第24話 意外とやばかった世界。色々な意味で

《side東堂歩》


 取り敢えず、俺に関してはお咎め無しという方向で話は固まり、そこからなんやかんやあって解散となった。特筆すべき点は……いや一点だけあったな。


「俺の身体を研究したいとかどういうこっちゃ」

「順当」

「当たり前だよ……」

「そりゃ調べますよね……」


 神崎さん主導の『俺』解析計画について愚痴ったら、戦姫三人からツッコミが。なしてよ?


「自分の胸に訊きゃ分かるだろ」

「俺の胸は喋らないの」

「比喩だ比喩! ……いやでも、お前なら有り得そうだな」

「人を何だと思ってるんだ」


 そんなリアルで喋るような内なるナニカなんて存在しねーよ。

 という訳で全力否定をさせて頂いたのだが、返ってきたのは環さんのこんな言葉。


「でも実際問題、東堂君の所業って神や悪魔みたいな何かが宿ってないとできなくない?」

「だから宿ってなど……待ってそもそもソイツら居るの?」


 一瞬比喩だと思ったけど、魔法少女っぽいことをやってる環さんが言うとマジでいる気も。イクリプスなんて意味不明な存在も実現してる訳だし。

 さてどっちなんだろう?


「今はいないかな?」


 回答、微妙。


「……何故に過去形?」

「昔はいたんだよね。ただ今はいないというか」

「……昔はいたのか」


 速報、現世が思ってた以上にファンタジーしてた件。

 ただそうなると、『今』はいない理由が気になるな。


「何でいなくなった訳? 巨大隕石でも降ってきた?」

「恐竜の絶滅じゃねえから」

「いや例えよ」


 でも実際、そういう超存在を絶滅させるのってそれぐらいの規模じゃなきゃ駄目では? 伝承的に大丈夫そうなの結構いるけど。


「えーとですね、いなくなったと言っても、そういう物理的な要因ではなくてですね」

「ほう?」

「そもそもそういう伝承の存在って言うのは、色々な現象や概念に人間がエピソードを紐付けして誕生したんですよ」


 そう前置きしてから、小森さんは『炎』を例にとって説明してくれた。


「まず初めに『炎』という現象があります。昔、それこそ石器時代とかそういう文明発生当初において、燃焼や発火の理由など解明されていません。故に人は理由を求める時、そこに神など超越者を見出しました」

「『このあっついのは神様的なすげえ存在がやったことだ〜』みたいな?」

「そういうことです。そして神の雛形となる存在が形成され、そこに神話などのエピソードが付け足された結果、人格やら性質やらが決定して『固有名詞を持つ炎の神』が誕生するのです」

「なるほど」


 うん。神が成立するプロセスは分かった。それは良いんだけど。


「それ結局空想よな? 何でそこから実現してるの?」

「世界の意思と言われていますね」

「……わっつ?」


 何ぞまた良く分からん要素が出てきたぞ。


「世界が滞りなく運行される為に、その制御端末として神などの『超越者』を世界が利用した。その結果として実現したと言われています」

「……つまり○月の神霊みたいな奴ってこと?」


 いや、アレはアレで微妙に違うカテゴリーな気もしなくはないけども。取り敢えずイメージしやすいから敢えて挙げてみた。


「その作品については分からないのでなんとも……。まあ、そんな認識で良いんじゃないですか?」


 が、返ってきたのはまたしても微妙な言葉。


「適当すぎん?」

「いや、ぶっちゃけ私たちもざっくりした知識はありますけど、専門に学んだ訳じゃないので。そういう神秘学は本物の魔女や魔法使いの領分ですし」


 そう言って『詳しいことは知らん』と首を振る小森さん。念の為、他の2人に視線をやるも、揃って似たような反応が。えー……。


「キミら、分類上は多分魔法少女なのに知らんの?」

「アタシらは『戦姫』であって、マジもんの魔女や魔法使いじゃねえしな。当然魔法少女でもねぇ」

「私たち『戦姫』って、単に魔力の適性が高い女の子を集めて、専用の訓練を施した非公式の特殊部隊だからね。バックに国がついてる戦姫と、血筋や伝統がモノを言う『術者』は、形は似てはいるけど別物だよ」

「そもそも魔導って、向こうの界隈からすると異端扱いですしね……。ガッツリ最先端科学を使ってるせいで、特に昔ながらの方々にはウケが悪いんです」


 ……なんというか、色々と面倒そうな事情が垣間見える話だなぁ。フィクションでは水と油な関係みたいに描かれたりしてるけど、現実でそうなってるとなるとゲンナリするというか。


「でもさ、キミらが使ってるのは『魔法モドキ』だろ? つまり魔法系の技術が提供されてるってことじゃねえの?」

「あー……なんて言うんだろうな?」

「一応、イクリプスっていう物理無効の人類全体の脅威が存在してるから、あっちの業界とは協力関係にはあるよ。古くからある結社や一族から、人員を派遣して貰ったりとか。場合によっては丸々1つの団体が移籍してくれたりもするし」

「……ただそういう柔軟な方々ばかりではなくてですね。保守派と言いますか、伝統を重視する派閥も存在してるので」


 あ、察し。


「そういう所に限って業界内じゃ力があったりする?」

「……そうだな」

「単純に魔導を毛嫌いしてるだけじゃなくて、そこに絡めて地位や利権を巡る保守派VS政府の権力闘争は起きてたり?」

「……してるね」

「なんなら向こうの業界独自でナマモノ始末してたりしてない?」

「……してますね。ボランティアって名目で」


 はい。泥沼の争いの数え役満ですね。人類って本当に愚か。


「これそのうち内部分裂しねえ? ナマモノと戦う傍らで対人戦発生するんでねえの?」

「……いや、まあ」

「……大丈夫だよ、うん」

「……今のところは、ですけど」


 三人の歯切れの悪さが現実を物語ってる気がするのじゃが。やっぱり何処にでもやべぇ阿呆っているのな。俺なんてマトモに思えてくるよ本当に。


「……はぁ。辛気臭い話は止め止め。脱線した話を戻すべ」

「あ、そうですね! ……何処まで話ましたっけ?」

「神とかが発生した理由」

「そうでしたそうでした」


 小森さんは思い出したとポンと手を打ち、そのまま続きを語った。


「そうして生まれた超越者ですが、残念ながら時代の流れには勝てなかったのです。概念の制御装置として世界に採用された訳ですが、その元となった概念は時代と共に移ろいました。科学による物理現象の解明ですね」

「炎は神様じゃなくて熱エネルギーだと。そういう感じ?」

「そうですね。……まあ、神秘学の観点だと、物理現象とは概念の定義付けの一つがたまたま普遍的なものとして扱われるようになっただけで、普及するものが違えば異なる結果になっていただろうと言われてますが」

「何そのトンデモ理論……ああ、いや。常識の移り変わりって面では間違ってないのか」


 昔は神の奇跡が大衆の常識で、科学こそが非常識だった訳で。そして遥か昔においては、だからこそ神が存在して奇跡を行使してたのか。


「話が見えてきたぞ。概念の変化によってその手の超越者も変化……いや、世界の制御端末が物理法則に移ったとかそういう感じか」

「そういうことですね」


 だから『昔』はいたけど『今』はいないと。元となった概念じばんは揺らぎ、世界からも首をすげ替えられた。そのせいで伝承の存在は現世から姿を消した。……これやっぱり○月っぽくね?


「……ところで姐さん。何でそんな驚愕の目を向けてくるの?」

「……いや、さっきの話から薄々思ってたんだが。東堂、お前ってもしかして環の同類か? 言動はアレでも頭の回転自体は速いタイプか?」

「ちょっと奏!? 流石に東堂君と同類扱いは断固抗議するよ!?」

「その抗議に抗議するぞコラ」


 そうまで全力拒否されるとね、当然の反応だと分かっていても傷付くのよ?


「……えーと、話を戻して宜しいですか?」

「あ、スマソスマソ。ただ話ってもう終わりでね?」

「いえ、ある意味ここから一番の本題ですよ。東堂さんの力の由来についてです」

「ほん?」


 由来? んなもん無いと思うよ?


「お忘れか小森さん?さっき神崎さんに『キミはどうやってあの力を身に付けたの?』って訊ねられて、『さあ? アニメ見て自己流の解釈でやったらできた』って答えた我ぞ?」

「あれほど理不尽な返しもねえよな」

「まあ、東堂君の存在自体理不尽だし」

「シャラップ二人とも」


 特に環さん。


「まあ、はい。でもそれは単に、東堂さんが気付いてないだけかもしれませんし」

「というと?」

「さっきの話ですが、神、悪魔、英雄、怪物etc.。そういう超越者たちは時代の流れによって根幹が揺らぎ、現世から姿を消しました」


 しかし、と小森さんは続ける。


「ただ、あくまで現世から消えただけです。かつては世界の運行を司っていた超越者たちは、その強大さ故に完全な消滅はしていないとされています」

「あー、居るは居ると?」

「ええ。ですのでその超越者たちの寵児、つまり神の加護の持ち主もまた、時たまに歴史の中に現れます」

「なるほど」


 ……納得と共に頭の中に思い浮かんだのは、我が家の親父様であった。あの人もその類っぽいなぁ……。


「つまり俺がそれだと、小森さんは思ってる訳だ」

「ええ。そして神崎さんも同じ考えでしょうね。後は遥か昔に混ざった神や英雄の血が覚醒遺伝したのかとか、その辺りを調べたいのだと思いますよ?」

「……どゆこと?」


 え、何? 小森さんは俺が神の一族とでも言いたいの?


「いやほら、神話でもお約束じゃないですか。神と人間の結婚とか」

「でもそれ神話じゃん?」

「いえいえ。さっきも言った通り、超越者は実在したんですよ。だから意外と現代にまで影響を与えてまして」

「そそ。人と交わって血を残したりもしてるしね。魔力の強い人間なんて大概がそういう超越者の末裔だよ」

「あとは『聖遺物レリック』って呼ばれるその手の存在と縁ある道具がポっと出てきて、社会に混乱が起こったりとかするしな」

「えー……」


 悲報、現実が創作物と同じぐらいファンタジーしてた件。……あ、今更か。





 ーーーー

 あとがき


 因みに作中で出た神関係の世界観は、述べている通り某お月様をメインと、ちょこっとスピーシーズ○メインっていう漫画を参考にした感じです。尚、本編には対して関係ない背景設定です。

 因みにスピ○メは私オススメの超名作日常学園ギャグ漫画。既に完結、それも綺麗に纏まってるてるから是非読んでね!


 ……こういう参考というか、私に影響を与えた作品をあとがきで紹介していこうかなと思ってるのですが、どうでしょう?


 そこ、露骨な文字数稼ぎとかいわない。

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