第694話 虎徹さんの勝負の行方は!?

 コテツ商店で買い物をしまくって魔石がごっそり減ったのが気になり、『俺も狩りに行った方がいいんじゃないか?』と何度も焦燥感に襲われはしたものの、そこはじっと我慢して教科書作りに集中した。


 そして苦節30年・・・とまではいかないが、とうとう全ての教科書が完成した!


 この世界の学校で教える授業は、[国語][算数][理科][社会]みたいな細かい感じではなく、[剣術][魔法][学問][ゴーレム]といったラインナップで、向こうの世界よりも脳筋仕様なので、本当に苦労したのは[学問]くらいかな?


 すなわち結構大雑把な内容の教科書なので、もちろん教科書に沿って授業を進めることにはなるけど、先生のアドリブがかなり重要なのだ。


 とにかくそんな感じで授業をやってみて、足りないと思ったら項目を追加していこうと思っているわけですよ。


 まあ校長の仕事は多岐に渡るだろうから、教科書の仕上げは先生方に任せた方がいいのかもしれん。


 全部俺一人でやる必要は無いのだ!

 むしろ、もっと人を使うことを覚えんとな・・・。



 ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ

 フォーー フォーー フォーー フォーー フォーー フォーー



「うおっ!」



 そういや迎えを呼ぶ時に使ってくれと、4階層に通信機を置いてきたんだった。

 便利ではあるんだが、マジでうるっせえな!



 ピピピッ ピピピッ ピピピ

 フォーー フォーー フォー


 ポチッ


「うるさいですぞー」


『狩りが終わったよ!迎えに来てーーーーーーーーーー!』


「了解。今行く」



 というわけで、4階層まで転移して三人を回収して戻って来た。



「魔石はいっぱい稼げたか?」

「大漁だよ!」

「最後の方は数えてないけど、100個は超えてるんじゃないかしら?」

「今までの苦行は何だったんだ?ってくらい効率の良い階層だな~」

「借金を半分返せるよ!」

「いや、今日もコテツ商店がオープンするから、どうせ買い物するのに使うだろ?返すのは明日以降でいいぞ」

「あっ、そっか!」

「むしろ、また魔石を100個ほど借りるかも・・・」

「俺の部屋はもう十分なんだが、交通安全協会の事務所に色々置きたいんだよな」

「それだーーーーー!あっちにもテーブルとソファーが欲しいかも!」



 なるほど!


 親父には道路関係の仕事を任せているんだけど、街の中に事務所を作ったとか言ってたもんな。


 グミも親父の秘書みたいな仕事をしているらしいから、その建物内を充実させるのは結構重要かもだ。



「いいな~、職場が近くて。私なんて丹波の国に戻らなきゃいけないのよ?正直、かなり憂鬱だわ・・・」

「出世しすぎちゃったね~」

「丹波の国か~。京の都からならそれほど離れていないと思ったが、気軽に行き来できる距離でもないわな」


 なんせ日本の10倍の面積だからなあ~。近そうに見えて意外と遠い気がする。


 ・・・ん?ちょっと待てよ?



「いや、もうすぐ気軽に行き来できるようになる」



 三人がこっちを見た。



「皆さん忘れていませんか?何の為に俺が毎日修行しているのかを!!」



 それを聞いた三人の目が大きく開いた。



「マジックバッグ!!」



 ズコッ!


 グミは分かってなかったようだ。

 いやそれも当たってはいるんだけど、一番の目標はこのダンジョンへの転移だ。



「そうか!転移魔法を使えば、一瞬で国を行き来できるようになるのか!」

「あーーーーーーーーーーっ!そっちだった!!」



 チェリンの方を見ると、彼女は目をうるうるさせていた。


 タッ


 そして強く抱きしめられた。



「うええ、うえええええええええん!」

「本当に運が良かったな~。ミスフィート領が広がりきったタイミングで転移魔法が使えるようになるとは!丹波どころか尾張ですら近所になっちまったぞ!」

「これからは、いつでも好きな時に帰って来られるのよね!?」

「通信機で一声掛けてもらえれば、すぐにでも迎えに行くぞ!ただあの通信機って死ぬほどうるせーから、頻繁に呼び出しされると城の皆がぶちキレるかもしれん」

「ぷッ!くくっ、あーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」


「「うわははははははははははははははははははは!!」」



 そういや尾張まで転移可能ならば、ミスフィートさん達をすぐ連れ帰ることが出来るのか。いや、もう機関車で移動中かな?


 まあどっちにしろ、今のレベルじゃ尾張まで飛ぶのは厳しいか・・・。



「ところで何時だ?」


 ん?


「えーと、17時過ぎだな」

「そろそろコテツ商店がオープンしてる頃じゃないか?」

「宇宙刑事になってるかも!!」

「そういえば丹波のお城にも家具が必要だわ!多めに魔石を借りていいかしら?」

「別に構わんぞ。その分返すのが大変になるけど、宇宙刑事の衣装が出たらコテツ商店も閉店しちまうしな」

「出てないことを祈るわ!」

「いや、そこは応援してあげようよ!」

「アハハハハハハハハハ!!」



 大広場を通り過ぎ、ガチャ部屋へと向かう。



「あーーーっ!また部屋がアイテムで埋まってるよ!!」

「これは品揃えに期待できそうね!」

「中に入らんことには何とも言えんが、昨日の光景と似たような感じだな」

「すごく嫌な予感がしますぞ・・・」



 商品を壊さないよう気を付けながら、昨日のようにアイテムの海を泳いで行く。

 しかしこのアイテムの量を見た感じ・・・、いや、まだだ!まだわからんよ!



 ―――――そして俺達は、ガチャの前で朽ち果てている虎徹さんを発見した。



 

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