第668話 凄いことに気付いてしまった

 転移に成功し、ステータス画面に[時空魔法Lv1]が出現しているのを見て、またもやニヤケてしまった。


 転移による消費MPは10。


 こんな短い距離でMPを10消費してしまうのか・・・。

 いや、消費MPと飛ぶ距離の長さは関係ないのかもしれないな。


 ただ遠距離の転移はまた別で、消費MPが増える可能性がある。

 見える範囲内だと10って感じだろうか?まあ適当な予想だけど。


 ならば見えない場所に飛んで試してみればいい。


 向こうの世界まで飛ぶのは低レベルの俺じゃ無理だろうし、正直ちょっと怖いから、虎徹さんの部屋まで飛んでみよう。


 頭の中で、女神の泉の前に立っている自分の姿をイメージした。



「転移!」



 ・・・あれ?おかしいな。向こうの部屋に飛べないんですけど!


 視界の外だと難易度が高くなるのかな?

 遠距離移動は、ルーキーにはまだちょっと荷が重かったか。



「転移」


 シュッ


 着地した時の向きを変えて最初の位置に飛ぶことには成功した。



「今度は飛べたな。ウーム、分からん!とにかく練習あるのみか・・・」

「実験してるんだろうけど、いきなり隣に出現するとこっちの心臓に悪いぞ!」

「ああ、悪い悪い!虎徹さんの部屋に飛ぼうとしたんだけど失敗してさ、さっき成功したのはまぐれだったのかなーって。でも近くに飛ぶのは大丈夫らしい」

「まだ初心者なんだから、無茶しないようにね?」

「せっかくの大当たりなのに、それが原因で事故が起きたら最悪だよ!」

「だよな~、とりあえず実験はこれくらいにしとく」



 ガチャで大当たりを引いたのは俺だけじゃないんだ。

 いつまでも自分だけはしゃぐのは良くない。



「よーし、じゃあ2回目のガチャ始めるよーーーーー!」

「順番はさっきと同じでいいか」

「グミ、私、殿、小烏丸の順番で行きましょう!グミ頑張れ~!」

「この格好だと、やっぱり殿って呼ばれるんかい!」

「目覚まし時計は大当たりだったけど、次は服が欲しいところだな」

「うん!やっぱり服を手に入れなきゃ安心できないよ」



 デラックスガチャの前に立ったグミが、魔石を10個投入した。

 そして両手を組んで天に祈りを捧げる。



「私にも大当たりを下さい!」



 あ、それはイカンですぞ!

 欲に飲まれた者にガチャの神様は微笑まない。



 ガチャコン



「あれ?なんか音が軽かった気がする」

「今の音だと青か緑だな。でもデラックスガチャは大当たりじゃなくても良いモノが出て来るから、ガッカリすることはないぞ」

「なるほど、でも服が良かったな~」


 そう言いながらグミが取り出し口に手を入れると、青カプセルだった。


「青だ!・・・えーーーーーーーーーー!!一番ハズレのやつだよ!」

「ガチャってのは基本的にハズレが一番出やすいようになっているからな。だからこそ、当たりが出た時に喜びも大きいわけだし。でもデラックスガチャのハズレをなめんなよ?青カプセルからでも普通に良い物が出てくる」

「ガチャは今日が初めてだから、何が出るのかまったく想像つかないよ!」



 出てきたのは、実写の猫が大きくプリントされたリュックだった。



「わああああああああああ!なにこれ!?メチャメチャ可愛い!!」

「うそッ!大当たりじゃないの!!」

「普通に当たりだろ!これで青カプセルなのか・・・」

「どう見ても当たりだな。言ったろ?デラックスなめんなって」



 大きさ的にそれほど物が入らないかもしれんけど、これだけ可愛けりゃ女の子なら喜んで愛用するだろう。


 これがマジックバッグなら大きさなんて関係ないんだけ・・・ど・・・。



 ・・・ちょっと待て。待て待て待て待て待て!!



 時空魔法が使えるってことは、ひょっとしてマジックバッグを作ることが出来るんじゃないのか!?


 そうだよ!俺の目の前で虎徹さんがササッと作ってくれたじゃん!

 うおおおおおおおおお!!こりゃやべえぞ!マジでとんでもないことになった!


 いや待て、落ち着け!例えそうだとしても時期尚早だ。今日目覚めたばかりの俺が簡単に作れるほど甘くはないだろう。マジックバッグ作りに挑戦するとしても、もう少し時空魔法の修行してからじゃないと。



「グミ、そのリュックは汚さず大切にしまっておいてくれ」



 三人がこっちを見た。



「使っちゃダメなの?」

「あ、待てよ?汚れ耐性と自動修復を付与すれば使っても構わないのか・・・。えーとだな、何で突然そんなことを言ったのかというと、とんでもないことに気付いてしまったからなのだ」

「猫が可愛いすぎることに気付いたの!?」

「可愛いすぎたとしても、使わずにしまっておくってのは本末転倒だと思うが」

「違う違う!いや、猫が可愛いのは認めるが、そんな理由じゃなくてだな・・・」


 背中からリュック型マジックバッグを降ろした。


「俺のリュックがただのリュックじゃないことは知ってるだろ?」

「知ってる!メチャメチャいっぱい物が入るんだよね!」

「ミスフィート軍で知らない人なんて、一人もいないんじゃない?」

「・・・ま、まさか」


 あ、親父が察したらしい。


「親父は気付いたみたいだけど説明を続けよう。なぜこのリュックには物がいっぱい入るのか?それはリュックの中の空間が広げられているからなんだ」

「中の空間が??・・・あっ!!」


「「時空魔法!!」」


「そういうことだ。覚えたてホヤホヤだから今はまだ無理だろうけど、時空魔法のレベルを上げればマジックバッグを作れるようになるかもしれない!」

「わあああああああ!凄すぎだよ!!」

「何ということなの!私もガチャで青いカプセルを引かなきゃ!」

「いや、わざわざ青いカプセルを狙うってのはどうなんだ?」

「普通に服狙いでいいと思うぞ?朝渡したリュックをマジックバッグにしてもいいわけだし。グミのリュックみたいに可愛くはないけどさ」

「それもそうね。でももし青が当たったとしても、可愛い鞄を期待できるようになったのは大きいわね!」

「だな。でも俺は殿様以外の衣装を当てることに集中するぞ!」



 しかし、本当にとんでもないことになったな・・・。


 まあ俺が時空魔法を使いこなせなきゃ話にならないんだけどさ、虎徹さんが迎えに来たら色々質問してみよう!

 

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