第590話 そんなバナナ!!

 昨日収穫したトウモロコシもかなりの量だったけど、トマトはそれ以上の量だったので、いきなりの大仕事にてんやわんやだった。



「そうか、11階層からは一つ一つのフロアの大きさが倍以上になってたから、おそらく大自然フロアもかなりデカくなっているんだ」

「それで収穫出来る量も凄いことになっているのか!」

「嬉しい悲鳴ですけど、この人数では少し大変ですわね~」

「21階層を目指している集団が到着するまで、この大自然フロアを調べ尽くすのは無理かもしれねえな」

「致し方あるまい。我らに出来るのは目の前の食材を採り尽くす事だけだ!」



 そんな会話をしながら、一行は森の中へと入って行った。


 定期的に魔物が襲い掛かって来るのだけども、ウチのメンバーは料理班ですら歴戦の猛者揃いなので、21階層程度の魔物程度なら一瞬で葬り去り、誰一人として話題にも出さないのが逆に面白い。


 ただ広いフロアなのが少し問題で、お宝を見つけられずに何もない森の中を地道に進んで行くだけってのは結構辛いかもしれない。


 11階層の時のように、次から次へと食材が見つかる感じではないのよ・・・。



「とか思ってたら見つけたし!和泉隊長、バナナを発見しました!!」


「あっ、上だーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



 皆が上を見上げ、初めて見る光景に目を輝かせている。



「でもまだバナナが緑色なんだよな。夕方まで待つか?」

「待たないですぐ収穫するよ!」

「でも黄色くなってから収穫した方が美味そうじゃね?」

「そりゃあ黄色くなったのを収穫した方が美味しいに決まってるよ!でもね、あの大きなバナナのかたまりで何本くらいあるか知ってる?」

「何本だ?さっぱりわからん」

「あれ一つだけで200本から300本くらいバナナが収穫出来るんだよ。そんなバナナ大家族が一体いくつあります?」

「おおう・・・、パッと見で20家族はあるな。おそらくそれ以上だ・・・」

「全部黄色くなってから収穫したら、食べきれなくて絶対に腐らせちゃうでしょ?それに緑色のバナナを収穫したとしても、放っておけば勝手に黄色くなるから大丈夫なんだ!もちろん味は落ちちゃうけど、かなり長持ちするから、輸出して尾張の人々に食べさせてあげることだって出来るよ!」


 ホント和泉の知識量には驚かされるな・・・。

 ならばバナナは今すぐ収穫しても大丈夫そうか。


「この手前の三家族だけ今は収穫しないでおいて、帰りに黄色くなったのを収穫しよう!」

「了解!しかしあの大家族って結構重そうじゃない?」

「あれくらいならたぶん持てると思うが、もし木の上から落としでもしたら大惨事だろうから、皆気を付けて収穫するようにな!」

「「はーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!」」



 ここにいる誰もが高レベルで身体能力が半端ないのもあり、みんな猿のようにスルスルと木に登って行き、超絶斬れ味の良い刀で太い幹を切断し、パワフルな腕力でバナナ大家族を片手に持って下に降りて来る。


 それを俺とミスフィートさんがマジックバッグに収納していき、終わってみるとトマトよりも楽な収穫だった。帰ってから1房ごとにバラさんといかんけどね。



「大量のバナナ、ゲットだぜーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「こんなん絶対に食べきれねえだろ。しかも毎日収穫出来るんだよな?」

「もう京の街にバナナ専門店を出すしかないかもね~」

「まあ普通に食料品店に卸す感じにしたいが、その流通ルートを作るのが大変そうではあるな」

「ダンジョンって凄いですわね~」

「このダンジョンがおかしいんだよ!此処で収穫した食料を民間に流しているだけで、一体どれほど儲かることやら・・・」



 収穫量がマジで半端なかったので、ココまでの量となると、兵士達にばら撒いても余るようになるだろう。なんせ毎日この量が収穫出来るわけだからな・・・。


 とりあえず今はまだバナナの味見ができなかったけど、ホクホク顔で次の食材探しに出発した。



「ずっと見上げていると、首が痛くなってきますわね~」

「でも森の中だから、果物が見つかる可能性の方が高いんだよな」

「このフロアは一つの食材が大量に手に入る傾向のようだが、11階層よりも広いから、見つかるまでが大変だな」


「今度は下だったーーーーーーーーーー!イチゴを発見したよ!!」


「「イチゴか!」」


 イチゴを知っている俺と親父の声だけハモった。

 他の人達は、食材の名前を言われてもサッパリわからんのだ。


 和泉の指差す方へ歩いて行くと、そこら中がイチゴまみれだった。


「うっわ、これは収穫が大変だぞ・・・」

「地獄だな・・・」

「それは大変だと思うけど、その前に試食タイムだよ!!」


 イチゴを1個もぎ取って口に放り込む。


「おお~~~、すげー甘い!!」

「野生のイチゴというよりも、農家が育てたような完成されたイチゴだな!」

「うわ~~~~~~~!メチャメチャ美味しい!みんなも食べてみなよ!」


 知らない物を食べるのは危ないということで、俺と親父以外のメンバーは、和泉の許可が出た物だけを食べることが許されているのだ。



「「あまーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」」



「私これすっっっっっっっっっっごく大好きかも!!」

「わかる!食後のデザート並みの美味しさだね!」

「本当に美味しいですわーーーーーーーーーー!!」

「食べるのが止まらないんですけど!!」

「うん、これは無限に食べられる!」



 案の定というか、やはりイチゴは女性陣に大ヒットした。


 そうだ!皆に収穫を頑張ってもらうために、現地まで収穫に来た人は食べ放題にしてしまおう。


 これだけの量なんだから、それくらいサービスしても全然問題無いだろう。

 まだ他にも果物が見つかるだろうしな。うん、そうしよう!



「ミスフィートさん、収穫を頑張ってる人へのご褒美ってことで、このフロアの食材は食べ放題にしちゃいませんか?もちろん現地まで来た人限定ですが」

「あ~、それはいいかもしれんな!我々だけで食べ切れるような量ではないし、現地の人だけ狡いと思うのならば、自分で収穫しに来ればいいだけだからな」

「今は来たくとも来られない人がいるってのも事実だけど、2台のバスが満員ってのは最初のうちだけだろうからね~。私も賛成!」

「食べ放題なんて、素晴らしいですわ~~~~~~~~~~!!」


「「賛成ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 ただ、俺かミスフィートさんがいないと持ち運びが大変だから、ダンジョン入り口付近にデカい物資集積拠点を作る必要があるだろう。


 まさか豊作過ぎて困る事態になってしまうとはな・・・。

 

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