第4話 悔しさを胸に

 太陽が昇ってから起きるものとばかり思っていた。

 昨日ジョブマックス学校の外れの塔に引っ越してきた俺は、疲れ果てて眠ってしまった。


 ゆっくりと太陽が昇ってくるのを窓から見る事が出来なかった。

 なぜなら。


「起きてくださいまし、このセスリア、簡単な運動をしようと思っておりますわ」

「あ、まじか」


 それからメイドのセスリアの助けの元、寝ぼけ眼で着替えた。

 塔の外に出ると、空はまだ闇が支配していた。

 

「では、このセスリアについてくださいまし」

「悪いが運動には自信があるんだ。農家ジョブでの畑仕事で鍛えたからね」


「ほう、それならその力見せてくださいね」


 セスリアがにこりと可愛らしい笑顔を向けてくれた。 

 俺は男としてどぎまぎしてしまったが、走り出した。

 セスリアはここに来てまでメイド服であった。


 走りにくそうだけど、彼女はすいすいと走ってしまう。

 俺が少し汗をかき始めるが彼女は一切汗もかかないし、にこやかに微笑み続けている。


「なぁそろそろ、やめないか30分くらい走ってるぞ、はぁはぁ、もう限界で」

「何を言ってるんですか? 今は朝方の4時です。6時まで走り続けてあなたの体力を増やします。その後お食事です」


「てか、まじか、セスリアは苦しくないのか」

「セスリアは一週間走り続ける事が出来ます」


「せ、セスリアってただのメイドじゃないのか、そりゃそうかあの小人の校長の養子だもんなぁ」

「違います。校長がすごいからじゃありません、セスリアがすごいのです。セスリアは呪いの病にかかり15歳で死ぬはずでした。校長に15歳までジョブの訓練をさせてと懇願しましたわ。校長は伝説の回復師を召喚してくれまして、呪いから解放されたのですわ、その後、呪いの病が珍しいとのことで闇の剣にターゲットにされまして、見かねた校長が養子にしてくれたのですわ。このセスリアを守るために手元においてくれる。校長は最高の養父なのですわ」


 セスリアは本当に何者だろうかと思った。

 きっと呪いを受けて15歳で死ぬはずだったから、死ぬ気で修業したんだよな。

 俺も母親と弟と妹の仇をとるなら死ぬ気で修業しないとな。


「ごめん、セスリア、俺が甘かった」

「では走り続けるのですわ」


 太陽が昇りきる頃には俺はへとへとになって朝食を食べていた。


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登校

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 俺は学校に登校した事がなかった。

 普通ならどこかの小さな学校に通って、読み書きなどを教わるはずであった。

 母さんは俺を学校に入学させる為に無理して働き体が弱っていった。 

 だから俺は学校にいかなくていいと言った。

 その分独学で頑張った。

 一応読み書きもちゃんと出来るし、よく弟と妹に教えていた。

 

 だからジョブマックス学校に入るという事は人生で初めて、学校という場所に入るという事であった。

 

 塔から出た時にテンクウカイ・ゼツビ先生と合流を果たした。

 彼の誘導の元、俺は炎のクラスの扉の前にやってきていた。


「俺っちからの助言だ。複数のジョブを同時に使用できるという事は内緒にしたほうがいい、いくら15歳でもまだまだ青いガキだ。お前がなぜそのようなチートみたいなのを覚えられるかと質問攻めにする奴と、虐めてくる奴に分かれる。気を付けな」


「はい、気を付けます。基本は農家職と言う事に」

「そうしてくれ、じゃあ入るぞ」

 

 テンクウカイ先生は扉を思いっきり開いた。

 15個の机とテーブル。それぞれ個性的な衣服。男性が自分を入れて7名で、女性が8名いた。


 彼らはにこやかにこちらを見ている。

 

「こいつが新し転入生だ色々と問題を抱えているからよろしくな、じゃ、テナテナとラルスの間の机が開いている。そこに座れ」


 俺は言われた通りに赤い髪の毛をしている強気なテナテナという女性と青い髪の毛とピエロのような恰好をした少年ラルスの間に入った。

 一応一番後ろの席と言う事なので、緊張はしなかった。


「よろしくね、わたしテナテナ・フォックスフォードよジョブは【剣闘士】よよろしく」

「僕ねー僕僕、僕ねーラルス・シェッカーだよん、ジョブは【道化師】だよよよん」


「あ、僕はテンマ・サルファルドでジョブは【農家】だよ」


「一般的なジョブなのね、残念、もっと強い人と出会えるかと期待してたのに」

「テナテナはひどいな、この世界は農家で成り立っていてもおかしくないんだぞ、人は食べ物が無ければ生きていけないのだ」


「おい、そこ、授業が始まるぞ」


「「はいはい、お天気先生」」


 静けさが周りを支配していたのに、今ではその静家さがなくなり暖かい空気となっていた。

 それからテンクウカイ先生の授業が始まった。

 テンクウカイ先生は【戦争】について担当している。


「皆が死っての通り俺っちのジョブは【天気予報士】だ。シンプルなジョブだが、あまり発現しておらず気象だから希少とされるってね、まぁ天気を操る魔法使いとでも思ってくれ」


 最終的にはとんでもない事でテンクウカイ先生はまとめてしまった。

 その時、格好をつける為なのか髪の毛がキラキラと光った。

 それはきっと空気中の何かを操作したのだろうと思った。


 「戦争は悲劇しか生まないと人は言うが、幸福も生み出す。ジョブ戦争学校の大陸の出身である俺っちの親は戦争のないジョブマックス学校の大陸にやってきた。親は戦争のない世界を俺っちに見せたかったとのことだ。俺っちはジョブ学校に来て修行を繰り返し、力を得た。君たちも力を得るが、使いどころを間違えるなよ」


 ひと段落終えて、テンクウカイ先生はにこりと頷き。


「このレポート用紙に感想を2000文字以上で述べるように、では授業を終える」


 ちょうどその時になってチャイムの音が鳴り響いた。 

 さすがは天気予報士と心の中で思ってしまった程だ。


 先ほど2人に自己紹介した時に、周りの同級生たちにも名前を聞かれており、彼らは最初から俺の名前をテンマではなくテンとあだ名で呼ぶようになった。

 

 

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