分類上は多分魔法少女なヒロインたちを最強のやべぇ奴が振り回す物語

モノクロウサギ

やべぇ奴、登場する

第1話 それは全ての始まり

 その日は俺、東堂歩にとってなんの変哲もない一日だった。いつものように学校に通い、授業を受ける。そして気付けば放課後になっているような、普通の一日であった。


「歩、お前今日どうする? 暇ならいつものメンバーでカラオケ行かね?」


 HRが終わり帰り支度をしていると、仲の良い友人が話し掛けてきた。


「んー、悪い。今日は予定がな。予約してたアニメの受け取りがある」

「あーはいはい。そのまま徹夜で鑑賞会ですね分かります」

「そういうことです」


 流石はマイフレンド。理解が早くて助かるわ。

 俺は世間一般で言う所のオタクである。好きなジャンルはバトルもの。バトル、とりわけ生身で戦うものならなんでも好きな雑食タイプのオタクで、友人たちからは生粋のバトルマニア、オタクの皮を被ったナニカなどと呼ばれている。……後半は罵倒に近い気もするが、それ程までに俺のバトルものに対する情熱は凄まじいものだということだ。

 友人たちもそれを理解しているため、こういった理由で誘いを断っても特に怒らない。

 そんな訳で、友人の誘いを断った俺は、行きつけのアニメショップに向かった。


 ──後にして思えば、この辺りから俺の運命というものは分岐したのだろう。



《side東堂歩》



 アニメショップに到着した俺は、早速予約の品を受け取りに向かった。


「すいませーん。これお願いしまーす」


 カウンターで予約票を渡すと、お目当ての品がやってくる。

 今回俺が予約したのはバビロニアで大冒険するスマホゲームのアニメ版ブルーレイBOX。神作画で有名なアニメ制作会社が作り上げた、全ての戦闘シーンがえげつないレベルの作画で描かれた個人的な前期の覇権アニメだ。

 そんなアニメを鑑賞する。特に戦闘シーンは重点的に。それこそ、戦闘シーンを現実で再現出来るレベルまで脳に焼き付ける。それが本日のメインイベント。


「デュフフ……」


 ああ、なんと甘美な未来だろう。これではキモイ笑みが漏れるのも仕方無いというもの。……いや、流石に外だし自重しないとダメか。


「とは言えなー。やっぱり唆るよなー」


 分かっていてもニヤニヤが止まらない。それが趣味、いや生き甲斐というものだ。

 我慢は無理。そう結論付けた俺は、最短距離で帰宅することにした。

 通学路として使っている大通りから逸れ、人通りが少なく、治安もあまりよろしくないと噂の裏道を進む。普段は面倒事を避けて通らないが、この道を使うと十分ぐらい時間が短縮できるのだ。少しでも早くアニメの鑑賞会を開くことを踏まえれば、まあ必要なリスクだろう。

 そんな訳で、人気のない裏道をスイスイ進んでいく。


 ──そして、妙な違和感を感じた。


「……何だ?」


 何も無い筈の道で感じた違和感。その不気味さに思わず立ち止まり、辺りを見回す。


「……?」


 だがおかしな所は何も無い。景色は昔通った時の記憶と殆ど差は無いし、人の気配も感じない。それどころか動物の気配も殆どしない。目に見える範囲にいる生物など、空を飛ぶ鳥が数羽とゴミを漁る猫ぐらい……。


「……ん?」


 あの猫、ちょっとおかしくないか? 何かシルエットが妙に丸っこいし、身体のバランスもおかしい……。


「──いや違え。もっと根本的に変だ」


 アレは見た目云々の問題じゃない。生物としておかしいんだ。なんというか、生きている姿が想像出来ない。俺にはアレが、生き物として認識できない。


『ギュア?』


 そんな俺の内心を肯定するかのように、猫?はゴミを漁るのを止めて此方に顔を向けた。


 だがソレには頭が無かった。


「っ……!?」


 あまりの異形に絶句する。何だアレは。何なんだアレは!?

 胴体のシルエットは確かに猫に近い。というより、サイズも含めて猫そのものだ。だが頭が無い。スパッと切り落としたかのように、頭部にあたるモノがない。唯一の頭部要素は、首に当たる部分が巨大な口になっているぐらいか。

 まあ端的に言って化け物である。


「……ただ化け物と言っても、妖怪とかそっち系では無さそうだな」


 どっちかっつーと、エイリアンとかUMAみたいなSF系。幽霊や妖怪みたいな【怖い】ものではなく、クトゥルフ的な【悍ましい】タイプだ。

 いや、どっちにしろ一般人が遭遇すれば失神ものだけども。良く見たら漁ってたのゴミじゃなくてネズミの死骸だし。


「てかやっぱり肉食なんか……」


 ということはだ。


『ギュギュギュギ!』

「ですよねー!!」


 猫モドキがネズミの死骸から俺へとターゲットを変更した模様。そりゃ新たに新鮮で食いでのあるお肉が近寄ればそうなるよなぁ!


『ギュギュギュアァァ!!』

「んぎゃぁぁぁ!?」


 猫モドキの化物が襲い掛かってくると同時に、俺の悲鳴が辺りへと響き渡った。

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