第23話
オリバーこと、オリビエはクラーク家の応接間に呼ばれた。
オリバーとクリスティーナの二人は、マリオンから全ての真実を打ち明けられた。
再度謝罪を受けたクリスティーナはマリオンと円満に離縁することになった。
オリバーは、名をオリビエ・クラークと改めた。
そして、ずっと『嫡男』として生きなくてはならなかった姉のかわりに当代の伯爵となり、長年の思いの末にクリスティーナを妻として改めて娶ることとなった。
マリオンはオリビエに引き継ぎが済めば、まだ『マリー』として生きるかどうかは分からないが、自分は表舞台から去る事を決めていると二人に伝えた。
◇
三人での話が終わりを迎えたあたりで、クリスティーナがドアの方に向かって声を発した。
「オスカー様、そろそろ出ていらして」
オスカーがおずおずと部屋に入ってくる。
それを見たマリオンは狼狽した。
「!・・・いつからそこに?」
「初めからだ。今日ここに来るようにと彼女に呼ばれて・・・訳のわからない指示を受けて、正直、困惑していたんだが、そういう事だったとは・・・」
オスカーがちらりとクリスティーナに目をやると、彼女は悪戯っぽい表情で小さく笑った。
「オスカー、お前のこともずっと騙していてすまなかった。さっき聞いていたと思うが、私は弟に爵位を譲って領地に隠居しようと思っている」
「勝手に決めずに、どうか俺の話も聞いてくれ。お前は俺のことを何とも思っていないだろうが・・・、俺はずっとお前のことが好きだったんだ、マリオン」
「・・・!」
マリオンは自分の顔が熱を持つのを感じた。
「だが、お前が男だと思い込んでいて、自分の気持ちを打ち明けて、お前に気持ち悪いと一蹴されるかも知れないと思うと恐ろしくて言えなかった・・・。領地に引き籠るだなんて言わずに、頼むから俺の妻になってくれ!!」
オスカーは持参した深紅の薔薇の花束をマリオンに差し出し跪いた。
彼は心の中で、この機会を自分に与えてくれたクリスティーナに感謝した。
「・・・オスカー。気持ちは嬉しいが、男のふりを続けてきて、どちらにもなり切れない醜い私は、お前のように完璧な男には相応しくないだろう・・・」
マリオンは悲しげに言った。
「そんなつまらない事を言うな!そういうお前だからこそ、俺は愛しいと感じたんだ。さっきの話を聞いて、婚姻出来るかもしれないという意味で、お前が女で良かったとは思ったが、本当は男とか女とかそんな事はどうでも良い。他の誰でも無いお前でなくては駄目なんだ」
「本当に?」
「俺はもう自分の気持ちを偽らない。今のままのお前で良いし、変わっても変わらなくてもいい。ただ俺の傍に居てくれ」
「オスカー・・・」
マリオンは花束を受け取って、泣きそうな顔で微笑んだ。
◇
かくして、その存在すら定かではなく、長らく病弱で寝たきりだったという、『マリー・クラーク』は奇跡的な回復を果たし、オスカー・マクレーンの妻となった。
そして、その兄である『マリオン・クラーク』は任務中に負った怪我の後遺症で、騎士の職を辞すことになったものの、年に数回後進のために講習を開いているという。
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