第691話 水竜とご対面
俺達一行は4階層目指してダンジョンを進んでいるのだが、宇宙刑事の体術の特訓を兼ねて、道中はほとんど親父一人で戦っていた。
バキッ! ドガッ!
「ふ~~~!何とか撃破したが、ちょっと梃子摺ったな」
確かに最初の頃はサクサク進んでいたのに、3階層から魔物を倒すのに時間が掛かるようになってきたかもしれない。
「とっとと4階層まで進みたいし、そろそろ剣を使った方がいいかもな」
「うむ。体術の特訓は別に今しなくてもいいか」
ヴォン
「あっ!ビームソードだ!」
「でも光ってない状態ね」
「いや・・・光らせると重くなるし、必殺技を使わなくてもエネルギーを消費してしまうから、この状態で戦うことにする」
「だったら刀の方が良さそうな気もするが、また行方不明なのか?」
「蒸着した時にどっかいっちまった」
「エーーーーー!刀を身に付けたまま変身しない方がいいね~」
「床に置いといて、変身してから拾えばいいんじゃない?」
「次からそうするか~」
とまあ、今回は光ってないビームソードで戦闘することになったが、重そうではあるけど問題無く魔物を倒していき、4階層へと到着した。
次から転移で飛んで来ることが出来るように、景色をしっかり記憶する。
「人魚はドラゴン部屋を越えた先にいる。んで、ドラゴン部屋までは弱い海産物の魔物しか出ないから、グミとチェリンの二人に任せよう」
「ドラゴンは俺が倒すのか?」
「もちろん親父の出番だ。でも防御力がそこそこあるから、ビームソードを光らせた方がいいかもしれん」
「なるほど。たぶん一戦くらいならエネルギーも大丈夫だ」
「カニだ!!」
タタタタタタタタッ ザクッ!
「カニ召し捕ったりーーーーーーーーーー!」
召し捕るってのは犯人を捕まえた時なんかに使う言葉なんだけど、なぜかカニを成敗するとそう叫んでしまうんだよな~。
「カニよわっ!!」
「ホタテやイカなんかも全て弱いぞ。そのくせ経験値がいっぱい貰えるのだ」
「ボーナス階層じゃねえか!しかもメチャクチャ美味かったしな!」
「カニーーーーー!!」
グミが大きなカニを両手で持ち上げて走って来た。
「わざわざ持って来なくても、そっちに行くとこだったのに」
「このカニどうするの?」
「今日手に入れた海産物は全部持ち帰るけど、魔石はその場で取り出した方がいい。誰が倒したモノなのか分からなくなってしまうからな。それに海産物が溜まってから取り出すのって結構面倒なんだよ」
「了解!」
グミが魔石を取り出したので、カニはマジックバッグに収納した。
「小烏丸がいればお持ち帰り出来るけど、私達だけの時は泣く泣く放置するしかないわね・・・」
「早く猫のマジックバッグ作って!」
「ぐぬぬぬ、もう少しだけ待ってくれ。時空魔法のレベルが6になったら挑戦してみるつもりだ」
「まあこればかりはしょうがあるまい。俺達もいい加減城に帰らなければならんし、海産物なんかをを大量に持ち帰るのは次回のお楽しみだな!」
当然ながらグミとチェリンは無双状態で、海産物を大量にゲットしながらドラゴン部屋に到着した。
「相手は水竜だけど炎を吐くから、ドラゴンが大きく口を開いたら絶対に炎を回避してくれ。注意事項はそれくらいだ」
「炎の息か!俺の火の玉とは比べ物にならんくらい炎の範囲が広そうだな」
「親父のは人魂な」
「あれでも一応火の玉なんだぞ!!」
そんな会話をしながらドラゴン部屋に突入した。
「「ドラゴンだーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
『ギュアアアアアアアアアアアアア!!!!』
「向こう側が水没してるじゃねえか!ああ、水竜だったな・・・」
名前 :ウォータードラゴン
アリアの世界は洋風なのでこう表記されているが、猫ちゃんが日本風に作った世界の水竜と全く同じモノだ。
「親父、もたもたしてるとこっちに炎のブレスが飛んで来るんで、とっとと戦闘を開始してくれ!」
「くッ、分かった!」
タタタタタタタタッ
ガギーーーーーン!
そうして宇宙刑事とドラゴンによる大バトルが始まった。
正直、自分の刀で戦えば簡単に倒せたと思うんだけど、光ってないビームソードでは骨剣くらいの強さしかないようで、なかなか苦労した挙句、ビームソードを光らせることでようやく水竜を撃破した。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、勝ったぞーーーーーーーーーー!!」
「やったーーーーー!お義父さんメチャメチャ凄かった!」
「ド迫力だったわね!宇宙刑事の底力を見たわ!」
「おめでとう!デカい魔物と戦うのも、なかなか楽しかっただろ?」
皆で宇宙刑事の側まで歩いて行った。
「大バカ殿様の姿で戦った方が楽だったような気もするが、面白かったのは間違いないな!これはこれで良い経験になったかもしれん」
「そうそう!強敵とのバトルを楽しむのがこのダンジョンの正しい攻略法なんだ」
「嫌々戦うんじゃなくて、楽しんで自分を成長させるんだね!」
「隊長が喜びそうなダンジョンよね~」
「前に来た時、ミスフィートさんメチャメチャ楽しんでたぞ!」
そんな会話をしながらドラゴンを回収し、人魚ゾーン目指して先へ進んだ。
「あれ?なんか聞こえない?」
「誰かが歌ってる??」
「人魚だ」
「とうとう人魚とご対面か!!」
「さあ、ここからが長いぞ。やることはただ一つ!眠気を我慢するんだ。もし眠ってたらバシバシ叩き起こすからな」
「寝ないのは得意だよ!」
「私も寝つきは悪い方かも」
「小烏丸が耐えきったんだから、俺達も何とかなるだろ」
緊張しながら歌のする方へ進んで行くと、ようやく人魚の姿が見えた。
しかしまだちょっと距離があるので、ゆっくり近寄って行く。
ぐうぐう すや~
「全員眠っとるやんけーーーーー!!」
グミとチェリンを肩に担ぎ、宇宙刑事の足を持ってズルズルと後ろに引き摺って行き、三人のほっぺたを容赦なくビンタして叩き起こした。
「ハッ!?もしかして寝てた?」
「嘘!?ちょっと近寄り過ぎたのかしら?」
「クソッ!あんな一瞬で眠らされてしまうとは!」
「今度は少しずつ前に進み、少しでも眠気を感じたらそこで立ち止まってくれ。そこからは持久戦だぞ!」
「眠気を我慢するのってすごく難しいんだな・・・」
今にして思えば、俺ってよくあんな危険なのに一人で挑んだよな。
無茶しやがって・・・。
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