#6 妹の真意
眠る頭に天使の声が響いてきて、ふと目が覚めた。
確か今日は……土曜日だったはずだ。
目を開けると、どうやら愛しの妹が私を揺すって起こしてくれたらしい。
あれ……? いつもなら午前八時半くらいに自然と目が覚めるのに。
昨日は疲れてたっけかな?
もそっと起き上がる私を見て、可愛いパジャマを着た妹は、私になにか言いたげに内股に手を挟んでソワソワとしている。
はぁ……朝から最高に眼福です。
「どうかしたの? 鈴音」
「う、ううん! な、なにか覚えてるかなぁー……なんて」
「何か……?」
うーん……何か覚えているか、か。
そう言われてみれば、何か大事なことを忘れている気がする。けど、滅多に忘れない私が忘れているんだから、それは大したことでも無かったのだろう。
「何か忘れてはいけないことがあっかしら? 強いて言うなら、とても気持ちの良い夢を見ていた気がするわ」
「そ、そう? ならいいの!」
妹は、頬を少しばかり紅くして、手を自分の前でブンブン振って誤魔化した。
あ、そう言うことか。
私は、妹が言いたいことを直感的に理解した。
『なにか覚えているか』という曖昧な質問に、『頬を紅くする』というちょっぴりな恥ずかしさを連想させる行動。
ここから導き出される答えはコレだ。
「鈴音、朝ごはんを食べたら出掛けましょうか」
「え!? あっうん! 出掛けよう!」
妹は最初何故か少し戸惑っていたけど、直ぐに満面の笑みになると、嬉しさを表すように小さく弾みながら、「先に下行ってるね!」と言い残して、パタパタと私の部屋を出て行った。
私は自分の推測が当たっていたことに安藤する。
いやいやいや。
ちょっと可愛い過ぎませんかね、私の妹。
なんで天使が現世に存在しちゃってるの。
私のような煩悩の悪魔に襲われても文句言えないですよー。
「うへへへ…………ん?」
シーツを捲り床に足を着けながら、チラッと机の上の時計を見ると、十二時になる少し前。着ていた服も昨日とはなんか違う気がする。
うーん、と頭を捻るが、分からない。
実は、昨日寝るまでの記憶が消失している。
もしかしたら、夜の内に気温が上がって汗をかいたのを妹が代えてくれたのかも知れない。
……え! マジか。なんで起きて無いんだよ私……。恨むぞ……ちきしょう。
私はハァ……とため息を一回
私は気付かない。
いつも同じくらいの時間で起きる私が寝坊したこと、昨日最後に着ていた服が起きたら変わっていたこと、チラッと見えた下着も実は両方とも変わっていたこと。
私はその全ての疑問を見落として、鼻歌交じりにお出掛けの準備へと取り掛かった。
昼に近い朝ごはんを食べて、歯を磨いて、髪の毛を梳かす。
二人ともそれぞれ支度を終えて、家から出ると、ちゃんと家の鍵を閉めたか確認する。
父さんと母さんは、二人仲良く海外旅行へと行っている。ついでに海外でお仕事も。
私たちは二人とも、一人でなんでも出来るということで両親からの信頼が厚く、学校もあるということで、二人だけのお留守番なのだ。
まぁ両親とも、ちょくちょく帰って来きてはお土産を買って来てくれるんだけど。
そんなこんなで私にとっては、最高の時間だ。
両親の目を気にせずにイチャイチャできるし、二人だけの時間というのが新婚さんみたいでとても良い。
普段から仲が良いっていうのは両親も重々承知なんだけどね。
「じゃあ、行こっか。鈴音」
「うん! お姉ちゃん!」
妹は私の声に元気良く応えると、自然な動作で私の手を取った。
あぁ、ふにふに、すべすべで凄く気持ち良いな……。
なんで妹の身体ってどこもこんなに女の子っぽいんだろう。
微かに香る、甘くて優しい妹の匂い。
私たちはいつも、お出掛けする時は必ずと言っていいほど手を繋ぐ。
他の姉妹がどういった感じなのかは知らないが、コレが私たちの姉妹のカタチである。
そしてコレこそが、お出掛けの醍醐味でもある。
まぁ、恋人繋ぎじゃ無いところが少し、後ろ髪を引かれるが。
「鈴音、服。とっても似合っているわ」
「お姉ちゃんこそ! とっても美人さんだよ!」
私たちは二人して「ふふっ」っと顔を見合わせて微笑むと、足を揃えて、軽い足取りで街へと繰り出して行った。
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