追放から始まる英雄譚~心優しき者は追放されたことで真の力に目覚める~

22話シノブとホムラ

　その後、雑談をしていると……。

「ユ、ユウマ……？」

「ん？ ああ、ホムラか。どうした？ 変な顔して……」

　何故だか知らないが、驚愕にまみれた表情をしている。

　何というか……美人は、どんな顔だろうが美人なんだな。

「その破廉恥娘は……」

「むぅ……破廉恥じゃないですってば！」

「それは置いとくとして……仲間になったよ」

「そ、そんな……」

「えへへー、ユウマさんをゲットですねー」

「されてないから。ただの仲間だから」

「そうですわ！ ユウマはそんな尻軽じゃありませんわ！」

「なんか違くね？」

「いいんですよー。これから攻めていくのでー」

「なっ——女性からだなんて……！ 慎みを持ちなさい！」

「そんなの嫌ですっ！」

「いや、持ってくれると助かるのだが？」

「ほら！ ユウマは迷惑がってますわっ！」

「ユウマさんは照れ屋なだけですっ！」

「いや、違うから」

「むぅ〜」

「うむむ……」

　いかん、このままではラチがあかない。

　というか、何故言い争いをしている？

「えっと……そういやあの後ってどうなったんだ？」

「私は逃げましたよ〜というか、戦う理由もないですし」

「ホホホッ！ ワタクシの魔法に恐れをなしたわけですわねっ！」

「違いますよっ！ というか！なんなんですか！？ さては……嫉妬ですね？」

「なっ、ち、違いますわっ！」

「そうなのか？」

「ち、違うわ！ ライバルを心配しているだけですっ！ 色気にかまけることを！」

「そういうことか……安心しろ、俺は変わらん。お前が誇れるライバルでいよう」

　今のところ、俺はそれどころじゃないし。

「口ではなんとでもいえますわっ！」

「わかった、約束しよう。冒険者としてひとかどの人物になるまでは、女性にうつつを抜かさないと」

「そ、そうですか……それはそれで困りましたわ……」

「ん？ 何が困るんだ？」

「い、いえっ！ きょ、 今日のところは勘弁してあげますわっ！ これから定期的に見にきますからっ！」

　そう言い、ホムラは立ち去った。

「ユウマさんは……」

「ん？」

「いえ、私のアプローチの仕方は正しかったなぁと思いまして」

「団長は鈍感だからな。モテるのにもったいないぜ」

「はい？」

「どうしてですかね？ 団長ってカッコいいですけど……」

「よくわからないが……俺はモテた覚えなどないぞ？」

「むぅ……おかしいですねー」

「シノブ、団長はな……」

　アロイスが、何やら耳打ちをしている……なんだ？

「あぁーなるほど。高嶺の花ってやつですかー」

「ああ、そうらしい」

「だ、団長は綺麗でカッコいいです！」

「イージス……お前はいい奴だな」

　ただ……綺麗はなくても良かったのだが？

　その後、解散をしたのだが……。

「おい？ 何故ついてくる？」

「え？ ダメですか？」

「いや、ダメというか……俺は家に帰るし」

「あの怪物がいる場所ですかー」

「怪物って……化け物よりはマシか。否定もできないし」

「むむむ……二人きりにはなれませんし、無理に迫るのも逆効果ですし……」

「というか、どこに住んでいるんだ？」

「え？ないですよ？」

「はい？ ……どういう意味だ？ 宿暮らしという意味か？」

「いえ、どこにも泊まっていませんよー。適当な木の上で寝てます」

「……どういうことだ？」

「あっ——すみません、言い忘れてましたねー。私の種族は、あまり睡眠を必要としないんてすよー。1日に二、三時間くらい寝れば良い方ですかね。二、三日なら寝なくても問題もないですし」

「……すごいな」

　やはり、見た目は人族に近いとはいえ……違う種族なのだな。

「元々、護衛や密偵の類の子孫なので。だから、そういう風に身体が出来たんだと思いますねー」

「確かに、その性質だけで優秀な護衛や密偵になるな」

　寝ずの番とか、情報を得たら寝ずに届けるとか。

「えへへー、なので任せてくださいっ！ 基本的に私に任せて、みんなは寝てていいんでー」

「それはダメだ」

「えっ？」

「パーティーを組んだなら対等でなくてはダメだし、誰かに任せきりというのは良くない。もちろん、シノブに任せきりになる場面も来るかもしれない。しかし、そう決めつけるは良くない。何より、俺たちだって慣れておかないと。シノブがいなかった時はどうする？」

「あぁーなるほど……そういうことも考えなくちゃいけないんですねー」

「まあ、一応団長らしいからな。アロイスがやってくれりゃいいのに」

　俺は、どう考えても団長ってガラじゃないだろうに。

　世間知らずだし、あまり人とも関わってこなかったし。

　ましてや、女性の扱いなんかまるでわからん。

「私は向いていると思いますよー？」

「……そうか？」

「ええ、お世辞ではなく」

「どの辺か聞いてもいいか？」

「うーんとですねー……まず、偏見がないことですかね」

「それは自分が嫌だったからだな。兄貴や親父には、俺が家を継ぐと思われていたし。自分がされたら嫌なことはしないだろ」

「そんなことありませんよ？ 自分を棚に上げて、そういうことする人多いですからー」

「そうなのか……理解できん」

「あとは優しいですし、私の話もきちんと聞いてくれましたし。かといって流されるわけでもなく、自分の意思も持ってて……」

「わ、わかった！ もういい！」

　恥ずかしさで身体が熱くなってきた……！

「あれー？ 照れてますかー？」

「慣れてないんだよ……でも、ありがとな」

　母上やエリカはそう言ってくれてたが、身内贔屓だと思っていたし。

　なるべく親父と兄貴の機嫌を損ねないように、最低限の人としか関わり持たなかったし。

「えへへー、どういたしまして」

「それで……なんだっけ？」

「住むところの話をしてましたよー」

「ああ、そうだったな。お金は俺が払うから、宿を取るといい。いくら強くて寝ないと言っても、この人族の国では危険すぎる。というか、女の子なんだから気をつけろ」

　趣味の悪い貴族にバレたら……何かしらしてくる可能性はある。

「きゅん……た、大変ですっ！」

「はい？」

「責任とってくださいね〜！」

「おい！？」

　いきなり走り去ってしまった。

　いや、お金を渡していないんだが？