第20話 文房具は概念である
ここはドワーフの森の中、族長に連れられて私たちは、これまた煙突のある工房に入っていくのだった。
「べラゲンとマヌクはいるかい?」
奥から声がする。
「ちょっと待ってくれ、今行くから、って族長じゃないですかい。今日はまたどうしたんでさ。」筋骨隆々の小さなおじさんが出てきた。
「おおベラゲン。今日は客人をつれて来た。なんだかおもしろい事ができそうじゃぞ?」
「また、そんなこと言って、どうせ他では断られるような面倒くさいことを持って来たんじゃないですか族長~。」ちょっとマッチョ分が足りない、お腹が出た小さいおじさん、こちらがマヌクさんだろうか?
「ほほッ。まぁそういうまいて。ヌシらも知らない道具を作るのは楽しいじゃろうて。嫌なら他に持っていくがな。」
「族長も人が悪い。」マヌクさんの顔はにかっと黄色い大きな歯が笑っている。
なんだかこの三人が話しているところを見ると、ハイホーハイホーハイホーと聞こえて来そうだ。
「ところで族長、その道具ってなんなんですかい?」ベラゲンさんがなぜかマッスルポーズを取りながらにじり出てきた。
「それはこちらのお嬢さんが説明してくれるわい。のう?話してやってはくれんか。」
「は はひ!!はじめまして、私はサキュバスのイドズーコといいます。今回作っていただきたいのは文房具の三角定規と分度計です。」
それから分度器と三角定規の説明をした。
・長さを測ったり、角度を測ったりするものであること。
・三角定規を使って線を引いたり、分度器を使って円を書いたりすることができること。
・硬い透明なプラスチックであること。
・安価であること。
を説明してみた。
「なんでまた、そんなもんが必要なんだねーちゃん。」ベラゲンさんはこれまた違うマッスルポーズを取りながら質問をしてきた。
「それはですね。」言えない、とてもじゃないと言えない。まさか本来の使い方の斜め前どころか、下手したら文房具を冒涜するような使い方のために作るなんて。
「あぁ?その文房具を使ってだな、あんなことやこんなことを想像する変なヤツラからマナを吸い上げるために使うんだよ。気持ち悪いだろ?」カラカラちゃん、もう嫌。
「なんだよそりゃ、道具作ってなんでまた興奮するんかいの?」
「なんでもオタークという人間でも稀な存在がその道具を欲しているだって。」もしこれからこちらの世界に転生される人たちごめんなさい。もしかしたらオタクって口走ったら、全員文房具オタクで文房具BL使いって決めつけられるかもです。
しかし、なぜにマヌクさんとベラゲンさんはがっちり手をつなぎながら話しているのだろうか・・・・ ハッ! 見てはいけないところを見てしまったような気がする。これ以上詮索すると消されるな私。
「でもまぁ、この分度器ってやつは作るのが面倒だぜ。どもどもドワーフは手先が器用だが、繊細さはそうでもないからな。この1ミリメートルって単位刻みで目盛りが入っているなんて狂気の沙汰だぜ。しかも真円なんてもんはどうやって作るんか見当もつかないぜ。」マヌクさんのおっしゃる通り。
どうやって円を作るか~・・・・無理。
「簡単ですよ。釘に糸を付けて線を引けばいいんですよ。」??ウィルさんあんたスゲーよ。
「三十度も四十五度の三角形も。1対2対ルート3 1対1対ルート2 の辺の比を使えばいいんですよ」ウィルさん只ものじゃね~ というか中学校でおぼろげに習ったルートって今言わなかったっけ?
「ウィルさん、どうしてルートって知ってるんですか?」
「どうもこうも。ルートって悪魔の数字だって知らなかったのか?このビッ☆が!!そんなのも知らないでよく悪魔やっていけるな。」
「そうだったんですか?」
「そうだぞ。昔、ある人間が気づきそうだったんで、その宗教団体にサキュバスが送り込まれて団体壊滅させられたんだぞ。」さすがウィルさん博識。というか、その人間はなぜに気づいたんだか、魔界に狙われるなんてスゲーな。
「すると最後の問題は、透明だな。水晶をその薄さに研磨すると割れるしな、石油ってもんははじめて知ったが、燃える水からそんな透明のものができるんだな。魔法かよ」マヌクさんは腹を叩きながら言った。
「石油を精製するとできるんですが、この世界にはないですよね。」そもそも文房具がどうやって作られたかなんて考えたこともなかった。こんなことなら小学校の社会科見学の工場訪問は全て文房具の工場にしておくべきだった!!
「透明で硬いもんならいっぱいあるじゃんズーコは頭が硬いな。」カラカラちゃんのドヤ顔が近づいてくる。近い近い。
「魔界の海にいるクラーケンの切り身を魔法で固めればいいじゃん!」その手があったか。というかそんなの元人間の私に思いつくわけねーだろがい!
「でクラーケンはどこで手に入るの?。」当然の質問をする私。
「さっき魔界の海にいるっていったじゃない?ズーコ。」私はカラカラちゃんを見つめた。
「いるんですよね。」
「そうだよね。」
「採るんですか?」
「そうさ、命(タマ)取りにこれからいくんだよ。ガチの勝負さ!!。」
ひえ~~
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ぶりーき
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