17話新たな仲間そして……謎の女現る

 あれから、また一週間が過ぎた。


 イージスは、一皮むけたからだろう。


 ゴブリンやコボルト程度なら、問題なく倒せるようになってきた。


 だが、まだまだポテンシャルはこんなものではないと俺は思っている。


 なので、引き続き稽古を続けている。


 ただし、今度は見られることにも慣れるために、訓練場で行なっている。


 なので……こうなることは予想済みだ。



「おいおい! 役立たずが稽古してるぜ!?」


「おい、一緒にいるのって……スーパールーキーじゃねえか?」


 おい、やめろ。

 なんだ、その恥ずかしいネーミングは……。


「いや、俺が聞いたのは……バーサクヒーラーだったぜ?」


「ああ、あの戦争か。回復魔法をかけて、そのあと自らが先陣を切ったとか……」


 今度はバーサクヒーラー……もう良いや、好きにしてくれ。


「み、見られてる……」


「イージス、気にするな。いつも通りにやればいい」


「は、はい!」



 ……が、そう上手くはいかない。


「あ、あれ? 力が出ない……」


「ふぅ……まあ、仕方ないか」


 やはり、緊張しいなのは治らないか……。

 これも、少しずつ慣れていくしかないか。


「はははっ! 相変わらず役立たずだぜ!」


「訓練してるって聞いたが……無駄だったな!」


「なあ! 期待のルーキーさんよ! そんなのは放っておいた方がいいぜ!」


「時間の無駄だぜ!」


「や、やっぱり、オイラなんかといたら……」


「ウルセェェ——!!」


 気迫を込めて叫ぶと、辺りが静まりかえる。


「こいつの名はイージス! 俺の大事な仲間だ! 次、何か言ったら——俺への侮辱とみなす! 俺が相手になるからかかってこい!」


「お、おい……」


「い、行こうぜ……」


「ああ、そのうち後悔するだろうよ」


 文句を言っていた連中は去っていく。


「ユウマさん……」


「イージス、気にするな。あんなのは一握りの人間だ。きっと、他にもお前の良さをわかってくれる奴もいる。そして、ああいう人を馬鹿にして自分を保つような連中のことなど気にしなくて良い」


「ど、どうして……オイラにそこまで……?」


「そんなの、お前が気に入ったからに決まっている」


「え?……ど、どの辺りが……? 今のところ、良いところが無いような」


「お前は弱音を吐いても、一度も悪口を言わなかった。それに根性もある。散々な目にあってきたのに、それでも冒険者を続けてきた」


「ユウマさん……」


「それに、俺は仲間を馬鹿にされるのは我慢ならない」


「さっきも仲間って……え?オイラとユウマさんが?」


「なんだよ……俺はとっくに仲間だと思っているんだが?」


「オ、オイラが……? いいんですか?」


「良いも何も無い。では、改めて……イージス——俺の仲間になってくれるか?」


 俺はイージスに向かい、手を差し出す。


「あっ——は、はい……! ありがどぅございまず!!」


 泣きながらだが、しっかりと握りかえしてくれた。


 これで、パーティーに新たな仲間が加わった。


「団長、やってきたぜ」


「おう、アロイス」


「えっと……?」


「パーティー申請をしておいたからな。これで、正式にパーティーということだ」


「全く……承諾も得ずにやるとか、強引だぜ」


「結果的に問題ない」


「え? オイラが?」


「ああ、今日からよろしくな。ようこそ、白き風へ。イージス、お前の居場所はここだ」


「覚悟しろよ? 団長と付き合うのは大変だからな?」


「ハハ……アロイスさんも、良いんですか……?」


「もちろん、まだまだ足りないだらけだ。だが、団長が言うんじゃ仕方あるまい」


「そうですよね……ならば、アロイスさんにも認めてもらえるように頑張ります!」


「ほう? 悪くない目だ。いいぜ、見といてやる。言っておくが、俺は団長みたいに甘くはないからな?」


「はいっ! ご指導よろしくお願いします!」


「おうよ!」


「まあ、ほどほどにな」


「あ、あの!」


「うん?」


「きっとユウマさんは嫌がると思うので、一度だけ言わせてください! オイラを鍛えてくれてありがとうございます! そして、仲間に入れてくれてありがとうございます! これから頑張りますので、よろしくお願いします——!」


「へっ、団長をわかってるじゃねえか」


「ああ、受け取ろう。そして、こちらこそよろしくな」


 すると……拍手の音が聞こえる——真後ろから。


「いや〜、良いものを見ましたねー」


「なっ——!?」


「こいつ!? いつの間に!?」


「だ、誰ですか!?」


 いつの間か、俺の真後ろに人がいる。

 ……この俺が、気配を感じなかった?


「ごめんなさい、別に驚かす気はなくてですねー」


 振り返ってみると……黒装束を纏った女性がいた。


 一体——こいつは何者だ?

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