第641話 男と男の話し合い

 

「落ち着けルシオ!彼女らがこっちに戻って来てしまうぞ」



 錯乱状態のルシオの口を手で塞ぎ、まずは恐怖で沈静化を図る。

 あとは俺に起きた出来事を伝えれば、次第に落ち着きを取り戻すだろう。



「昨夜何があったかは大体想像がついている。何故だと思う?実は俺も少し前に同じ体験をしたからだ!」


 それを聞いたルシオが目を大きく開いた。


「この城に到着した途端ミスフィートさんに攫われ、寝ることすら不可能な無限子作りミッションに突入したんだよ。最初に意識を取り戻したのは、今のルシオと同じく食堂でメシを食ってる時だったな」


 ルシオが落ち着きを取り戻したみたいだったので、口を解放してやった。


「小烏丸さんも僕と同じ様に!?」

「うむ。18禁に抵触するから詳細は説明できないが、天国だと思ったのは最初だけだったな。途中からはいつまで続くのかという不安の方が大きかった」

「18きん??」

「ああ悪い、それは気にすんな。ただこれだけは言っておこう。俺の嫁の数は5人どころか数十人、下手すりゃ100人超えだ!」

「・・・はい?ひゃ、100人ですか!?」

「嘘でも誇張でもなくこれはガチだ。なんせもうすでに数十人の嫁と夜伽をした後だからな。まあそういうことなんで、もう一人で悩まなくていいぞ」



 突然部屋に入って来た5人の押しかけ女房に、絶対人には言えないような行為をされまくった後なのはもう間違いあるまい。アイツらテカテカしてたからな。


 でも自分を遥かに超越した存在が身近にいれば、夜伽とはそういうモノなんだと認識してくれるんじゃないだろうか?


 いや、5人同時夜伽は俺も未体験ゾーンなんですけどね!



「な、なるほど!とっくに小烏丸さんが経験していた事だったんですね・・・。それを聞いて少し安心しました」

「嫁を満足させるのは夫の甲斐性とはいえ、ミスフィート軍の女の子達は全員タフだからな。毎日が大勝負よ!」

「えーと、どうやったらお嫁さんに満足してもらえるのでしょうか?いつまで経っても全然終わりが見えなかったんですけど。次々と入れ替わりますし・・・」


 でしょうね!!

 5人を相手した時点で詰んでいたのだ。最初から。


「簡単なことよ。一対一の勝負に持ち込めばいい。というか5人で一斉に襲い掛かったアイツらが全部悪い!」

「ですよね!5人はいくら何でも多すぎますよ!!」

「おそらく全員が、一刻も早くルシオとの子が欲しくて堪らなかったのだろう。俺の場合はミスフィートさんが正妻と決まっていたから、我先にって状態にはならなかったんだけど、ルシオの場合、誰もが正妻を狙える位置にいるだろ?」

「えーと・・・、そういうことになるのでしょうか?」

「まあ本人らに聞いてみなきゃ分からんが、俺の読みでは最初に子供を産んだ人が正妻って決まりにでもなってるんじゃないかと。だから5人同時夜伽って事態にまで発展してしまったんだろな」


 普通に考えて、いくら親友達といっても己の痴態を見られるのは嫌だろう。

 だが敢えて強行したということは、引くに引けない大きな理由があったからだ。

 それが正妻争いというなら納得がいく。


「困ったなあ・・・。誰を正妻にするかなんて選べませんよ。そもそも今まで結婚のことなんて考えた事すらありませんでしたから」

「それに関しては俺もだな。聖帝軍とのいくさに勝つ事が何よりも重要だったから、その先まで考える余裕が無かった」

「ですよね!?」

「まあ俺から口出しするような事ではないから、誰を正妻にするかは自分でゆっくり考えるといい。とりあえずの問題は夜伽の方だ」

「うぅ・・・、どうしましょう?」


 適当に決めたら絶対に不満が出そうだよな~。


「あ、そうだ!昨日の夜伽で相手した順番は覚えてるか?」

「じゅ、順番ですか!?・・・えーと、まあ、はい、覚えてます」

「ぶっちゃけ最後の方なんて、もう何も出なくなっていたハズだ」

「えーと、まあ、はい、そうですね・・・」

「実はミスフィートさんもだったんだけど、彼女らって男の事情を分かってなかったりするんだよ。一日に作られる子種の量が限られているという事実を知らないから、やればやるほどいいと思ってるんだ」

「そうだったのですか!?」

「というわけで、この後ルシオがしなければならない事を言うから覚えておけ」

「はい!」


 俺から彼女らを説得したら絶対に不満が出るからな。

 ここは当事者にやらせるべきだろう。


「まずは、『明日からは一人ずつ愛し合いたい』と彼女らを説得し、その順番は昨日相手した順番の逆、子種が薄かった順にしろ。もちろん不満は出るだろうが、子種が薄ければ妊娠する確率が下がると説明すれば納得してもらえるハズだ」

「なるほど!!」

「明日からにした理由はもちろん、ルシオどころか全員寝てないと思ったからだ。とにかく今夜は子種の補給をするとしっかり説明し、ぐっすり寝て英気を養え!それと夜伽は朝までとし、昼間は次の夜伽の為に休むってちゃんと言うんだぞ?」

「了解しました!流石は小烏丸さんだ・・・。完璧な策です!」


 こんなもんかな?


「ちなみに俺の今夜の夜伽の相手はチェリンだ。明日はカトレアだ」

「うぇええええええええええええーーーーーーーーーー!?」

「夜伽とはな、嫁との一対一の大勝負なんだ。さっきも言ったが、嫁を満足させるのが夫の甲斐性と知れ。とにかく今は経験を積むことだ。お互い頑張ろう!」

「えーと、はい!頑張りましょう!」



 サムズアップしてルシオのテーブルを離れた直後にピピン隊が戻って来た。

 どうやらギリギリ間に合ったようだな。


 大変だったが、これでルシオも前向きに嫁と付き合えるようになっただろう。

 さて、俺もチェリンとの対戦に向けて準備運動でもしますかね・・・。

 

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