はらつい・孕ませましたがなにか? ~勇者パーティ内で女性メンバー全員を口説いて回った最強チートの俺が、リーダーにばれて追放? だが、もう遅い~
にわとりぶらま
第01話 いやいや、それはお前のセリフではないだろ
「そろそろ、魔族の勢力下を大分進んだと思うがどうだろう?」
俺は小高い山に駆け登り、高い木を見つけて辺りが見渡せる枝の上に立つ。そこで、目に望遠魔法をみょんみょんとかけて、辺りを見渡す。すると、一尾根越えた平原に、炊飯する煙が幾つも立ち上っている。
「こんな所に炊飯する煙? 王国連合軍はここまで進行していないだろうから、魔族側の亜人の軍勢が駐屯しているのか?」
そこで俺は考える。ここから遠距離広域魔法を撃ち込んで殲滅してやっても良いが、もしも王国連合軍だったら困る。
「直接行って、確認してみるか」
俺は、姿の消える隠蔽魔法と物音をたてない遮音魔法をかけて、木から飛び降りて、炊飯の煙が上がる場所へと向かう。本来この様な偵察任務はネイシュの担当ではあるが、実の所、ネイシュより上手く行える自信はある。俺はアソシエの様に単体・広域問わず、攻撃魔法を使えるし、ミリーズの様に回復・支援魔法も使いこなせる。そして、ネイシュの様に隠密・偵察・罠解除などお手の物である。
そもそも、団体行動があまり好きではなく、ソロ活動を行っていたので、本来であれば、担当を割り振って行う事を自分ひとりで行っていたからだ。一般人であれば、一つ極めるのに膨大な時間と労力を必要とする所ではあるが、異世界転生するときに再構築された身体はホント高性能であり、様々な技能の習熟が驚く程早い。
だから、一人になった今も別に大変だとは思っていない。逆に仲間を気にせず。無茶苦茶出来る。俺はちょっとした解放感を味わっていた。
「そろそろ、見えてくるな…なんの軍勢だ?」
俺は立ち止まって、森の中から、軍勢の様子を伺う。すると、豚を人間にしたような亜人であるオークの姿が見えてくる。
「オークかぁ…」
俺は少し落胆の声をあげる。オークの軍勢は煙の数とここから見るに千人ぐらいの軍勢であろう。ここから攻撃魔法を叩きこめば、容易く全滅させる事が出来る。
しかし、一般人にとって大規模であるが、軍隊や俺達にとって小規模の、しかもオークの軍勢を全滅させた所で大した手柄にはならない。
俺はうーんと頭を捻って考え込む。
「ボスを捕まえて、情報を吐かせるか」
俺は隠蔽魔法をかけたまま、オークたちの駐屯地へ近づく。遠くから攻撃魔法をしかけてはボスまで倒してしまうからである。
駐屯地の中に入ると、自分たちで作った物か、それとも人類から奪った物かは分からないが、粗末な武装をしたオークたちが、せわしなく野営の準備をしていた。
「おっ、炊飯はしているが、まだ飯は食ってないようだな」
炊事担当のオークが忙しなく、パンを焼いたり、なんだか分からないスープを作ったりしている。
「丁度いい、スープに毒を仕込むか」
そう言って、俺は思い出しながら魔法を使う。魔法が完成した所で、スープを調理している近くの物を落とし、調理しているオークがその落ちた物に気が向いている隙に、スープに魔法で完成した毒を仕込む。
この魔法は俺が編み出したオリジナル魔法で、最初は眠気が出てきて、そのうち完全に眠り込んでしまう。そして、眠ったまま死に至る魔法なのだ。これはこうした軍隊の食料に仕込む為の魔法で、直ぐに死んでしまっては毒がばれて、全員食べなくなってしまうので、わざと効き目を遅くしたものだ。だから、後はゆっくりと待てばいいだけ。様子を見ていればよい。
そうしていると、出来上がったパンとスープを大盛にして、一人のオークが何処かに運んでいく。
「よし、これだな。こいつの後についていけばよい」
亜人の習性からすると、食事は先ず初めにボスの所に持っていく。だから、こいつの向かう先は俺が探しているボスだ。
「あたりだな」
思った通り、給仕のオークは天幕の一つに入っていき、中を確認するとオークたちより一回り二回りでかいハイオークがいた。おそらくこいつがボスだ。
ハイオークは渡された食事をがつがつと食い始める。そして、天幕の外でも、皆、食事を始める音が聞こえる。あとは一時間程待てば、皆、眠り始め、そして死に至るだろう。
そして、一時間後。オークの軍勢はボスを含め、一人残らず眠り込んでいた。俺は探知魔法でオーク達の状態を確認した後、ボスのハイオークに拘束魔法をかけ、引き続き解毒魔法をかける。ボスまで死なれては情報を聞き出せないからである。
「おい、起きろ」
俺は地面に横たわるハイオークの頭を蹴り飛ばす。ハイオークは解毒魔法と俺から蹴りを食らった事で、眠りから覚醒し始める。
そして、眠りから目覚め、隠蔽魔法を解いた人間である俺の姿と、自分自身が拘束されている事に気付く。
「おいおい、騒ぎ立てても無駄だぜ。お前の仲間は既に、毒であの世行きだ。お前には誰の助けもないぜ」
俺のセリフにハイオークは、蒼ざめながら顔を歪ませる。
「くっ!殺せ!」
ハイオークは俺を睨みつけながら言う。ん?なんだそのセリフ…
「いや、お前は殺さない。お前には色々と情報を吐いてもらわねばならないからな… 嫌だと言うなら、その身体を痛みつけるまでだ」
俺は拷問を仄めかして、ハイオークを脅す。
「我が肉体をどれほど痛めつけ、辱め様とも、我が心だけは自由に出来ぬ! 決してくじけないぞ!」
「なんで、オークであるお前が女騎士みたいな事言ってんだよ!」
「さぁ!殺せ!」
なんだか嚙み合わない会話に段々腹が立ってきて、俺は剣を抜く。そして、少し脅す為に肩の辺りを少し刺す。
ぷつり
「いやぁ~!! 痛い! 血! 血がでてるぅ!! 痛い! 痛いよぉ~! ママん! 痛いよぉ~! 助けてよ~! ママぁん!!」
刺した瞬間、先程の毅然とした態度とは打って変わり、ハイオークはまるで、転んでケガをした幼児の様に泣き始めた。
「おまっ! なんだよ! くっころとか言っておきながら、ちょっと刺したぐらいで泣き出して!」
「だって、だって… こんな奥地で戦ったことなんか無いから、怪我したことも無いし…」
なんだよ、こいつ。こんな奴がここの大将やっていたのかよ… 逆に魔族側の人材が心配になって来たわ…
「まぁ、どういでもいいや。そんな事より、お前の持つ情報を洗いざらい吐いてもらうぞ」
俺の言葉にハイオークは、それはそれは見事な服従の姿勢を示した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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