第658話 親父とグミを連れて行くのは確定だが

 虎徹さんに通信する前にしっかりと作戦を決めておこうと思い、とりあえず夕食を頂きに食堂に来た。


 いつものテーブルでウンウン考えていると、親父とグミがダンジョンから帰って来たようで、向かいの席に着いた。



「親父、堺ダンジョンの果物が京の都ダンジョンと一緒だったんで、ダンジョン契約が成立したぞ」

「ダンジョン契約?」

「契約が続く限り堺ダンジョンを三河に貸し出し、その代わりミスフィート軍はアリアダンジョンを自由に使えるようになるんだ」

「ああ、聖水があるというダンジョンか!ということは、聖水が飲み放題ってことだよな?」

「そういうことだ!しかもアリアダンジョンにはガチャがあるんだぜ?」

「あ~、なんか言ってたな!お前が赤い流星の格好をしている原因って、そのガチャから服が出て来たせいなんだろ?」

「えーーーーー!?もしかして私が着てるこの恩賞の服が手に入るってやつ?」

「そうだ。魔石と引き換えにガチャが回せるんだが、そのダンジョンにいる魔物を倒せば魔石なんていくらでも手に入るから、実質タダみたいなもんだな」



 北海道と佐渡ヶ島で溜め込んだから腐るほど魔石を持ってるんだけど、ゴーレムの時代が来ることを考えると無駄遣いはしない方がいいだろうなあ。


 やはり今までの様に、魔物を狩って手に入れた魔石でガチャを回すべきだろう。

 俺はともかく、親父やグミなんかはレベル上げもするべきだと思うし。



「ってことで、二人ともアリアダンジョンに行ってみないか?魔物を倒してレベルを上げながら、手に入れた魔石でガチャを回すんだ」

「面白そうじゃないか!」

「行く行く!絶対行く!!」

「ただし条件はあるぞ?ガチャで服をゲットしまくったとしても、ばら撒くのは禁止だ。あの服は努力に努力を積み重ねてようやく恩賞で手にする事が出来る貴重なモノなんだ。頑張って手に入れた時の感動はよく覚えているだろう?」

「忘れるわけないよ!わたしがどんだけ頑張ってこの服を手にしたか・・・」

「なるほどな・・・。そのガチャで手に入れたアイテムを、褒美として兵士達に与えているわけか。ならば簡単に手に入るようになっても、今までの難易度は変えない方がいいだろうな」

「俺もそう考えている。ただし初期メンバーに限り、自力でゲットした服は全て所持していい事にしようと思ってるんだ。まだ反乱軍だった時代から今まで戦い抜いた人達には、その権利が十分ある」

「みんながんばったもんね!!」


 ジャバルグが支配していた、あの地獄の尾張を生き抜いた人達には、特に幸せになってもらいたいんだよね。


「俺は平和な尾張でのほほんと暮らしてただけだから、ガチャはやらんでいい。手に入れた魔石は全て軍に献上しよう」

「いや、今着ているその普通の服じゃ俺が不安だ。じゃあ一着だけガチャ産の服を貰えることにすっか」

「いいのか?」

「ただし一発勝負だぞ?男物の服が出た時点でその服に決定だ。どんな服が出ようが親父は一生その格好だ!」

「ちょっと待ちやがれ!!それって下手したら罰ゲームじゃねえか!!」

「ぷくくっ!あーーーーーっはっはっはっはっはっはっは!!」

「せいぜい赤い流星セットが出ないよう祈っとくんだな!」

「洒落になってねーんだよ!!つーかお前も恥ずかしい思いするんだぞ?」


 あ、そうか!赤い流星が二人になったら、俺も超恥ずかしいじゃん!


「じゃあ赤い流星セットだけは勘弁してやろう」

「宇宙服とかそういうキツイのも対象外にしろ!」

「あーそれもキツイな。しゃーねえな~、三択にしてやっか!男性服三着出るまでガチャを回していいぞ!その中から一着選ぶってことにしよう」

「チャンスは3回か・・・。それならまあ面白そうではあるな」

「ビジネススーツみたいなつまらんモノが当たりませんように!」

「俺はお前みたいなイロモノにはならんぞ!!」

「失礼な!ああ、グミにはそういう縛りは無いから、可愛い服をいっぱい手に入れてくれな!」

「うん!!」


 尾張に帰郷している人達は戻って来てから連れて行こう。あ、そういえばチェリンは帰らなかったんだよな。彼女もダンジョンに連れて行くか。


「ガチャはいいとして、レベル上げと耐性上げも重要だぞ?アリアダンジョンにいる魔物ってみんな強いから、死なないように細心の注意をすること!傾向と対策はダンジョンに行ってから説明する」

「あっ!玉座に座ってる大きいゴブリンが出るんだったよね!?」

「そういや、なんか非常に凶悪そうなゴブリンのぬいぐるみが座ってたな」

「アリアダンジョンのゴブリンはマジでヤバい。俺でも何度か死にかけている」

「ウーム・・・、この刀で倒せるのか?」


 あ、グミはミスリル刀だからいけど、親父の鉄の刀だと折れる心配があるな。

 刀に血糊が付着するのも不安要素だし。


「ある程度はそれでいけるけど、不安だから一本最強の刀を打ってからにしよう。グミはミスリル刀だから大丈夫だ」

「ミスリルか!もう名前だけで強そうだな」

「メチャメチャ強いよ!鉄の刀とは全然違うんだから!」

「強度もだけど、付与出来る魔法の数が違うんだよ。特に重要なのが汚れ耐性だ」

「汚れ耐性?・・・ああ、血糊か!!」

「うん!イチイチ拭き取らなくても大丈夫なの!」

「ただミスリルは通常の炎では加工出来ないから、魔法の力が必要となる。俺が手伝うんで、親父の刀が完成したらアリアダンジョンに出発ってことにしよう」

「なるほど、普通の炎では火力不足というわけか・・・」



 というわけで、出発前に親父の刀を一本作ることになった。

 完成まで2~3日掛かると思うけど、こればっかりはしょうがあるまい。

 

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