第51話 長男と次男

「なに? お前、報復しにきたのか?」


俺は一応、プリンクリンに身構える。


「ち、違うわよ! わ、私は貴方にこ、これを返しにきたのよ!」


そう言ってプリンクリンは羽織っていたシーツを俺達の目の前で開く。


「えっ!? ちょ! おまっ!」


シーツが広げられたプリンクリンの身体には、ピンク色の触手がうねうねと絡みついていた。


「お前…そんな趣味があったのかよ… さすがの俺も引くわ…」


ドン引きする俺の態度に、プリンクリンは更にキッと睨んでくる。


「違うわよ! 私にそんな趣味ある訳ないでしょ!! これは貴方から等価交換魔法で奪った、貴方のその…おちんちんが変化してこうなったのよ!!!」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


 俺はプリンクリンの言葉に驚きの声を上げる。俺の離ればなれになったマイSONが触手になってプリンクリンに絡みついているだと!?


「主様… 前々から人間離れしておると思っておったが、ここまでじゃったとは…」


「いやいやいやいや… 俺はそこまで人間やめてないぞ!! 何かの間違いだろ!!」


シュリはジト目で、俺を化け物の様に言うので、俺は必死に否定する。


「被害者である私自身が言うんだから、間違いなわけないでしょ!!」


頬を染めながら声を上げるプリンクリンの頬を、触手が懐いているように頬擦りしている。


「でも、俺の股間についていた時にはそんな、触手みたいなっていなかったぞ? なんでだ!?」


「あっ!」


後ろにいたカローラが声を上げる。


「なんだ? カローラ、何か知っているのか!?」


「多分、あれのせい」


「あれのせいってなんだよ!?」


俺はカローラに向き直り訊ねる。


「プリンクリンとの対峙前に、魅了されない様に、私の血をイチロー様に飲ませた事があったでしょ?」


「あぁ、結局、魅了を使われる前に、制圧したが…」


俺はあの時の事を思い出す。


「確かカローラを膝の上に乗せて、指をさして血を飲んだんだよな…」


「その前に、私の血を零して、ズボンの上と言うか、股間に垂らしたでしょ?」


「えぇぇぇ!? あの時の血がマイSONに付いたからだと!?」


確かにあの時、血をズボンの上に垂らした。それでマイSONに付いたから触手化するのか?


「それだけではないと思う。多分、魔人化しているプリンクリンの…その…破瓜の血もついて… その後、プリンクリンに吸収されて魔力も吸ったからだと思う…」


「いやいやいや、いくら何でもそんな事…」


「そんな事になっているから、私がこんな事になっているんじゃない!!」


プリンクリンが触手に頬擦りされながら叫ぶ。


「いや…えぇっと… それで、俺にどうしろと?」


「だから、最初から言っているじゃない! 返しに来たって!」


 プリンクリンはそう言うが、触手は離れたくないらしく、先程より一層強く、プリンクリンに纏わりつく。


「いや、今更返すって言われても… 俺はもう新しいのが生えてるし…」


「えっ? なにそれ? 貴方、トカゲみたいにアレが再生するの!? やっぱり人間離れしているじゃない!!」


「人を化け物みたいに言うんじゃねぇよ!! 聖女に再生してもらったんだよ!」


ドン引きするプリンクリンに俺は否定の声を上げる。


「貴方がすでにもう一本あるとか関係ないわ! 絶対、これを返すからぁ!」


「いやいや、そんな纏わりつく触手を返されても、俺が困るわ! もうあれだ、息子はいつの日か、父親から離れて独り立ちするものだ…つまり親離れって奴だ」


俺は息子の旅立ちを見送る親の気持ちで言う。


「だからって!私の所に来られても困るのよぉ!!」


「お前が、無理やり俺の息子を攫ったんだろうがぁ!! 最後まで面倒見ろよ!!」


涙目になって声を上げるプリンクリンに俺は怒鳴り返す。


「イチロー様」


脇にいたカローラが俺の袖を引っ張る。


「なんだ?カローラ」


「多分、あれはプリンクリンとは別の意志…イチロー様の分身の様な物。だから、イチロー様の身体に戻れば、イチロー様ならあれをコントロールできると思う」


「コントロールできるって言ったって… 戻ってきたら俺の二本になるのか?」


エロい俺でも流石に二本は無いよな… 


「ねぇ! 頼むから引き取ってよぉ~!!」


プリンクリンは泣き出しそうな顔で懇願する。


「しかし…二本か…前と後ろの穴を…いやいや、俺は後ろの穴には興味ないからなぁ~ でも二本差しなら…」


「主様、冷静になられよ…」


シュリの言葉で俺は少し冷静になる。


「やっぱ二本は無いわ… まぁ、長男の息子はプリンクリン、お前の所に婿入りしたと言う事で、俺は次男と一緒に暮らすよ…」


「ねぇ… なんでも言う事を聞くから…お願いだから引き取って…」


 そう言って顔を手で覆って泣いているプリンクリンを、俺の長男の触手が慰めるように頭を撫でている… 俺が言うのもなんだが…とてもシュールだな…


「何でも言う事を聞くのか…」


俺はその言葉にゴクリと唾を飲む。ホントにプリンクリンがなんでも言う事を聞くなら…二本も…


「イチロー様、魔術的にこんな事になっているだけだから、イチロー様がちゃんとコントロール出来るようになれば、一本に戻ると思う」


カローラがポツリと言う。


「マジか? ならプリンクリンになんでも言う事を聞いてもらえる分、俺の方が得か?」


「…なんでもって言ったけど…等価交換魔法で許容できる範囲よ」


プリンクリンが涙を拭いながら言ってくる。


「その許容できる範囲って?」


「対価としてのバランスが取れているかどうかよ…例えば返す代わりに死ねとか、世界征服しろとは無理」


まぁ、確かにそうだわな。


「では、ぐふふ…性奴隷とかは?」


「多分、それも無理、だって現状と大差ないじゃない!」


「ん~ なら何処までがいいんだ?」


基準がよく分からんな…


「引き受けてくれる前提なら、等価交換魔法を使うから、それで要望を言ってみて、お互いの価値観が合えば魔法が成立するから」


「分かった使ってみろ」


 ここまで泣きついている相手だ。変な仕返しとかはしないであろう。俺はプリンクリンを信用して魔法を使う事を許す。


「んっ 今、使ったわ。要望を言ってみて」


「では、セフレになれ」


 俺が言葉を口にすると、プリンクリンの触手が輝き始める。そして、光の粒子になって俺の体に吸い込まれていく。そして、俺の股間のマイSONが力強く脈動するのを感じる。


「おぉ!! なんかみなぎる力を感じるぞ!!!」


「普通、こういったシーンは主人公のパワーアップのシーンなのじゃが… 股間限定と言うのがなんとも主様らしいのぅ…」


シュリが俺の姿を見て呆れたように言う。


「良かった…ほんとに良かったわ…私、一生あのままかと思ったわ…」


触手から解放されたプリンクリンは、触手の無くなった自分の身体を抱き締める。


「というわけで、プリンクリン。お前、セフレって言葉の意味は知っているか?」


「知らないわよ、でも、お互いの価値観を魔法で公平に照らし合わせたから、そんな酷い事じゃないでしょ?」


「では、これから教えてやろう」


俺はツカツカとプリンクリンに近づく。


「えっ? ちょっとなに?」


俺は戸惑うプリンクリンを抱きかかえ、カローラとシュリに向き直る。


「俺はちょっと、プリンクリンにセフレの何たるかを教えてくる。ちょっと時間がかかるかと思うので、お前たちは先に風呂でも飯でも寝るでも好きにしろ」


俺は二人に言い残すと、プリンクリンを抱え俺の部屋へと駆けて行った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



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