第91話 外がこれなら中もそうなるわな…

「プリンクリン! なんてことをしてくれたのよぉぉ!!!」


カローラはプリンクリンの姿を見るなり、馬車から飛び降りて駆け出していく。


「あら? カローラのいたのね、おかえり」


「おかえりじゃないわよ! 私の城と骨メイドになんてことをしてくれたのよぉ!! 城をピンクに染めて、骨メイドは… なんかみんな、あなた好みの恰好になってるし!」


 カローラが激昂して、プリンクリンに食ってかかる。その様子に周りの骨メイド達はどう対処すればいいのか、おろおろと狼狽える。


「えぇ~ 城のピンク、可愛いでしょ? 骨メイド達もほら… ナギサちょっと来て、可愛かっこいいでしょ?」


 そう言ってプリンクリンは、黒を基調として所々にピンクのアクセントの入ったミニスカートのスポーティーな恰好の骨メイドを前面に押し出す。


 前々からなんだか、ひっかかる骨メイドの名前であったが、その名前の骨メイドにその服を着せたら、いくら骨とは言え、色々とあかんだろ…


「ちょっと! ナギサ! なんで貴方も嬉しそうにしているのよぉ!! ホ、ホノカはこんな服には心動かされないわよね?」


カローラを追いかけて馬車から降りて来た骨メイドのホノカにカローラは抱きつく。


「あら、ホノカちゃん、おかえり~ 貴方の分の衣装も用意しているわよ?」


 そう言ってプリンクリンは白がベースカラーで水色がアソートカラーのバレリーナの様な衣装を取り出す。


「だめ! ホノカ! そんな欲しそうな目で見ないで! 私を捨てないでぇ~!!!」


 プリンクリンの差し出す衣装に、手を伸ばそうとする骨メイドに、カローラは泣きじゃくりながら必死にしがみつく。


 おいおい… もう一人の骨メイドのホノカがその衣装なら、まんま、二人はキューティーキュアじゃねえか… ほんと、あかんだろ…


「だ、旦那… あっしは馬車を片づけてきやすので…」


 全員が降りたところで、カズオは馬車を走らせる。カズオの奴、ややこしい状況だから、逃げやがったな…


「な、なんか、しばらく離れていた間に、随分と様子が変わっておるのう…」


「なんだか、色彩が激しすぎて目がくらくらしますぅ~」


「にゃにゃにゃぁっ! なんだか、可愛い衣装が一杯だにゃぁ!!!」


馬車から降りて来た、シュリ、ミケ、ハバナがそれぞれに感想を述べる。


「あら? そこの黒猫の子、貴方もこんな衣装が着たいのね? いいわよ、見繕ってあげるわ」


「ほんとうにゃぁ!? うれしいにゃ!!」


あっという間にハバナはプリンクリンに篭絡される。


「ラグにゃんもいらないのにゃ?」


「いや、私はそんな服を着るような歳じゃないので…」


ミケはそうそうに断る。


「お前ら、そんなに歳の差あるの?」


俺が横からミケに尋ねる。


「いえ、ハバナと同い年ですが、なにか?」


「いや、いい…」


あぁ、ハバナはそういう奴だったな…


「そうそう、ダーリン、イアピースから手紙が届いているわよ。後で渡すわね~」


プリンクリンが俺に言ってくる。


「そうか、とりあえず中に入って落ち着こうか…」


そして、俺達は扉を開けて城の中へと入っていく。


「な、なんじゃこりゃ…」


「ひぃっ! 城の中までぇぇ!!! いやぁ!! こんなのいやぁぁ!! 私の城じゃない!!」


 城の中の様子を見たカローラは更に絶叫をあげる。城の外はピンクに染まっただけだが、城の中は壁紙やカーテン、その他の家財道具に至るまでファンシーなピンク色に染まっていた… まんま、ラブホテルの中だな…


 カローラは城の中を駆け出し、様変わりした城の内部を確認して回る。その都度、絶叫や悲鳴をあげ、ついにはパタリと倒れる。


「あっ… 倒れた… 流石に精神が持たなかったか…」


「まぁ… これだけ様変わりしては仕方がないのぅ…」


骨メイドのホノカが駆け出し、倒れたカローラを抱きあげる。


「ちょっと、カローラを休ませてやってくれ」


 俺がそう告げると、骨メイドはカローラを抱きかかえて、カローラの部屋へと向かった。その後、俺はプリンクリンに向き直る。


「プリンクリン、お前、ちょっとは手加減してやれ… いくら何でも、これはやり過ぎだ…」


「えぇ~ でもぉ~ 骨メイドと話をしていたら、今のカローラにはもっと可愛いものが似合うんじゃないかって話になったのよ…」


 プリンクリンは身体をくねらせながら言い訳をする。後ろの骨メイド達に視線を移すと骨メイド達はうんうんと頷く。


「いや、確かに可愛いのも似合うかも知れんが、基本、あいつはちょっと中二病が入ったのが好きなんだぞ? だから、ピンクよりも黒の方が好きなんだ」


俺の言葉に骨メイド達ははっと気が付いた仕草をして、反省したかのように項垂れる。


「とりあえず、風呂入って、飯にするから準備してくれ」


「お風呂にご飯ね… そ、その後は私かしら…」


プリンクリンは頬を染めて、上目づかいで俺を見てくる。


「いや、イアピースの手紙が先だ… それにもうしてもいいのか?」


「分かんないわ」


 プリンクリンはあっけらかんと答える。うぅ… 致したいのは山々だが、こんな知識の無い女とやってめんどくさい事になったら、流石に俺も困る。


「とりあえず、お前も一遍、医者の診察を受けろ。それからだ」


「まぁ! ダーリンたら、私の身体を心配してくれるのねぇ!」


プリンクリンはそう言って、俺の腕に絡みついてくる。



 その後、俺はプリンクリンに絡まれつつも、城の自分の部屋に一人で戻り、荷物を置いて、ソファーに座って少し休む。城に戻ってきたはずなのに、なんだか落ち着かないというか、気持ちが休まらない。


「とりあえず、風呂に入って、すこし気持ちを落ち着けるか…」


俺は旅の衣装を脱ぎ捨て、軽装になって風呂場に向かう。


「なんじゃ… こりゃ… ここまでプリンクリンの魔の手が伸びているとは…」


俺が風呂場に入って目の当たりにしたのは、やはりピンク色になった風呂場であった。


「いや、これってもう… 泡の国の風呂場だよな… くっそ! 俺の神聖な風呂場をこんないかがわしい場所にしやがって!」


 今までは完全に他人事であったが、俺の神聖な風呂場にこんな事をされては、流石の俺も怒りが沸いてきた。今なら分かる… カローラの怒りと悲しみが…


「あれ? 旦那、ここにおられたんでやすか?」


 俺の後ろから声が掛かる。振り返ると、バスタオルを胸の処から巻いたカズオの姿があった。


「だ、旦那と一緒に風呂に入るのは… は、初めてでやすね… お、お背中をお流し致しやす…」


カズオは頬をピンクに染めながら、ちらちらと俺を見てくる。


「カ、カズオ… 俺はもういいから、お前はゆっくり入ってろ」


 俺はそう言い残しカズオを残して風呂場から立ち去る。脱衣所で服を着る時に自分の身体を見ると、やはり身体全身にサブいぼが出来ていた…



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



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同一世界観の『世界転生100~私の領地は100人来ても大丈夫?~』が

最終回を迎えました。よろしければ、そちらもご愛読願います。

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