第50話 逃亡中
密室にエイルの豊満なおっぱいが当たっている状況に、若干ムラムラしているぜ。後、はぁはぁしてたら普通にエイルに気色悪がられた…
何故だろう。妹に以外に罵倒されても普通にショックを受けるんだ…
「さて、今、ナケネがいない状況。何故か撃っても避けられる。かなり状況が悪いです…今見つかったらさっきみたいに上手く逃げられるとは思えません」
たしかに…逃げ足のウサイン・ボ○トとも言われた俺の走りを、あのゴーストたちはそれに並ぶ、いやそれ以上の動きで追っかけてきた。
これは…厳しい戦いになる…そんな予感がした。
♣︎
一方その頃、マインら一行は…
「あの、博士ー?なんで私らはこんなキモキモキメラーズに囲まれてるんですか?」
「全方位警戒と、僕らの姿を認識させないためだよ。何言っているんだ」
いや余計に悪目立ちするでしょ…というか、暑苦しい…このキメラども妙に暑くて…
「あの、熱中症になるのでこのキメラ退けてくれませんか…?」
透けてしまったTシャツをパタパタしてキメラの中心にいるマインに呼びかける…
「さっきからそうしてるけど…なんかどいてくれない…」
「え"ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…」
つまりこいつらといるということは、この地獄の暑さを乗り切らないといけないというのか…
この2人はある意味厳しい戦いを強いられていた。
♣︎
「雪ー!学院の3階が消えたわけじゃなくて、そう見えてるだけだったら、雪が天井に穴を開けることができないか?」
『お前はか弱い乙女に天井に穴を開けろって正気か?』
おかしいな。か弱い乙女は大剣を両手で粉砕なんてしないはずなんだけど…か弱い乙女は風呂を覗いた兄を半殺しまではしないはずなんだけど…というか、珍しくまともな提案をしたはずなんだけど…
俺の懐疑的な無言の圧力に、雪は無言で俺と変わり、ジャンプで天井に右ストレートを叩き込んだ。
「うん。壊れんな…前に1回やったけど、壊れんかったからな…」
というわけで、俺はナケネを探すことを優先的に、再び学院内の探索を続ける。
怖がりのエイルは俺に引っ付きながら学院を歩くが、邪魔じゃないから切実にもっとくっついて欲しい。
ちなみに、そのことを伝えると、エイルがなんか可哀想な人を見るような目で一歩退いてくる。泣いた。
「ッ…………………!」
俺は即座にエイルの口元を隠して物陰に隠れる。
影に隠れた俺たちの目には綺麗なフォームで全力疾走するシュールな崩れ肉が写っていた。
「ふっ…一流の逃げランナーは隠れることも一流…ッ!」
『え、キモ』
「カッコつけてますけど情けないんですが…」
俺が髪をかきあげてカッコつけて見せると、女子陣からの心にくる罵倒が帰ってきた。
見た目が美少女じゃなかったら、もっと言われていたと思うから全然傷ついてなどいない。そう、全然傷ついてない。ちょっと目から汗が垂れそうになっているだけである。
そんなシリアスな状況でも抜けない日常感に、全員の空気がだんだん和やかになってきた頃…
「あ“あ“ああ……………」
「「『へ?』」」
後ろからゴーストの声。後ろには10体ほどのゴースト…
「あ」
『テメェェェェェェェェェェェェェェェェ!何が逃げランナーだよ!思い切り見つかってるじゃねえか!責任取れ!クーリングオフじゃ!』
「分かった分かった!責任とって婚姻届取ってくるから!」
謎な1言を口走った雪。残念ながら、「責任取ってうんたらかんたら」の1言は、顔面が欠損していても、もうすぐ漏らしそうでも、たとえ雨の中風の中でも聞き逃しはしない!
『あ“?』
はい、なんでもありません!
それより…
「逃げるぞおおおおお!!!!!!」「ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
学院内での苛烈な鬼ごっこは、再び幕を挙げた。
「ちくしょう!隠れる場所がねぇ!俺1人なら逃げ切れるのに!エイル!俺に銃を撃たせろ!」
逃げというのに、ゴーストに銃を突きつけるエイル。俺はスピードを落とし、エイルの向けている銃口の照準を少し合わせた。
気休めにでもなれば…!
そうして放たれた霊弾は、エイルの抜けてしまった腰によって少し下に照準がずれてしまった。
だが…
「わっ…!」
エイルを横に突き飛ばして、異常に速いゴーストの標的を俺に向けることに成功した。
「な…何をやって…」
来んな。お前は標的をずらしている間に逃げろ。俺を含めて、美少女…認めたくねぇけどイケメンの損失なんて物語の損失だからな!誰も死なせやしねぇから!」
俺はわざと大袈裟に身振りをして、ゴーストを挑発して、エイルが「ありがとうございます」と逃げていくのを見守って、俺は反対方向に逃げた。
「さすが単細胞!2手に分かれるなんて選択肢はなかったぜ!」
『……良かったのかよ…武器持ち逃して。あいつ…焦って武器まで持ってたぞ』
「いいんだよ!エイルは俺に惚れなおしただろうぜ!」
学院、ゴーストハザード。エイルとイア班。単独行動。
♣︎
「とは言っても、これ無理ィィィィィィィィィィィィ!みんな早えんだよ!」
ゴーストとの迷走に、早くも根を上げてしまいそうな俺は情けなく叫んだ。
というか、ここまで走り回って、はぐれた仲間と全員会わないって、どんだけ広いんじゃ!
そんな風に、バテた声が学院内にこだまする音と、雪のたまに話しかけてくる声に、ゴーストの声しか聞こえなくなって数分がたった…その時である。
《新規スキル 【察知】を獲得しました》
俺たちを救ってくれる1手の声が聞こえたのは…
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