第624話 人形からとんでもない大当たりが!

 今まで京の都ダンジョンからは一度も毒物が発見されてないんだけど、それでも口にする以上毒見は必要なので、親父は俺が食うのを黙って見ていた。


 しかし親父もチョコレートには興味津々だったようで、ポイッと口に入れた。



「おお、マジでチョコレートだな!とても懐かしい味がする」

「やべえ、久々のチョコレートだから手が止まらん。でも女の子達に食べさせてあげたいからこれくらいにせんと・・・」

「あ、そうだ!風邪薬も食ってみねえとな。お菓子なんだろ?」

「戦闘中に口に飛び込んだのを齧っただけなんで、もう一回毒見しとくか」


 佐藤ちゃんの方に移動し、どう見ても風邪薬にしか見えない錠剤を口に入れ、嚙み砕いてみた。


「うん。やっぱりお菓子だと思う」

「どう見ても風邪薬じゃねえか!しかしそう言うなら俺も食ってみっか・・・」


 親父も風邪薬を齧った。


「うおおおおお、マジでお菓子だ!つーかこれってラムネだろ!!」

「だよな?ラムネ味の風邪薬って可能性もあるけど、ラムネ味にする意味があまりないから、普通にラムネだと思うんだよね」

「非常に紛らわしいが、俺もこれはラムネだと思うぞ」

「口溶けもいいしな」


 とはいえ本当に風邪薬だった場合、お菓子感覚で食いまくったら危険だし、後で猫ちゃんに確認した方がいいな・・・。


「そうそう!チョコレートで思い出したぞ!」

「何が?」

「向こうに、あの謎の鳥がいたんだよ」

「謎の鳥?」

「こっちだ!」


 親父について行くと、そこに立っていたのは俺がよく知る謎の鳥だった。

 しかも思ったよりデカい。


「ギョロ山くんもいたのか!!」

「コイツって、チョコレート菓子のマスコットキャラだよな?」

「間違いねえ!ってことは、ピーナッツ入りのチョコレートが入ってるのか!?」

「開けてみようぜ!」



 案の定、謎の鳥の背中にも扉があったので、うつ伏せにして開いてみた。



「やっぱりチョコレートが入ってたーーーーー!」

「しかしまだ分からんぞ?チョコと知らなかったら一見キモイ状態だ」

「黒くて丸いのがギッシリだからな・・・。まあ食ってみるわ」


 味覚に集中しながら、黒い玉を噛んでみた。


「よしッ!ピーナッツチョコレートだーーーーーーーーーー!!」

「っしゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 親父もピーナッツチョコレートを食った。


「美味えな!地味にコレ結構好きなんだよ」

「わかる!俺もこれは大好きだ」


 そして3粒食ったところで、とんでもないことに気が付いた。


「なあ親父」

「ん?」

「サンダー大佐なんだが・・・」


 その名前を聞いた親父の目が大きく開いた。


「ま、まさか、アレが入ってる可能性があるのか!?」

「このパターンからいって、十分有り得ると思わんか?」

「オイオイオイ!もし入ってたら大当たりだぞ!?」



 居ても立っても居られず、親父と二人で玉座まで走って行った。

 そしてサンダー大佐をうつ伏せにする。



「せっかくいい位置に立たせたのに、なぜ寝かせるのだ!」


「ああ、すみません!でも中に美味しい物が入ってるかもしれないんですよ!」


「美味しい物だと!?」


 ミスフィートさんもこっちに駆け寄って来た。


「よし!コイツも扉付きだ!」

「じゃあ開けるぞ!」

「ほう、こんな所に扉があったのか」



 パカッ



「「唐揚げチキン、きっつああああああああああああああああああああ!!」」


「イイ匂いがするぞ!!」



 マジで唐揚げが入ってやがった!

 でも一晩放置してしまったから少し心配なんだよな・・・。


 扉の中に手を入れて、唐揚げチキンを一つ取り出し、匂いを嗅いでみる。


「まるで作り立ての如く、メッチャ良い匂いですぞ?」

「早まるな!判断するのは食ってからだろ!」

「頼む!!」



 唐揚げチキンにかぶりついた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「それでどうなんだ!?マスクのせいで表情が分かり難いんだよ!」

「凄く美味そうだなっ!」

「・・・これは作り立てですか?メチャクチャ美味えええええええええ!!」

「うおおおおおおお!もう我慢できん!!」


 親父も唐揚げチキンを手に取り、目を血走らせながらかぶりついた。

 続けてミスフィートさんもパクっといった。



「「美味い!!」」



 当然ながら、二人とも大絶賛だった。

 熱くはないんだけど、サックサクのジューシー唐揚げなのだ!



「しかし俺は昨日、コイツとプロレスで派手に闘ってるんだが・・・」

「身体の中に唐揚げを詰め込んだヤツと闘ってたのか~」

「正直、かなり複雑な気分だぞ!!」

「これだけ美味いのだから、些細な問題ではないか!」


「おーーーーーい!練乳終わったよーーーーーーーーーー!!」


 おっとグミのことを忘れていた!

 練乳が出尽くしたのなら、呼び寄せても問題ないよな?


「グミ!美味い食いもんが出てきたから、コッチに来てくれ!」


「行くーーーーーーーーーー!!」



 タタタタタタタタタ



 扉の中から唐揚げチキンを取り出してグミに渡した。



「コレってサンダー大佐じゃない!お肉が入ってたの??」

「どうやら俺達は、鳥の唐揚げが詰まった人形と闘っていたらしい」

「なによそれーーーーー!!」


 パクッ


「美味しい!!えええええ??この中に見えるのって、全部このお肉なの!?」

「大正解だ。でも一緒にダンジョン30階層を攻略した全員に食べる権利があるから、とりあえず1人1個だけにしておこう」

「そうだね~。無くなったらまた倒しに行く?」

「いや、さすがにあの階層にはしばらく行きたくない」

「戦利品はデケエけど、アレはキツ過ぎだろ!」

「私もしばらく遠慮したい気分だ。まあ気が向いたらだな!」



 そして油の付いた手をタオルで拭いてから、練乳の箱を回収しに行く。

 俺は装備品のおかげで油なんか付かないんだけど、俺以外は素手で食ってたしな。



「・・・なんか練乳多くね?」

「ポコポコちゃん3体分くらい溜まってねえか??」

「うん、なんかいっぱい出てきた。でね、スプーンで内側に残った練乳をかき出そうと思ったんだけど、全然中に残ってなかったの!」

「あっ、よく見たら扉の内側にも練乳が付いてねえぞ!」



 どういう仕様なんだよ!?

 ペロペロちゃんも練乳を大放出してたし、ホント意味が分からんヤツらだ!


 練乳の入った箱に蓋をして、マジックバッグに収納した。

 そして用済みとなったポコポコちゃんを、ペロペロちゃんの横に並べる。



「ポコポコちゃん、私の手向けだ。姉上と仲良く暮らすがいい」


「いや、ペロペロちゃんって姉上じゃねえだろ!」



 親父め、細かいことを気にしおって・・・。


 しかし名セリフが決まった直後のツッコミに飢えていたのも事実なんで、実はすごく有難かったりするんですけどね!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る