第671話 虎徹さんが迎えに来た

 グミがデラックスガチャの前に立った。

 これで3週目に突入だな。


 ダンジョン初日はおっかなびっくりの狩りになるから、それほど大量に魔石を集められなかったみたいなので、今日はこれでラストだ。



「そろそろ服が欲しいけど、可愛ければ何でもいいや!」



 魔石を投入してレバーを光らせると、今度は欲の無い祈りを捧げる。


 うん、それでいい。



 ガチャコン



「また音が軽い!」

「でも今の祈りは悪くなかったぞ」

「緑のカプセルが出た時も、今と同じ音なのよね?」

「音が軽かった時は青か緑の二択だ。緑は結構良い物が出たりするから面白いぞ」

「あっ、緑カプセルだよ!」


 グミがカプセルを開けた。


「えーと、【家具】って書いてある」


 なにっ!?


「ヤバイ、右手を上げてくれ!」

「ええええええええええ!?」

「ウソッ!大きいのが出るの!?」



 カプセルがポフッと変化し、グミの手の平にはテーブルが乗っていた。



「ビックリしたーーーーー!でもそんなに大きくなくて良かった!」



 グミがテーブルを床に降ろした。


 あまり高さのない座って使うテーブルで、大きさもそれほどじゃなかった。

 ピンクと白のデザインで、女の子が気に入りそうな可愛いテーブルだ。



「また可愛いのがキターーーーーーーーーーーーーーー!!」

「いいなーーーーー!グミ、三つとも大当たりじゃない!」

「ほほお、女の子が好みそうなデザインのテーブルだな。これは当たりだ」

「例えカプセルが青や緑だったとしても、ほとんど使える物が出て来るんだよ。『チョンマゲ』のように、殿しか喜ばないアイテムが出たりもするけどさ」

「殿も別に喜んでねえぞ!」


「「あーーーーーっはっはっはっはっはっは!」」



 今度はチェリンがデラックスガチャの前に立った。



「思えば私って、自分が求めている当たりを引いてるわけじゃないのよね・・・」

「エロい服ばっかりだよね」

「確かに、当たりなのか微妙な路線ではあるな」

「エロい流れが終われば、まともな服が出るようになるんじゃないか?」

「ぐぬぬぬぬ・・・。少し嫌な予感がするけど、とにかくやってみるわ!」



 魔石を入れてレバーを光らせたチェリンが、真剣な表情で祈りを捧げる。



 ガチャコン!



「力強い音!!」

「今のは赤いカプセルの音だ。服確定演出だぞ!」

「やったね!」

「あとは男物じゃないことを祈るのみだな」

「あっ、そっか!女性服でお願いします!!」



 チェリンがカプセルを開けると、やはり【服】と書かれたカードが入っていて、喜んでいるうちにポフッと赤い衣装に変化した。



「赤い服だ!これって女性服っぽいよね!?白いフワフワしたのが付いてる!」

「広げて広げて!」

「う、うん!」



 チェリンが服を広げると、上に手袋なんかが乗っていたらしく、パラパラと床に落ちてしまった。



「可愛いけど、コレって・・・」


「白いフワフワは胸の上にくるんだね~!でもなんかスカートが短いかも」

「これってもしかして、サンタのコスプレ衣装じゃないか?」

「天使レベルにエロ可愛いな」



 胸の上からミニスカートくらいまでしか丈の無いワンピースで、胸の上だけじゃなく、スカートの裾部分にも白いフワフワが付いている女性用サンタコスだ。


 何かのイベントで着るとかならいいかもだけど、普段からこれを着て暮らすのはちょっと勇気が要りそうだな。


 可愛い服とも言えるんだけど、これを爆乳のチェリンが着た場合、その姿を見た男の脳内ではエロいという感情しか湧かないだろう。



「もう!これもエロじゃないの!!」

「まだエロい流れが終わってなかったね~」

「是非とも試着して欲しいとこだけど、虎徹さんが迎えに来るから無理か・・・」

「さすがにこの服を着させるのは問題だろ!さて、そろそろ俺もガチャるぞ」



 3回目のガチャを回す為、殿が出陣した。



「いい加減俺も変な流れを終わらせたいんだが、結局ガチャってみねえと終わったかどうか分かんねえんだよな~」



 そう言いながら魔石を投入してレバーを光らせた親父だったが、エロ以上に『殿』の流れがキツイのだろう、祈りにも雑念が混ざっていた。



 ガチャコン



「また青かよ!」

「なんか集中力がイマイチだったよ?」

「気持ちはわかるわ・・・」

「まだだ!カプセルを開けてみるまで戦いは終わっちゃいない!」



 中から出てきたのは『扇子』だった。


 ・・・うん、殿の流れが継続中みたいですね。



「やっぱり殿様セットじゃねえか!『天下泰平』とか書いてあるぞ!」

「いい言葉だね!やっぱり平和が一番!」

「もう、明日になって流れが変わっているのを期待するしかないわね」

「流れはどうしようもないからな。とりあえず俺は運を回復させる為にノーマルガチャにしとく。どうせ調味料とかばっかだから、パパっと10連行くぞ~」



 ノーマルガチャの前に立ち、適当に10連回した。



「本当に運が尽きてる!ほとんど青ばっかだね!」

「でもこんな簡単に塩や砂糖が手に入るなんて、とんでもない話よ?」

「簡単に思えるのは嬢ちゃん達が強いからだろう。少々バランスに問題があるとは思うが、こっちも命懸けなわけだしな」

「何にしても女神シャルロット様に感謝だ。よし!赤も一個出たことだし、少しは運が回復したかな?」



 ちなみに赤の中身は髭剃りだったので、殿に献上した。

 明日は俺もデラックスに手を出してみようかな?



「いたいた!やっぱりガチャで盛り上がってたか!」



 お!?丁度良いタイミングで虎徹さんの登場だ!



「虎徹さん!こっちの三人は初めてのガチャだし、俺も久々だったから、メチャクチャ盛り上がりましたよ!」

「ブホッ!!大バカ殿様がいる!!うわーーーっはっはっはっはっは!!」

「くっ、見られてしまった!」


 金ピカの衣装、チョンマゲ、天下泰平の扇子。そりゃ笑うわな!


「いや~、笑った笑った!他にもなんかスゲーの出た?」

「超スゲーのが出ましたね」

「マジで!?一体何をゲットしたんだ!!」

「じゃあまずはヒントから。ファンファーレが鳴りました」

「マジで!?レインボーじゃん!!」

「しかもレジェンドガチャで」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 虎徹さんがフリーズした。


「マジかよ・・・。レジェンドの虹カプセルなんて1回出したっきりだぞ」

「しかも加護をゲットしたんですよね?」

「そうだ。時空魔法の加護を・・・ん?もしかして加護をゲットしたのか!?」

「正解です!」

「うおおおおおおおおお!スゲーじゃん!超大当たりじゃん!」

「正直、震えましたよ・・・」

「で、何の加護だったんだよ!?」

「たぶん虎徹さんが知ってる加護だと思いますよ?」

「加護なんてめっちゃ種類多そうじゃん!わからんから教えろ!」


「じゃあ言いますね。【時空神ライオスの加護】です」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 当然、虎徹さんはフリーズした。



「オレのと一緒じゃん!!嘘だろ!?オレのチャームポイントがああーーー!!」



 いや、チャームポイントって、なんかニュアンスが違くないですか!?

 

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