街路樹を駆け抜けるGコード

走っていた

脚を緩めると

身体はとたんに楽になり

ふと我に返る


何のために

走っているのか

自分のためだと言うのなら


途中で歩いて

途中で休んで

誰に迷惑をかけると言うのだろう


いったい


そんな自分を

自分だけが叱咤して

それが本当に

自分のためだと言うのだろうか


ギターを奏でる音がする

誰かが公園で練習をしている

弦は張りすぎても

緩すぎても

けして良い音がしない

ちょうど良い張り心地がある


再び走り出せば

脚は少し軽くなっていた


あとどれくらい走るのだろう

もうどれくらい走ったのだろう


それはきっと

自分が走りたい道だけではなかった

これまでも

多分これからも


誰かに植えられた街路樹たちが

視界の後ろへ流れていく

そこで一生を終えるのだろうか


でもその花たちが誰かの心を癒し

その葉が織り成す木陰が誰かを護るなら

あゝ護ると言うのなら


僕は立ち止まってはいられないと

再び走り出した


それは少し張りつめた心かもしれない

けれど多分ちょうど良い


駆け抜けるGコード

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