第480話 快適なキャンプ
うーん… サラサラした髪のいい感触が… 女か? 女がいるのか…?
ケツ触りたい…ケツを… 最近、女のケツ触ってないな…
触ったのはトイレ行った時に自分のケツを拭くぐらいだな… ケツケツ…
あれ? この感触はケツじゃない? なんかもっと細々とした…
足? 足か? なんでケツのある位置に足があるんだ…
そこで俺はうっすらと目を覚ます。目の前を見ると、隣で寝ていたカローラを抱き枕代わりにして眠っていたようだ。なるほど… カローラなら、大人の女ならケツのある位置に足があるのも納得できる。
「はっ!!」
ってか、俺はエアマットの寝心地を確かめるだけなのに眠ってしまっていた事に気が付き、起き上がってテントの外を見る。すると日は傾き始めて青空がやんわりと黄色に染まり始めていた。
ここについたのが昼前だったから、4,5時間は寝てしまっていたのか?
時計を確かめると時刻は午後4時を回っている。やはり4時間程昼寝をしてしまったようだ。俺はうっかり4時間も昼寝をしてしまった事を後悔したが、その反面、ゆっくり熟睡した事で、身体が軽い事に気が付く。ついでに猛烈に腹が減っている事にも気が付く。
「おい、カローラ、起きろ」
「ふぇ?」
熟睡するカローラの頬をぺちぺちと軽く叩くと、眠気眼を開き始める。
「あれ? もしかして私、眠ちゃっていたんですか?」
「お前だけじゃなく、俺もだ…しかも4時間程ぐっすりとな… とりあえず飯の準備するからカローラも起きろ」
「確かにお昼食べてないんでお腹減りましたね… ふわぁぁぁ~」
そう言って眠気眼を擦りながら欠伸をして伸びをする。
「カローラは折り畳みの椅子とテーブルを広げといてくれ、俺はちょっとあるものを設置してくるから」
「分かりました…」
そういってカローラはテントから這い出て来て、俺が置いといた折り畳みの椅子とテーブルを広げ始める。その間に、俺は延長コードを伸ばしていき、少し離れた所にホームセンターで買った発電機を設置して、ガソリンを注いでいく。そして、スターターを引っ張ると一発でブルンと指導し始める。
騒音を気にしてテントから離れた場所に設置したのだが、それほど五月蠅くも無く、指導もすんなりで少し驚く。
「スゲーな、一発で掛かるとは… やっぱ現代日本の品はスゲーな…」
電気の準備が出来た俺はテントの場所へと戻る。すると、椅子とテーブルを広げ終わったカローラの姿があった。
「イチロー兄さま、なんだかエンジン音がしますけど、何してきたんですか?」
「あぁ、発電機を設置して動かしてきたんだよ、これから日が暮れていくから明りとか必要だろ?」
そう言って投光器を設置して明りをつける。
「えっ? こんな屋外で電気がつかえるんですか? じゃあステッキやパソコンの充電も?」
なかなか充電する場所が見つからず、パソコンもステッキも電池切れだったカローラが瞳を輝かす。
「多分できると思うが…先ずは飯の方が先だ」
そう言って、俺は収納魔法から炊飯器を取り出す。自分で取り出しておいて言うのもなんだが、キャンプに来て飯ごうでご飯を炊くのではなく炊飯器を使う俺もキャンプを結構舐めているよな…
同じく米を取り出して釜に入れて、予め2lのペットボトルに組んでおいた水で米を研ぎ始める。
「イチロー兄さま、私がしましょうか?」
「お? カローラ頼めるか? じゃあ、俺はおかずの準備を始めるか」
炊飯の準備をカローラに任せると、俺は部屋から持って来た鶏肉や豚肉、ピーマンや玉ねぎなどの食材を取り出し、焼きやすい大きさに切り始める。
「イチロー兄さま、研ぎ終わりました!」
「じゃあ、お急ぎで炊飯しといてくれ」
「では、お急ぎで炊飯と… ぽちっとな♪」
『お急ぎ炊飯を開始します』
炊飯器からアナウンスが流れる。
「よし、こっちもおかずの準備が出来たな…じゃあ、ご飯が炊けるまで一服でもするか」
今度は電気ケトルを取り出し、トポトポと水を注いでお湯を沸かす。うーん、完全にキャンプを舐めているムーブだよな…
「俺はコーヒーを入れるけど、カローラはどうする?紅茶がいいか? それともココアにするか?」
「じゃあ、紅茶をお願いできますか?」
「分かった」
マグカップを取り出し、俺のカップにはインスタントコーヒーを、カローラのカップには紅茶のTパックを入れる。そこへ電気ケトルのお湯を入れていく。
「ほれ、入ったぞカローラ」」
「ありがとうございます、しかし、この状況って場所が外に変わっただけで部屋にいる時と同じような状況ですよね、それとあんな発電機があるなら都市の中の公園でも同じような事が出来たんじゃないですか?」
カローラがそんな事を言ってくる。
「いや、ここじゃ公園でそんな事は出来ないんだよ…やったらすぐに警察やら役人やらがやってきて追い出されてしまう…」
「その辺りは向こうの世界とこことはかなり違う所ですよね… 行商人や冒険者たちはどうしているんですか?」
異世界では街の中央にある広場や公園みたいな所は、旅をする行商人や冒険者の休憩所や交流の場になっていることが多い。噴水なんかの水もただ景観をよくするための物ではなく、水の補給に使う物が多い。逆に俺が異世界で驚いたのが、宿に行けば金が無くてもウィザードリーの様に馬小屋で寝泊りさせてもらえると思っていたが、商売の邪魔になると言われて叩き出された記憶がある。
つまり異世界での公園や広場というものは、そう言った者の為の場所なのである。
「いや、こっちの世界では冒険なんてする場所は無いし、交易の行商人…というかこっちでは運送業者だな、そっちはそこらにあるコンビニで用を済ませて、その日の内に家に帰るのが多いんだよ」
「なるほど、車がありますものね、それにコンビニもどこにでもありますし、それで公園は子供しかいなかったんですね… あっ、後五分でご飯が炊けるみたいですよ」
「そうか、じゃあそろそろこっちも焼き始めるか…」
そう言って俺はテーブルの上にホットプレートを取り出す。電気ケトルに炊飯器にホットプレート…キャンプガチ勢がいたら血管切れそうな状況だな…
電化製品使ってもいいじゃない、だって便利だもの イチロー
心の中であいだみつを風の言葉を考えた後、ホットプレートに油を敷き、鶏肉や豚肉、野菜を並べ始める。
「焼肉いいですねぇ~ 牛肉が無いのが残念ですが…」
「まぁ、冷蔵庫の余り物だからな… 今度、また食材を買い足す時に牛肉も買っておくか」
食材を並べ終えた後で蓋を閉め、取り皿と箸と焼肉のたれを取り出す。
「ほれ、カローラ」
「有難うございますっ、 あっ! ご飯が炊けたみたいですよ♪」
「おぉ! いいタイミングだな、じゃあ、ご飯をついで早速食うか!」
「はい! お昼を食べずに昼寝をしてしまいましたからね、お腹がぺこぺこですよっ!」
俺とカローラの分のご飯を継ぎ、手渡してやる。
「じゃあ食うか! いただきます!」
「頂きます!!」
俺たちは、この後、滅茶苦茶焼く肉をした…
「ふぅ~ お腹いっぱいになりました…」
「あぁ…食った食った… 朝飯の分のご飯を残さず食ってしまったな…」
朝食にある程度ご飯を残しておこうと思ったのだが、焼肉の美味さに思わず二人ともお代わりしまくって完食してしまったのだ。
「あぁ…この後お風呂に入れたら最高なんですけどね… 流石にここでは無理ですね…」
カローラが焼肉の余韻に浸りながらそんな言葉を漏らす。
「いや、入れるぞ」
「えっ!? 本当ですか!?」
俺の言葉にカローラは目を丸くする。
「あぁ、そこの上に橋が掛かっているだろ? そこを渡って、あの白くて丸い建物が温泉施設なんだよ」
「しかも温泉なんですか!?」
カローラはさらに目を丸くする。
「あぁ、キャンプ場で風呂が入れる施設を調べてたら、ここを見つけてなだからきたんだよ」
「イチロー兄さま! お風呂行きましょうよ! お風呂!」
カローラが瞳を輝かせてせがむ。
「分かった分かった、食事の後片付けをしたらお風呂に行くか、確か自販機もあるはずだから冷たい飲み物も飲めるぞ」
「やったぁ~♪ お風呂~」
「ただし、男女は別なお風呂だから、髪の毛は自分で洗えよ」
その後、俺たちは温泉を満喫したのであった。
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