い始めていたので、元の姿に戻ったとしてもその気になれないだろうなと考えていたが… 唐突にエロムッチムチの大人モードでこのエロティックなムードは、流石に俺の食指も動き始める。



「だから…イチロー様が元の世界に戻る事を諦めて…この現代日本で…ここで暮らすと言っても… 私はイチロー様に従いますよ…」



 潤んだ瞳で囁くカローラの吐息が俺の首筋に掛かり、ぞわぞわと俺を刺激する。


 

 こ…これは…頂いちまっていいのか? 据え膳なのか!? 頂かないと男の恥なのか!?

 でも、今ここで頂いちまったら、異世界に戻る事を諦める同意書にサインするような感じがする… どうしたらいいんだ!?



 俺は滅茶苦茶困惑しつつも、今まで沈黙を貫いてきたマイSONがゆっくりと…しかし確実に自己主張し始める。


 

 いや、いいのか!? マイSONよ! お前、カローラに血から生まれたからカローラの事をお姉ちゃんとか言っていただろ!?

 あっ でもマイSONの奴、特殊というかエグイ性癖持ちだから、近親相姦シュチなんて逆に燃え上がりそうだな… って、膨張度が加速し始めたぞ!



「ねぇ… どうするんですか…? イチロー様… ここで二人で一緒に暮らしますか?」



 カローラは潤んだ瞳で息が掛かる距離まで顔を近づけてくる。



「ちょっと…私がいるのに、勝手に二人で乳繰り合おうとしないでくれるかしら」



 ふいに聖剣の声が響く。その声の方角を見ると、テントを出た所の地面に聖剣が突き刺さって姿を現していた。



「あっ! お前…」


「フィーラちゃん!」



 俺とカローラは聖剣の姿を見て声を上げる。それと共に臨戦態勢に入りつつあったマイSONは通常状態に戻っていく。勿体ないというかほっとしたというか…複雑な状態だな…



「あっ」



 すると、俺の上に寄り添っていたカローラが声を上げたかと思うと、ぽん!っといつもの子供の姿に戻ってしまう。



「あ~あ… 力が尽きて元の姿に戻ってしまいました…」


「えっ!? お前、マテリアルを回収できたからエロムッチムチモードに戻れたんじゃないのか!?」


 俺は目を丸くしていつも通りのカローラの姿を見る。


「いえ、常時元の姿に戻るだけのマテリアルは回収できていません… 例えて言うなれば、穴の開いた風船の穴を修復できるだけのマテリアルを回収しただけで、無理矢理ふくらませていただけなんですよ…」


 そう言っててへぺろと笑う。


 やっべぇ… もし致していたら途中で元の姿に戻っていたという事か… 危うくロリに目覚める所だった…



「で…私、貴方たちに言いたい事があるんだけど…」


 

 俺とカローラは起き上がって聖剣に向き直る。



「言いたい事って…なんだよ…」



 別に言われた訳ではないが、無意識に正座して答える。



「貴方たちは、ここでの生活に満足している様だけど… 耐えられない…もう耐えられないっ! 私にはここでの生活が耐えられないのよっ!!」



 聖剣がブルブルと身体を震わせてヒステリーの様な声を上げる。



「お前…ここでの生活が耐えられないって… 別にお前自身が食う訳でも寝る訳でもないし、俺から味覚を共有しているって言っても、俺は不味いものなんて食ってないだろ? なにが不満なんだよ!?」



 俺には聖剣がここまでヒステリックに不満を上げる理由が分からない…



「…ネットよ…」


 

 聖剣がポツリと呟く。



「ネット?」


「フィーラちゃん、ネットでダウンロードしたいものがあるなら、私が施設のフリーWi-Fiでダウンロードしてきてあげるよ?」



 カローラはちょくちょく施設の所へいってフリーWi-Fiを使っているので、協力を申し出る。



「ダウンロードすればいいって事じゃないのよっ! 私は生で! リアルタイムでスレを読んでレスバをしたいのよっ!」


「おまっ…レスバって…」


「それだけではないわっ! Sちゃんねるで毎日開催されている腐人会にも出席できないでいるのよっ!! こうしている間にも様々な趣味のスレッドが立ち上げられ、新しい愉悦のネタが提供されているのよ… 最近は規制が厳しいからネタを提供されてもすぐに消されて今うからスレに張り付いてないといけないというのに… 今までどれ程のネタを見過ごした事か… 貴方には私の悲しみが分からないのっ!!」


 正直、分かんねぇよ…と答えたくなったが、ぐっと我慢する。恐らく言ってしまったら取り返しがつかないほど暴れ出しそうだったからだ… あと、婦人会…じゃなくて腐人会って何だよ… そこで提供されているネタって… 想像するだけでも恐ろしいわ…



「でも、フィーラちゃんは流石に人前では出てこれないでしょ? 私が一日に何度か往復してあげるから…」


「ダメよ! リアルタイムでなきゃ貴重なネタを見逃してしまうわっ!!」



 カローラが宥めようとするが一蹴されてしまう。



「イチロー!! だから、一刻…いや一分一秒でも早く、こんな野蛮人のような生活から抜け出して、部屋とネットのある環境の文化人の生活を取り戻しなさいっ!!」



 そう言って聖剣が俺に切っ先を向けてくる。



「いや…そう言ってもな…身分証を手に入れる手段が思い浮かばんし…」


「…いい? イチロー… 剣とはね、太刀と同じなのよ…分かる? 『タチ』よ… 私が我慢できなくなったら… イチロー…貴方には『ネコ』を引き受けてもらうわよ…」


 俺はビアンを目の前にした時のようにキュッとケツの穴を引き締める。


「分かった!分かった!! 全力で一日中ネットの出来る環境を手に入れるから、それだけは止めてくれ!!! 色々な意味で身体が持たんわっ!!」


 俺はケツを手で守りながら後ずさる。


「イチロー様…『ネコ』って?」


「今は聞くな…ってか俺に聞くな…」


 カローラがキョトンとした子供らしい顔で尋ねてくるが、今はそれどころではない…


「本当なんでしょうね…嘘だったら…先っちょだけだけで済まないわよ…根元まで行くわよ…」


「お前まで、先っちょだけだとか… 分かっているって! でも、今日はもう夜だから、明日からでいいだろ? なっ? なっ?」


「まぁいいわ…それぐらいは我慢してあげる…」


 聖剣はそう言い残すと、俺の体の中へと戻っていく。



「あぁ…ここの生活も気に入っていたんだが… それも終わりか…」


 

 俺は夜空を見上げ、一人呟いたのであった。

 

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