第670話 ハズレとはいえレジェンドですから!

 一気に力が抜け、青いカプセルを握りしめたまま項垂れる。


 これはただのハズレじゃないんだよ・・・。

 特大の魔石を必要とするレジェンドのハズレは、ダメージも特大なんだ。


 なんせ黒龍一体分だぞ!?

 いや、まあ・・・、肉は美味しく頂いたんだけどさ。



「小烏丸の一連の動作は完璧だったように思える。しかしそれでもレバーを回す時に嫌な予感がした。そしたら案の定青カプセルだ。これはおそらく運とタイミングの問題だろうな。最善を尽くしても運が枯れていては話にならないってわけだ」



 親父にも、俺の動きは完璧に見えたのか・・・。

 ならばこのハズレに関しては、今の俺では手に負えなかったということになる。


 単純に運の枯渇なのだろう。


 運なんかどうやって回復させればいいのか全然わからんけど、少なくとも赤カプセルが出せるようになるまでは、レジェンドガチャに手を出すのはやめよう。



「じゃあ大当たりを引いた後は、ガチャを我慢して運を溜めた方がいいのかな?」

「私、銀カプセルを当てたばかりなんですけど!」

「いや、銀までならたぶん大丈夫だ。でも金以上だと俺や親父みたいになる可能性があるから、ノーマルガチャで運の調整をした方がいいかもしれん」

「休むんじゃなくて、ガチャを回し続けて調整するのかよ!」

「それがガチャラーの宿命だ。ってか、いい加減カプセルを開けてみる」



 カードに書かれていた文字は【魔道具】だった。



「マジか!青なのに魔道具だと!?」

「でも中に入ってるのが、お前が作れる魔道具だったらハズレだよな」

「そうなんだよ!頼むから初見の魔道具を!」



 次の瞬間、手の平の上にズッシリとした何かが積み上がった。



 ドガシャーーーーーン!



「おわっ!!」



 重いだけなら耐えられたかもしれんのに、何個も積み上がっていたせいで床の上にぶち撒けてしまった。



「ちょ、そういう感じで出るのヤメテ!!」


「なんだこりゃ!?」

「あーあ、床に散らばっちゃったよ!」

「えええーーーーー!魔道具って1個じゃないの!?」


 いやホント。なんでいっぱい出たんだ!?

 そもそも何が出たのか、見てもさっぱり分からん。


「とりあえず鑑定!」



[通信機]

 :遠く離れた相手と会話をする事が出来る。評価A

 :親機1個 子機10個

 :親機と子機の間でのみ会話が可能。

 :番号が振られた10個のボタンを切り替えて使用する。

 :親機からの発信は、1を押せば1の番号の子機に繋がる。

 :衝撃耐性 火耐性 防水機能



「マジか!これって通信機じゃん!!」

「なんだって!?」

「えええええーーーーー!それって遠くの人と会話できる魔道具だよね!?」

「通信機ですって!?・・・でもなんか、随分と大きいわね」

「元々俺が持ってたのは『小型通信機』だからな。なるほど、青カプセルだったから小型じゃない普通の通信機が出たのか」

「このデカいのが親機で、散らばってるのが子機ってことか?」

「たぶんな。しかしこんなデカいと持ち歩けないよな・・・」



 親機が、VHSのビデオデッキを上にもう一個重ねたくらいの大きさで、子機でもビデオデッキの半分くらいの大きさがあるのだ。


 落としたくらいだから当然重いし、正直こんなの子機だって持ち歩きたくはない。マジックバッグに入れる手もあるって言いたいとこだが、実はマジックバッグに入れると通信機が停止してしまうのだ。



「持ち歩けないけど、各地にある城に子機を置けば連携出来るようになるわ!」



「「それだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



「なるほど!各地の城主と会話出来るようになるのはデカいぞ!」

「領地がいっぱい増えちゃったから、離れた国にいる仲間達と連絡を取るのが大変だったもんね!」

「大当たりじゃねえか!」

「じゃあ親機はミスフィートさんの部屋に置いて、尾張・伊勢・志摩・大和・河内・和泉・摂津・丹波・美濃に一つずつ子機を置く感じにするか。・・・いや待てよ?尾張の四つの城全てと連携を取りたいような気もするな」

「尾張に四つ置くの賛成!!」

「まあその辺は、隊長と相談ってことでいいんじゃない?」

「だな。通信出来るか試すのも城に帰ってからでいいか。床にぶち撒けてしまったけど、衝撃耐性が付いてるからたぶん壊れてないと思うし」

「でも俺達はしばらくこのダンジョンから帰らんぞ?」

「試してみようよ!」



 あ、そっか!

 俺は夜伽があるから帰るけど、親父達はダンジョンに泊まり込むんだった。



「んじゃ動作確認だけしとくか~」



 親機を調べると後ろの方に魔石を入れる扉があったので、アリアダンジョン基準での魔石(小)をセットした。


 そして床に落ちている1番の子機を拾って親父に渡す。



「これを持って隣の部屋に移動してくれ。階段の横あたりでいいぞ。あ、ちょっと待ってくれ!こっちにも魔石をセットする」

「子機のくせに重いな・・・。なんか昭和の電化製品みたいだ」

「しょうわ?」

「あ、適当に言っただけだから気にしないでくれ。んじゃ隣の部屋に移動!」



 つい口走ってしまった『昭和』を追求されないように、親父は重い子機を持ってトンズラした。



「えーと・・・、このデカい1番のボタンを押せばいいんだな?」



 ポチッ



 ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ

 フォーー フォーー フォーー フォーー フォーー フォーー



『うおッ!うるっせえ!!』



 隣の部屋から爆音で、あのアニメの主人公が乗っている白い戦艦内に流れる警報音アラートが聞こえて来た。


 こっちの部屋までデカい音が聞こえて来るくらいなので、それを至近距離で聞かされた親父が憤慨している。



『オイ、呼び出し音デカ過ぎだろ!もうちょい小さくならんのか!?』


「あ、この魔道具から殿の声が聞こえるよ!」

「それにしても大きな音だったわね・・・」

「親父、俺達の声は聞こえるか?」


『通信機から、しっかり三人の声が聞こえるぞ』


「なら実験は大成功だ!ちなみに音量の下げ方はよく分からん」


『通信機として使えそうなのは良かったが、どこかで聞いたような今の爆音を何とかせんと心臓に悪いぞ!』


「あ、このボタンかな?」


 ポチッ


『音量を下げたのか?』


「親父の声の大きさは変わってないな。今ので呼び出し音の音量だけ下がったかもしれんから、一度通信を切って、今度は親父の方から通信してくれ」


『やってみる』



 プツン


 お、『プツン』って音で通信が切れたのが分かったな。



 ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ

 フォーー フォーー フォーー フォーー フォーー フォーー



「「うるさい!!」」



 何だかんだで爆音から少し音量を下げることは出来たが、それでもこの新しい通信機は、かなりデカい警報音アラートで呼び出される仕様らしい。


 通信機は嬉しいけど、やっぱ青カプセルじゃダメだな・・・

 

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