第27話 我が名はマイン・改・天・ファイナル!!

「ガハッ——」


激昂した雪の拳がめり込み、博士とやらは大きく吹き飛び血を吐くような声を上げる。


「勝った!諸悪の根源!討ち取ったりィィィ!」


そんなもはや死にそうな博士を見ずに、拳を天に掲げる雪。


「いや、君たちは誰だよ!」


思ったより平気そうな博士は怒号を上げながら立ち上がった。


ふうむ…


見た目は、16くらいの少女…ヘッドホンようなものに水色のパーカーを着こなしている。


淡い水色の髪に青メッシュ。かなり童顔でクリクリした紫紺の目はなかなかに破壊力が高い。


ただ、可愛いというだけで許す雪ではなく…


「テメェが管理しきれなかったキメラどもが森にまで流れ込んできてんだ!ついでに、お前のところの生首の猫がうちに居着いたんだ!つきまして、損害賠償と迷惑料を請求する!」


「もちろん金で許すわけではないけどな!」と、雪の悪どい心の声が聞こえてきた気がする。


実際、怒りだした雪は可愛い女の子(俺の女装)を用意しても、構わず殴りかかったし、イケメン(俺の必死のおしゃれ)を用意してもぶん殴られたし、金(偽札)を出しても容赦なくぶん殴られたのだ。


多分この博士は、《蜂の巣地獄・妹式》を味合わされるのだろう…かわいそうに…


「なんだその一見何されるかわからない地獄は…」


「いいいいいいやぁ、わ、悪かったよ…あの時はちょっとイライラしていて…」


「その理由も自分のプリンがなくなっていて、しかもそのプリンも多忙期に無意識で食べていたというものですけどね…」


「やっぱ殺すわ。オメェよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」


おい雪。頭にヤのつく職業みたいになってきてるぞ…


「クククククラウス!?お前裏切るのか!?」 


「私もついでにぶん殴るって言われたんですよ…?ちょっと気を紛らわしておかないと…」


さすが汚職生徒会長。平気で人を売ることに躊躇いがない。


『まぁまぁ、雪。ちょっと落ち着け。俺がちょっと説得するから…』


「うるせぇ!あいつはぶん殴らないとダメだ!」


          ♣︎


数分後…


「と、いうわけでまずはお互いに自己紹介といこうか」


なんとか場をまとめ上げた俺は、部屋の椅子を占領し、言った。


ちなみにその過程は、怒れる雪をどのような好条件で宥めるか、慌てふためくクラウス・博士さんを聖母のような、俺でも引くくらい猫撫で声で宥めかした。


ちなみに、その際にあまりの豹変ように、2人とも若干引いていたのは、俺が傷つくので記さないことにする。


「俺は、ユウキ・イア。この道は半年にも満たないベテラン冒険者!好みの女性は割とおっぱいが大きい妹みたいな子が好きです。最近は貧乳好きな作者と全面戦争を仕掛けようと思ってます!よければ結婚してください」


『自己紹介で分かるロクでもないやつ…』


俺の怒涛の自己紹介に、その博士はめちゃくちゃ引いている。それはもう、バケモンに出会ったみたい。


「ボクは… マイン・改・天・ファイナル…キメラの研究を専門としている別名は研究費用喰らい。あと、ボクは男の子しか興味ありません。ごめんなさい!」


うん…?


………………………………………………


「「『なんだその時代が進みすぎて色々つけすぎた必殺技みたいな名前は!?』」」


ここで大誤算。俺より自己紹介の癖が強い…


くっ…負けたぜ…これは《自己紹介グランプリ優勝》の称号を譲らないといけねぇ…


「というわけだ…雪…仲良くできそうか?」


『これを見てどう仲良くできると…?』


自己紹介で分かるお互いのろくでなし臭。


「ていうか…百合学院って聞いてたのに、ちゃんとまともな性癖の奴もいるんだな…」


「ちょっとイアくん?それは百合がまともな性癖ではないと言いたいわけかい?それは聞き捨てならないな…そもそも、巨乳好きというのも許容できないよ?」


俺がボソッと呟いた一言にクラウスさんは俺の肩を叩きながら威圧的に発した。


お?戦争か?このやろう。言っておくが俺は論争なら誰にも負けねぇぞ?物理対決では雪にはボロ負けするからなんないけど…


俺とクラウスがバチバチと火花を散らしていると、途端にケースが割れる音が響いた。


「なっ——」


その姿を表したのは、でかいのっぺりとした、どこかで見たことのあるキメラ。


「研究室で喧嘩はやめてくれ」


え?やばい…完全にネタキャラだと思ってたマイン・改・天・ファイナル(笑)さんがなんか強そうなオーラを発しているのですが…


         ♣︎


ちょっと落ち着いて…


「さて、とりあえず、自己紹介も終わったし、質問に答えるよ。何か質問はある?」


「なんで博士…いや、マイン・改・天・ファイナル(笑)さんは百合じゃないんですか?」


なんだこの質問…


百合学院の生徒会長たるもの…生徒内全員百合化政策でも企んでいるのか、やたらと「無」な表情で問い詰める。


「…いや、だって…百合もクソも…だってボク、男だし…」


……………………………………………………


え?


「「『ええええええっ!?』」」


































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