ゆめにっき

谷 重頼

優雅な休日

人生で一番初めに取得する資格だと言っても過言ではない普通自動車運転免許。

俺はほかほかと湯気が出るくらいに取りたてのそれを、友人から借りた、軽自動車とバイクの狭間の謎の乗り物を運転とばして満喫していた。


昨日今日の休日での遠足にと借りていたこいつを返しに、友人の実家まで行かなくてはいけない。

なんでも明日必要なのだそうだ。

今日も遠くまで乗り回すつもりでいたが、まぁいい。周辺になにか面白いものがあれば、それで今日を過ごそうと画策していた。


いやはや、初めて運転するいて楽しいものだ。

この緊張の混じった感は、焼きが恋しくなってくる季節じゃなくてもいのだ。と違ってな。


そんなくだらない(加えて傍点が多すぎる)ことを考えていたら事故にでも遭うのではと、ギャグの寒さも相まって身震いした。

そんな心配も、高速道路の疾走感が掻き消し、呆気なく目的地についてしまった。いや、無事に着いた。人の車だ、いい加減にしろ。


同時に到着した乗用車の運転席から降りた友人に声をかけて、付近のカフェに向かう。

この店には何度か来ていて、女将さんとは顔馴染みだ。

頼んだナポリタンとアイスコーヒーに舌鼓を打っていると、何やら疲れた様子の若い女性が入店した。

今日という気持ちの良い休日に上機嫌だった俺は、気を利かせてコーヒーを奢った。

軽く談笑して、その女性が楽しそうに帰っていった。


それを見ていた女将さん。流石だねぇと伝票のナポリタンを二本の線で消した。

俺は代わりに二杯目のコーヒーを頼み、今度は女将さんと話して時間を過ごした。

これだから常連ってのはやめられない…!


暫くして店を出て、辺りを彷徨うろついてみる。

そしたら近くに新しいお店がオープンしていた。教えてくれた声出しの女の子、やるじゃあないか。


そのの呼びかけと、目に留まった不思議の国のアリスのクッキー缶に免じて入店することにした。

時間はたっぷりあるのでね。


沢山のサイズがあったため、客が俺だけの狭い店内でゆっくり悩んでいると、後から押し寄せたお客さんに押し分けられながら会計を抜かされていく。


ひと通り悩んでから列に加わりレジを待っていると、自分から見て右側の、入り口から見て奥の壁が、小さめのアニマルショップと気付いた。

なんじゃここは。ハムスターから小鳥まで、間に何があるかは把握しきってないが沢山の小動物と触れ合えるようだ。


身体がビクッとして不意に起きる。



現実世界で午前9時ぴったり。

音速で用意してやっとバイトに間に合う時間だった。

あぁ、急いで支度しなければ!

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