第13話 私の平和を乱すもの
「なんだ!これは??」
信者の何人からか不思議な本を渡された。私は、この村の異端審問官として中央から派遣されていることになっている。名はクロラという天使だ。
天使?気は確かかと思うかもしれないが私は天使だ。
人間達がまだ未熟なために、天界から教会へ派遣され、そして人間の正しい成長のために、私のような天使が各地域に派遣されているのである。
話を戻そう、なんでもこの本は、朝目覚めると近くにあったのだそうだ。夢の中で渡されたという者もいるし、気が付いたらという者もいた。怪しい。
どうせ低能な下級悪魔のいたずらだろう。本当に、魔族ってやつらは暇なのか、手を変え品を変え人間にちょっかいを出して堕落されようとする厄介な連中だ。
この枕元に本がある現象は報告せねば、そのためにも私はこの本を読まなければならない。
今回私の元に集まったのは2種類の本だ。
1冊目は「兄貴と俺の男道」という本だ。あらすじはこうだ。どうも二人は幼くして親に捨てられ、ストリートチルドレンとして生き抜くことになる。
「あぁなんてことだ、この二人の迷える子羊達に神のご加護があらんことを。」
二人は生き抜くために、盗み、詐欺、強盗と罪を重ねていき、マフィアにスカウトされる。いつも兄貴分ウルカと慕っていた弟分イチカは、兄貴分ウルカを崇拝していた。その崇拝がいつしか愛に変わり、そして兄貴分ウルカも死線をいくつも一緒に超えてきた弟分イチカに対し、一線を越えた行為をしてしまう。
「けしからん。そもそも情欲は罪である。子供を作る行為のみが認められているのであって、子供を作らない、ただの情欲などはあってはならないことだ。」
兄貴分ウルカとの行為もエスカレートしていくうちに、兄貴分ウルカは仕事でミスをしてしまい組織から命を狙われる。ふむふむ。
追われるウルカ、そこにヒットマンとして目の前に現れたのは弟分イチカだった・・・
殺すはずのウルカと再び体を重ねるイチカ。
それを監視していた組織の人間から襲われウルカを庇ったイチカは絶命する。
ウルカの腕の中で息を引き取るイチカ。
「いい話だ・・・おっといかん、こんな男色など聖書を読めば罪であることは明白。異常性欲の本であると記述しておこう。」(しかし、なんでこんな本を悪魔どもは人間に配ろうとしているのだろう?何かの暗示なのか?)
2冊目は領主が女になって、騎士との愛欲に溺れるという「世界征服しようとしたら部下の騎士に征服された件」という本だ。
そもそも題名からけしからん。なんて不潔な。
領主はそもそも男の領主で、戦争の天才。天下布武?の名のもとにヤポンという地域をまとめ上げようとしていた。その領主の身の回りの世話をする騎士見習いランマ―がいて、その世話は夜の世話もノブーから乱暴にされていたと書いてあった、実にけしからん。しかしある日外国の薬を飲んだ領主ノブーはみるみるうちに体が女性になり、その事実を隠さないと他国から侵略を受けてしまうため、身を隠すことに。護衛のランマ―がエスコートして、女としての喜びをノブーは得てしまう。しかし、逃げ込んだホンノージーという寺院で、今までのノブーの行いを正すべくアケチーという騎士が焼き討ちを行い、ランマ―はノブーを守りながら消えてしまうという話だった。
「実に美しい愛ではないか・・・おっといかん、そもそも男色は罪で、しかも力づくで年齢の若い男を襲い、しかも神に与えられた男性という性を女性に変えてしまうなど、本の中であっても不敬である。これは神への冒涜であると書いて・・・ここまで書くほどではないな。情欲の罪深き本であると報告をしておこう。」
あれから何日もこの2冊の本を読んでしまった。これは仕事であって、何度も読んでいるのは確認しているからだ。どうもこの本はもう1冊別の本があるらしい。報告のために絶対に手に入れなければ。別に興味とかそういうものではなくて、これは教会への報告と人間達を正しく導くために必要なことで、そう調査である。調査に漏れがあってはならない。きっちり調査しなければ正しいことはできない。これは本腰を入れて探さねばなるまい。
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ぶりーき
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