第7話 この世界のことを知る

 暴走族と中二病の二人から、ココに来ることになった経緯を詳しく説明してもらった。


 二人は元々アリアという世界にいたらしい。んで、アリアとこっちの世界へ繋がる扉が開きかけ、アリアで人間と魔王軍との大戦争が起きて荒れに荒れたそうだ。

 最後は勇者が扉を閉める事に成功し、戦争も終結。

 しかしこの二人は、扉が閉まる前にこちらの世界へ飛び込んだそうだ。


 理由はこっちの方が面白そうだから。


 いやいやいや、どう考えてもそのアリアにいた方が穏やかに暮らせるだろうに。

 とにかく二人がこっちの世界に来たのは半年くらい前だとか。




「なるほど・・・、二人がこの世界にいる理由はわかった」

「じゃあ次はそっちの番だな。こんな所にいた理由を教えてくれ」


 二人に、ココに来てからの出来事、そして俺の目的を話した。




「なるほどねえ。尾張の国はそんな状態なのか」

「あ、そうだ!その尾張とか三河とか美濃とか、なんでここは日本の昔の地名みたいな名前なんだ?」


「ん?あー、それはこの世界の神様が元日本人だからだよ」

「はい!?」

「しかも歴女ってヤツでな。戦国時代オタクらしい」


 ・・・元日本人の神様だと!?それでこんなワケ分からんことになってんのか!


「ん?ひょっとして神様と知り合いなの?」

「まあちょっと色々あってな。でな、名前が日本っぽいだけじゃねえぞ?世界地図を見ると、もう完全に日本なんだよ」

「は、はあ。神様は異世界に日本を作ったのか」

「たぶん小烏丸が想像してるのとは違う。日本しか無いんだぞ?」

「ん?どういうこと?」

「ヨーロッパもアメリカもここには存在しない。あるのは日本だけだ」

「は!?」

「ただし面積は10倍以上なんだとよ?おもしれーだろ?」

「なんだそりゃあ!?」


 日本だけしか無い世界かよ!さすが日本人の神様だな。無茶苦茶しおるわ!


「うんわかった。そういう理由なら納得しよう。・・・でもなんで住んでる人々は、世紀末でヒャッハーな奴らばっかなんだ!?荒んでるなんてレベルじゃないだろ!」


「んーーー、それなー。こんな現状になったのは神様も不本意らしいぞ?『でもこれはこれでアリじゃない?』とか言ってたから、もう完全に放置してるらしい」

「オイ神様!それでいいのかよ!!!」


 とんでもねー神様だな・・・。でも詳しい話が聞けて本当に良かった。

 不思議に思っていたことが全て解消されたよ。


「おもしれーのがよ、アリアではこっちの世界の事を『奈落』って呼んでんのよ。んで来てみたらマジで奈落なんだもんよ。大爆笑したわ!」

「奈落かぁ、その名に相応しい荒廃具合だな」


「で、話を戻すぞ?小烏丸はそのミスフィートって女を助けて大名にしたいんだな?」

「その通りだ。俺は強くならねばならない!」


 暴走族のあんちゃんは一つ頷いた後、眼光が鋭くなった。


「コテツ!尾張の偵察はヤメだ」


「ん?ジャバルグだかの顔、見に行かんの?」


 中二病の人は、ネコ耳とレディースと三人でトランプをやってたみたいだ。


「ジャバルグは放置する。攻めるのは遠江か信濃に変更だ」

「まあそれでも問題ねえぞ。んじゃ帰る?」


「ちょっと待った!もしかして・・・、三河の大名を倒したのって、あンたらのことなのか!?」

「ほう?尾張にも情報が流れていたか。ご名答だ!今は俺とコテツが三河を支配している」


 マジかよ!この二人、只者じゃないとは思っていたがそれほどの強さだったとは。


「もし小烏丸がミスフィートを大名にすることが出来たら、その時は三河と同盟を組もうじゃないか。同盟祝いとしてミスフィートと小烏丸にバイクを贈呈しよう」

「マジか!うおおおおお!熱くなって来たぜ!!」


「だが今のままじゃ無理だな」


 な、なんだと?上げてから一瞬で落とすとは酷いな。


「その森で魔物を狩って鍛えていたのだろう?だがこの辺の森でいくら魔物を倒そうが、レベルはそれほど上がらない筈だ」

「その通りだ!だから狩場を変えようと思っていた所だ」

「それでも駄目だな。小烏丸がミスフィートと肩を並べる所まで強くなるのに、どんだけハイペースで戦ってもおそらく最低5年はかかる」

「ご、5年もか・・・・・・」

「まあでも神様の話では、北海道まで行けば強烈な魔物がわんさかいるらしいがな。俺らも国の統治がなければ絶対に行っていた」

「北海道?ココでは魔境なのか」

「ただし、この世界は日本と一緒だが国土は10倍以上だ。おそらく辿り着くのも厳しいだろう」

「くっ、それでも俺はそこへ行かねばならない!」


 暴走族のあんちゃんがニヤリと笑った。


「もっといい場所がある」

「なに!?」

「ダンジョンだ。そこなら1年で凄まじく強くなれる」

「本当か!しかしそれでも1年か・・・」

「5年も10年もかかるよりマシだと思うがな。小烏丸はミスフィートの事が心配なのだと思うが、今までこの世界で生きて来たんだ。信じるしかあるまい。それにその女は強いのだろう?」


「・・・確かに清光さんの言う通りだ。ミスフィートさんは強い!彼女を信じて、俺はダンジョンへ行く!」


「聞いてたな?コテツ。小烏丸をダンジョンへ連れて行ってくれ」

「わははは!同郷のよしみってヤツだ。連れてってやっか!」

「よろしく頼む!」



 待っててくれミスフィートさん!俺は必ず強くなって戻って来るからな!

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