パーティー追放されまくる! そのおっさんヒーラーという職業を勘違いして杖の達人になりました!?

MIZAWA

第1話 なんか違くね?

 俺は最強のヒーラーになる為に森の中義理の父の元で修業してきた。

 親父はヒーラーの極意を教えてくれた。

 それは上手く杖を使う事であった。


「親父、今日の修行はなんですか」

「うむ、杖の修行じゃ」


「親父、今年で10歳になりました。今日の修行は」

「杖の修行じゃ」


「親父、今年で15歳になりました。そろそろ外の世界に行きたいです。森の中は飽きました」

「いかん、外は誘惑だらけだ。杖の修行じゃ」


「親父、20歳になりました。今日の修行は」

「うむ、杖の修行じゃ」


「親父30歳になりました。お、親爺いいいい血を吐いてますよ」

「かは、かは、杖の修行、ぐは」


「お、おやじいいいいいいい、杖を抱きしめて逝くなってええええ」


 その日ぼろ小屋の自宅を燃やして親父を埋葬した。

 ちなみに親父が大事に抱えていた杖は譲り受けたほぼ強制的に。

 あれはおかしい、死んでるのになかなか離さないので何度も顔面殴ってやったよ、憎しみを込めてな。


「俺は最強のヒーラーだぜ」


 初めて俺は深い森の中ら出ていった。

 向かう先は冒険者の街と呼ばれる所だ。

 そこには大勢の冒険者たちがクエストを受けにやってくる。

 この俺もヒーラーとして名を馳せよう。


 俺は真っ先に冒険者ギルドに入ることにした。

 宿屋を決める事もなく装備を新調することもなく、親父が残してくれた杖とぼろぼろの衣服で。

 

 どすんどすんと歩きながら、受付嬢の机まで到着する。


「たのもう、冒険者になりたいのだが」

「では、ここにサインしてください」


 受付嬢は可愛らしい笑顔を向けてきた。

 ぐは、心臓に何かが突き刺さった。

 これ以上見たら惚れてしまいそうだ。


 おっさんとして俺は落ち着けと自分に言い聞かせて、サインをした。

 ちなみに親父が文字の書き方を教えてくれたのでなんとなかった。


「では、あなたは冒険者ランクDからスタートです。ある程度クエストをクリアすると、昇進クエストを受ける事が出来ますので、それを受けるとランクを上げる事が出来ます」


「うむ、そういうことなら」


「初めての方はパーティーを組んで色々と勉強する事をお勧めします」

「うむ、俺をパーティーに入れてくれる輩はいるのだろうか」


 そんな事を考えていると、3人の男女が声をかけてきた。

 

「おっさん、一緒に冒険してみねーか、色々教えてやるよ、その杖高そうだよな」

「おお、そなたたちがご教授してくれるとはこれは助かりました」


「きゃはは、しゃべり方なんかおかしいぞ」

「きっと田舎から来たんだろうな」


 それから俺達は討伐クエストを受けた。

 とはいえ【ウルフソルジャー】というモンスターを50体討伐するクエストだった。


 その草原に向かうまで、3人の男女達が自己紹介してきた。


「俺様の名前はレッドリーだ。戦士職だよく覚えておけ」

「私はモモネよよろしくねー、弓職してるのよ」

「僕はアオヤマだ。魔法職をしている」


「俺は最強のヒーラーをやってるぜ」


 それから俺達は移動を始めた。ウルフソルジャーは近くの森にいるとの事だ。

 なぜか俺が住んでいた森は立ち入り禁止区域になっていたが気にしないでおこう。


 移動中3人はけなげに会話を繰り返していた。

 これが若者という奴なのだろう。

 俺は青春時代を修行に費やし、杖を何度も降りまくった程度だ。

 青春はビッグベアーと鬼ごっこしたり。

 ゴブリン達と殺し合いをしていたものだ。


「ついたぜ、おっさん、あれがウルフソルジャーだ戦い方って奴を教えてやるぜ」


 そういうとレッドリーが剣と盾を構えて走り出した。

 ウルフソルジャーはゴブリンより小さく、まるで小型犬を人型にしたような感じだ。


 そいつらは槍を握りしめている。

 レッドリーは圧倒的な力で、ウルフソルジャーを斬り伏せていく。

 その背後から弓職のもモモネが弓矢を射る。

 矢は性格にウルフソルジャーの顔面に命中した。

 その後ろからアオヤマが炎魔法の範囲でウルフソルジャーを片端から燃やしていく。


 俺はふむと腕組みをしながら考えていた。

 こんなにへぼいのか?


 それはモンスターではなく冒険者の彼らであった。


 それは突如として巻き起こった。

 ウルフソルジャーの後ろから巨大なウルフソルジャーがやってくる。

 とはいえビッグベアーよりは小さい。


 3人の冒険者たちは尻込みしている。


「おっさん逃げるぞ」


「なぜだ。あんな強そうな敵はそうそう簡単には出会えないぞ」

「あれはウルフキングよ、私たちでは倒せない、それにあなたはヒーラーよ」


「ふ、ヒーラーにはな、やれることがあるんだよ、それはなぁあああ、杖を振り回すことだ」


 目の前のウルフキングに向かって走りながら叫ぶ。


「ヒーラーとはな仲間を守る為にいるんだぜ、仲間が怪我をしないように戦う。それがヒーラーだと師匠は言っていた。ヒーラーとは圧倒的な杖使いの事だってなぁあ」


 アオヤマが腕を組みながら考えているようだ。


「なぁヒーラーって回復する奴だよな? おっさんのヒーラー違くね?」


 それに対してレッドリーとモモネはよくわからない表情をしている。

 俺は地面を蹴り上げた。

 圧倒的なジャンプ力から落下し、杖を叩き落す。

 杖はウルフキングの脳天をたたき割り、その場所にウルフキングが倒れた。


「い、一撃なの、あなたヒーラーでしょ」

「そうだ。俺はヒーラーだぜz」


 俺はくっくと笑いながら。決めポーズを取っていた。

 それから俺はこのパーティーメンバーから追放された。


「な、なぜだあああああああ」


 1人の男の慟哭が響き渡った。

 これから1人ヒーラーとして頑張ろう。

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