第3話


 マリオンと共に過ごす時間はクリスティーナにとって何よりも楽しく、最高の時間だった。


 忙しいはずの彼は、クリスティーナが望めばいつでも彼女のために、嫌な顔ひとつせずその貴重な時間を割いてくれた。


 彼と一緒にいる時のクリスティーナは、まるで物語に出てくる、騎士に傅かれる『お姫様』にでもなったような特別な気分になれたのだった。


 クリスティーナはますます、マリオンに惹かれた。



 ◇



 しばらくして、マリオンとクリスティーナは、婚礼を挙げた。


 それは、贅を尽くした煌びやかな式だった。


 彼はクリスティーナのために、何度も細やかな打ち合わせをして彼女の希望を取り入れつつも、彼女を最も美しく可憐に見せてくれるようなドレスや装飾品を、特別に仕立てて贈ってくれた。


 式に参加した友人たちは、口々に彼女の幸せを祝ってくれた。


 そろそろ式の後の宴が終わるという頃、マリオンの遠縁で同僚でもあるという侯爵のオスカー・マクレーンが二人の元にやってきて、祝いの言葉を述べた。


「マリオン、クリスティーナ嬢、結婚おめでとう!お前がなかなか結婚しないから、俺は心配していたんだ。素敵なお嬢さんが見つかって良かったな」


 オスカーはマリオンの縁者というだけあって、髪と瞳に共通の色を持っていた。両者とも端正な面持ちだという事も共通してはいたが、クリスティーナから見た二人の印象は随分異なっていた。


 マリオンが繊細な硝子細工のような現実的でない美しさを持っているとするならば、オスカーはまるで古代の彫像を思わせるような力強い男性的な美しさを持っていた。


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